1998年の私的ベスト10   1997年度

1998年に私が読んだ本で、個人的に「おもしろかった!!」「燃えた〜」って本をリストアップします。
ベストテンは、基本的に1998年に発売された本で、1作者1作品としています。
読んだ本の全リストはこちら

1「ブルー・ブラッド 虚無編 上/下」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫]
今年、一番萌えた本です。ユージィン様は小説では今、一番惚れてるキャラなんで。
未来の火星を舞台にした、愛憎半ばの男たちの全身全霊をかけた精神的な戦いの物語です。
「ブルー・ブラッド」とは、火星の貴族階級のこと。ヴィクトールはそのブルー・ブラッドの一員であり、また遺伝子改造を行った強化人間・ユーベンメッシュでもあった。ユーベンメッシュは肉体的に強く、知能も高く、超能力なども持つ超人ではあるが、精神的に脆いため、必ず双子で生まれるようになっている。ヴィクトールはその双子−半身−であるアルトゥールを亡くしてしまった。その孤独の中、印象的な青緑の瞳を持つ、ユージィンと友人になる。ブルー・ブラッドの総帥の娘である、アンゲリカとの婚約も整い、恋人と親友を手に入れて幸せだったヴィクトールだが………というところまでが、シリーズ一冊目の話です。
これから後の男たちの戦いは、読んでいただきたい、と。
このシリーズに興味がありましたら、「ブルー・ブラッド」、「ブルー・ブラッド復讐編」そして「虚無編」の順番で読んでください。「ブルー・ブラッド」は“まあまあ”、「復讐編」は“なかなか”、そして「虚無編」は“おおー”という感じですので、ぜひ順番に読んでほしいです。また、この本編である、「キルゾーン」シリーズもなかなか楽しいです。こちらは地球を舞台にした、ミリタリー青春モノ(ああなんか違う…)で、キャラ同士のやりとりがなかなか楽しいです。いい男もたくさんでてきますし。
こちらも読むならば、発刊順に「キルゾーン」と「ブルーブラッド」を読んでほしいです。「キルゾーン」を一気読みするなら、ぜひ一部と二部の間に「ブルー・ブラッド」を読んでください。そうじゃなきゃ、二部のおもしろさが半減しますので。
●「ブルー・ブラッド 虚無編 上」須賀しのぶ(98/2/3)
●「ブルー・ブラッド 虚無編 下」須賀しのぶ(98/3/3)
2「パンドラ ブギーポップ・イン・ザ・ミラー」上遠野浩平[電撃文庫]
第4回電撃ゲーム大賞受賞作。この作品はネットでは各方面で取り上げられてて、かなりの評判をとっているので、今さら書くまでもないかもしれませんが……
ごく普通の高校。その女の子の間だけで伝えられている、「ブギーポップ」という殺し屋の噂。彼は一番美しい時に、殺してくれるのだという……
この作品は、とにかく構成が見事です。損はさせないから、一度読んでください。最初から順番に読んだ方がいいと思います。まだ四冊しかでてないし、今なら現在進行形で繰り広げられている、この世界に浸る楽しさに追いつけますから。
最初の話があまりによかったんで、続編がどうなるかと心配してましたが、期待にたがわないデキです。どの作品もいいんですよねぇ…で、一作選ぶのに迷ったんですが、表紙と口絵のデザインは「パンドラ」が一番好きなので。本編を読み終えたあと、口絵を見直したときの気持ちがなんとも…
この作品はビジュアルデザインもすばらしくて、一見の価値がありますよ。これから先がますます楽しみな作品です。
●「ブギーポップは笑わない」上遠野浩平(98/2/9)
●「ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター PART 1,2」上遠野浩平(98/8/8)
●「パンドラ ブギーポップ・イン・ザ・ミラー」上遠野浩平(98/12/9)
3「サイコ No.1情緒的な死と再生」大塚英志[角川スニーカー文庫]
同名のマンガが角川よりでていますが、その小説化。といっても、原作者がマンガに書かれてない、もうひとつの雨宮一彦に関わる物語を書き下ろしたものです。
…これを正直いうと、勧めたくないです。私にはおもしろかったけど、誰もが楽しめる作品だとは思えませんから…マンガの方はビジュアルのインパクトがあまりにすごいので、雑誌掲載のときに輪転機が止まったとか、ラジオドラマが放送中止になったとか色々と物議をかもした作品ですが、個人的には小説が一番キツいなあ、っていう気がします。狂気が当たり前である世界の、静かで冷たい悪意がすごく怖くて。怖いんだけども、その世界の美しさに惹かれるものがあります。
といいつつ、新刊がとても楽しみだったりするんですけど…
読むならば、マンガ版1→小説版1という順番の方がいいかもしれませんね。
怖いものが苦手な方は、やめておいた方がいいと思います。
●「サイコ No.1情緒的な死と再生」大塚英志(98/5/31)
●「サイコ No.2阿呆船」大塚英志(98/9/8)
4「誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡」木村元彦[東京新聞出版局]
今年はサッカー関係の本を色々と読みました。その中で一番感動した作品がこれです。
名古屋グランパスエイトの“ピクシー”ことドラガン・ストイコビッチは、新ユーゴの代表でキャプテンですが、その彼の数奇な半生を描いた本です。18でユーゴスラビアに代表入りし、国際舞台で大活躍し、海外の有名クラブへの移籍。順調に見えた彼の人生は、祖国の紛争により、崩壊した。今まで仲のよい隣人だった、セルビア人とクロアチア人が殺し合い、新ユーゴは国連の経済制裁にあい、スポーツも国際舞台から締め出されてしまう。新天地を求めて、日本に渡ってきたピクシーは、文化の違いから、孤独になるが、やがて監督に恵まれ、チームメイトと理解しあえるようになり、グランパスエイトは大躍進を遂げる。そして、国際舞台に復帰した、フランスワールドカップの予選。戦争で疲弊した祖国を勇気づけるために、戦い、フランス行きを勝ち取る…
途中から爆泣きでした。
正直いって、私は「民族の誇り」だとか、「祖国」というものがよくわかりません。日本にずっといるせいで、民族的なアイデンティティーを感じる機会が今までなかったから。自分に染み込んだ、今までの文化や言語が奪われるようなことになったら、こんな私にもそういう気持ちが目覚めるのでしょうか。…そういう状況自体が、なんだか想像ができないけど。
ワールドカップでクロアチアが大活躍して、ユーゴスラビアも決勝トーナメント進出をして……彼らのプレーを見ながら、色々なことを考えさせられた6月でした。
●「誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡」木村元彦(98/5/24)
5「デルフィニア戦記16 伝説の終焉」茅田砂胡[中央公論社C★NOVELS]
大人気シリーズ、「デルフィニア戦記」がついに終わりを迎えました。
私が読み出したのは、7巻が出たあたりで、「おもしろい」という評判を聞いて、一気読みしたクチです。楽しくて、でているところまで一日数冊のペースで読み続けて、そのあとはひたすら新刊を心待ちにする日々でした。
これだけおもしろい作品を、定期的に出し続け、ちゃんと完結させた作者は本当にすごいなあ、と思います。
とても楽しかったです。ありがとうございました。
今年でたうちの一冊を選ぶと、最後直前の緊張感が一番高かった、この話を。シェラ頑張ったよね。
●「デルフィニア戦記15 勝利への誘い」茅田砂胡(98/3/24)
●「デルフィニア戦記16 伝説の終焉」茅田砂胡(98/7/25)
●「デルフィニア戦記17 遥かなる星の流れに上」茅田砂胡(98/11/21)
●「デルフィニア戦記18 遙かなる星の流れに」茅田砂胡(98/12/19)
6「塗仏の宴 宴の支度/始末」京極夏彦[講談社ノベルズ]
本当は「鳴釜 薔薇十字探偵の憂鬱」を入れたかったんですが、まだ単行本化されてないし。
今年一番ヤキモキさせられた本でした。「支度」の最後がアレで、もうどれだけジリジリした思いで「始末」を待ち続けたことか。7月になったら、「始末はいつだ〜」とあちこちのサイトで話題になりましたよね。
ダイナミックな話の展開とか、榎さんの大活躍とか、そういうのも楽しかったけど、一番楽しかったのは、発売を待つ間の、「宴」を待っている状態だったかもしれません。
リアルタイムで、京極夏彦を読めて、幸せだと思います。
●「塗仏の宴 宴の支度」京極夏彦(98/3/29)
●「塗仏の宴 宴の始末」京極夏彦(98/9/18)
7「カラフル」森絵都[理論社]
…死んでしまった僕の前に、ひとりの天使が「おめでとうございます」と現れた。彼によると、地獄に落ちるような悪いことをした魂も、抽選で当たると再チャレンジの機会を与えられるらしい。僕は地上の、自殺未遂をした少年の体に入って、人生をやりなおすことになったが…
泣きます。それも気持ちのいい涙というか。
今まで当たり前だったものが、見方をかえるだけで鮮やかに美しく見えてくるような。
辛いことがあるときに、読むといいかもしれません。
「つきのふね」も素敵な作品ですが、個人的には「カラフル」の方が好きだなあ。
●「つきのふね」森絵都(98/8/21)
●「カラフル」森絵都(98/9/26)
8「人狼城の恐怖 第四部完結編」二階堂黎人[講談社ノベルズ]
「世界一長い本格探偵小説」の完結を祝して、8位です。
あれだけ大風呂敷きを広げてどうするんだと思ったら、その回答もなかなか美しいものでした。
リアルタイムで読んでいただけに、新作がでるたびに前の作品を読み返すハメになりましたが(時間がたつと細かいところを忘れちゃいますから)、それも楽しい作業でした。
ごくろうさまでした。
●「人狼城の恐怖 第四部完結編」二階堂黎人(98/9/12)
9「E.G.コンバット2nd」秋山瑞人[電撃文庫]
表紙にひいちゃって買わなかったんですが、評判を聞いて読んでみることに。
これが予想以上におもしろかったです。
…ある日、地球に忽然と現れた、不思議な生命体の「プラネリアム」。彼らは、女性を狙って殺し、彼らとの闘いで人類の人口は大幅に減り、文明も衰退した。月に移住していた人類が主導となり、人類救世軍は女性を強制的に月に移住させる、「ジュリエット計画」を発動。女性は月に、男性は地球で、プラネリアムと闘う日々が続いていた。…ルノアは数々の戦功をたて、21歳にして大尉となった。彼女をライバル視するラセレーナの画策で、月の軍隊の訓練校の教官に左遷されることに。しかも、ルノアが担当することになったのは、前代未聞の落ちこぼれ五人組だった…
女性ばかりがでてくる軍隊青春モノで、コミカルに話が進んでいきますが、細かいエピソードの描き方、見え隠れする膨大な設定や緻密な世界感がなかなか見事です。
とくに「2nd」の方の最後には泣かされました。途中でもかなりグッときましたし。
今後の話の展開が楽しみな作品です。
●「E.G.コンバット」秋山瑞人(98/12/17)
●「E.G.コンバット2nd」秋山瑞人(98/12/18)
10「ラグナロク 黒き獣」安井健太郎[角川スニーカー文庫]
第三回スニーカー大賞受賞作品。
元傭兵で、凄腕の戦士のリロイと、喋る剣・ラグナロクの物語です。
ある程度の文明がありながら、魔物(この作品では《闇の種族》です)が跋扈し、剣がものをいう世界。ライトノベルズではよくあるような設定の話ではありますが、パワーとスピードを感じる戦闘シーンの描写や、キャラ造形、細かい世界設定はなかなかのものです。ラグナロクとリロイの憎まれ口を叩きながらも、心の底では相手をかけがえのないものと思っている、その関係がなかなかいいんです。
今後の期待賞ということで。
●「ラグナロク 黒き獣」安井健太郎(98/7/18)
●「ラグナロク2 白の兇器」安井健太郎(98/9/4)
●「ラグナロク3 銀の深淵」安井健太郎(98/12/30)


その他、おもしろかった本です。こちらは新作・旧作入り乱れています。順番とおもしろさは関係ないですよー。(読んだ日付の逆順なだけです)


●「モダン・タイムス1」菅野彰
●「プリズンホテル 春」浅田次郎
●「惨敗 二〇〇二年への序曲」金子達仁
●「プリズンホテル 冬」浅田次郎
●「屍鬼 下」小野不由美
●「セレーネ・セイレーン」とみなが貴和
●「虚船 大江戸攻防珍奇談」松浦秀昭
●「数奇にして模型」森博嗣
●「サイケデリック・レスキュー」一条理希
●「ハルモニア」篠田節子
●「美貌の帳」篠田真由美
●「中田語録」
●「夜想」谷瑞恵
●「裏庭」梨木香歩
●「明星快演 金陵城内記」真樹操
●「朝霧」北村薫
●「絶対音感」最相葉月
●「うそつき」金丸マキ
●「飛ぶ夢を見た。」黒田信一・原宏也・元川悦子・倉本久 共著
●「決戦前夜 Road to FRANCE」金子達仁
●「運命のタロット13 《女教皇》は未来を示す」皆川ゆか
●「ペリペティアの福音 上〜聖墓編」秋山完


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