99年8月に読んだ本。

●「猫はどこ?」剛しいら[小学館パレット文庫](99/8/31)

「猫は好き?」の続編。美少年占い師の静流は超能力ネコたちと心を通わすことができる。同居人の健太とは友達以上恋人未満の微妙な関係。
ある日、静流のところに、誘拐されたアイドルの捜索願いがくるが…

軽くさらりと読めます。ネタとしては誘拐モノですが、それほどギリギリした話じゃないし。ネコがかわいくて微笑ましい話でした。


●「コールド・ゲヘナ2」三雲岳斗[電撃文庫](99/8/30)

第五回電撃ゲーム大賞の銀賞受賞作だった「コールド・ゲヘナ」の続編。
ドラゴンが闊歩する砂漠の惑星ゲヘナを舞台に、人型兵器・デッドリードライブで闘う人たちの物語。
前作は設定に引きずられて話にひっかかりを覚えたけど、今回は結構いいバランスですいすいと読めました。話や戦闘シーンにスピード感があるのがいい。あと不器用な三角関係も微笑ましかったし。キャラ的にはフロスティがいいかな。


●「暁闇新皇 斎姫異聞」宮乃崎桜子[講談社X文庫ホワイトハート](99/8/28)

「斎姫異聞」シリーズの最新作。
この作品は平安時代を舞台にした調伏モノで、「神の子」で両性具有の宮と、ただ人でありながら無意識の破魔の力がある義明のじれったい恋物語であったりもします。
今回は将門ネタ。平安時代の有名怨霊ですものねー。
結構今回はおもろかったかな。ひいきの重家の出番がほとんどなかったのが残念でしたが。義明に意外な恋敵(?)の出現ですが、奇妙な三角関係の今後の展開に期待です。


●「カニスの血を嗣ぐ」浅暮三文[講談社ノベルズ](99/8/27)

結構評判いい作品でしたので買ってみました。ちなみに第八回メフィスト賞受賞作家だそうです。その「ダブ(エ)ストン街道」は読んでないなあ。
「カニス」とはラテン語で犬のこと。病気のため、嗅覚が異常に発達した男・阿川。バーで出会い、一夜を共にした女には、死んだ犬のにおいがしていた。翌日、その女が死んだことを知った阿川は、女の死の謎をにおいで辿っていくことに…
特殊な嗅覚を持った男の「においの世界」の描写はなかなかに濃厚です。
でもあんまり読み進まなくて…時間かかちゃった。男にしても、女にしても、なぜそういう行動をとってしまうかがもうひとつ納得いかないというか。悪い話ではないんだけど、個人的にはちょっとあわなかったです。ハードボイルドって苦手だもんなあ…


●「星のパイロット3 ハイ・フロンティア」笹本祐一[ソノラマ文庫](99/8/20)

スペースプランニング社に爆破予告が届いた。そして美紀たちは謎の戦闘機に付け回され、ミサイル攻撃を受けることになるが…
今回はサスペンス的な要素が大きいかも。あんまり宇宙空間の話がでてきません。
マリオ大活躍ですねー。マリオとスウのコンビが好きなんで、嬉しいです。表紙だし。
今回もなかなかおもしろかったですが、個人的には「彗星狩り」の方がお気に入り。
とにかく、このシリーズは一読する価値がありますので、まだの方はぜひ読んでください。


●「星のパイロット2 彗星狩り 下」笹本祐一[ソノラマ文庫](99/8/20)

「彗星狩り」レース編、完結です。
レースも中盤に入った頃、トラブルが頻発するように。それは、地球からハッカーが仕かけた罠だった…
次々と襲ってくるトラブル。まさしく、息もつかせぬ展開です。それを智恵と勇気……いや、どちらかというと無謀かもしれませんが…を振りしぼってクリアしていく様が爽快です。
とにかく、おもしろい!!
「星のパイロット」で専門用語の頻出に戸惑った人も、こちらはぜひ読んでほしいです。一作目よりも読みやすですし、圧倒的に楽しいですし。
キャラではマリオがお気に入りかも。デュークのオヤジの魅力も素敵ですが。


●「星のパイロット2 彗星狩り 中」笹本祐一[ソノラマ文庫](99/8/19)

さて、続き。
彗星狩りレースに参加した、中小企業のスペース・プランニング社。他社の宇宙船が彗星に向って旅立つ中、やっと衛星起動上で宇宙船の建造にとりかかった。数多くの苦難をスタッフ達が乗り切り、なんか宇宙船プシキャットが完成したが、パイロットのデュークが健康状態のため飛行に参加できなくなってしまい…
ますますおもしろくなってますね。他社とのかけひきや情報戦、宇宙空間での生活写など、話の筋だけではなく細かい描写とかも興味深いです。
全世界的な興味の対象になったせいもあって、他社の進行具合を気にするだけではなく、妨害してくるハッカーの相手もしなければいけなくなって。
宇宙船が出発しても、一筋縄では行きそうにないですね。トラブルをどうやって乗り切っていくのか、それが楽しみです。


●「星のパイロット2 彗星狩り 上」笹本祐一[ソノラマ文庫](99/8/18)

「星のパイロット」の続編。今年の「星雲賞」受賞作であります。
民間の会社も宇宙開発に乗り出しはじめた時代。中小企業のスペース・プランニング社はひょんなことから「彗星狩り」に参加することになった。倒産した大手企業の彗星を確保して宇宙空間での水資源確保プロジェクトの権利を得るために、レースにエントリーしたのだ。大手でも難しいミッションにお金のないスペース・プランニング社がどう闘うか…
「星のパイロット」のときには、専門用語続出でもうひとつ馴染めなかったので、続きをどうしかと思ってたんですが、掲示板で複数の人に「おもしろいから読んで!!」とすすめられたので買ってみました。
これはたしかにわくわくします。絶対不可能に思えるようなことに智恵を振り絞って挑戦してく様がすごくおもしろい。専門用語の羅列も、今回はわからないものはわからないなりに楽しむことができました。
あと2冊、どんな話になるのか、楽しみです。


●「祝福の園の殺人」篠田真由美[講談社文庫](99/8/17)

94年にハードカバーででた作品の文庫本化。
舞台は17世紀のイタリア。侯爵家の別邸の、美しい女主人が造営した美しい庭園。女主人が庭園で謎の死を遂げてから12年、ずっと閉ざされていた庭園を彼女の娘が開く。そして、「楽園ヲ汚スナカレ」のメッセージとともに殺人劇が始まった……
なかなかおもしろかったです。特に中盤、庭園の謎が浮かび上がってくるあたりから。作った人の呪いが込められたかと思われる建造物の真の意味合いをさぐるというのは、この作者の別シリーズ「建築家探偵」シリーズに通じるものがありますよね。
ミステリとしてはそれほどあっと驚くようなものではありませんが、この作品の空気が結構気に入りました。


●「きんぴか2 血まみれのマリア」浅田次郎[光文社文庫](99/8/16)

「きんぴか」シリーズ二作目。浅田次郎の昔の作品の文庫本化です。
まっすぐさゆえに、世間からどこがずれてしまって、ドロップアウトしてしまった、極道者・元自衛官・元大蔵省エリート官僚。その3人を定年退職した名物刑事が集めて…
ピカレスクもの。コミック的な設定のコメディです。
今回は、「プリズンホテル 冬」に登場した、救急病院の看護婦・血まみれのマリアの登場。…って、たしかこっちの方が先だったかな?
カッコいいんですよねー。彼女の話のところには、ちょっとうるっときました。
9月の3作目が楽しみ。


●「ハサミ男」殊能将之[講談社ノベルズ](99/8/13)

第13回メフィスト賞受賞作。結構評判いいので読んでみることに。
自殺未遂常習犯であり、連続殺人鬼である“ハサミ男”が狙った3人目の被害者が、目の前で何者かによって殺されてしまった。その殺し方は“ハサミ男”そのものであったために、“ハサミ男”は真犯人を捜すハメに…
狂気を秘めた「ハサミ男」の視点と、警察の捜査とが交互に挟まれていく構成となっています。
こういう内容だから、かなりどろりとした気持ち悪い話を想像してたんですが、結構あっさりしてて読みやすいです。警察の捜査が佳境にはいった中盤からの展開がおもしろかったです。
メフィスト賞ということでナニな話じゃないかと思ってしまう人も多いと思いますが、これはオススメ。
私は素直な読者なんであっさりとだまされてしまいました。…こんなんではミステリ読みなんて名乗る資格ないですよねぇ。…もっとも私はミステリもキャラ萌えで読んでる“超読者”ですから………


●「ペリペティアの福音 下〜聖還編」秋山完[ソノラマ文庫](99/8/12)

「ペリペティアの福音 中〜聖誕編」から早一年。やっと完結です。
悪の製薬会社と闘う、正義の葬儀社の話から世界の命運をかけた戦いへの突入の危機だとかなんだかとんでもない話になってしまいましたねぇ。
残酷なメルヘン、でしょうか。かなりギリギリの状況が容赦なく描かれてる一方でほわんとした柔らかさを感じさせる話です。
あれだけ広げた風呂敷きをちゃんと畳むことができたというだけでも評価していいんじゃないかと。正直いうとDNAのあたりの話はついていけないものがありましたが、アイデアやエピソードは結構おもしろかったです。
フレンの活躍が嬉しかったな。
オススメ作品です。
秋山完さんは、次作も楽しみな作家さんです。


●「星のパイロット」笹本祐一[ソノラマ文庫](99/8/9)

このシリーズの二作目「星のパイロット2 彗星狩り」がたしか今年の星雲賞をとったし、前からどんな作品が気になっていたので読む事にしました。
民間の会社が宇宙開発に乗り出しはじめた時代。アメリカ西海岸の砂漠にあるハードレイク空港に、一機の小型戦闘機が降り立った。そこに乗っていたのは、女性パイロットの羽山美紀。彼女は若いながら、宇宙飛行士だった…
作者が本当にロケットやシャトルや宇宙の好きな人で、好きでかいてるんだなー、というのが伝わってきます。ただ、私にはその手の知識が皆無に近いだけに、1/3くらいしか理解できなくて…この話はストーリーそのものよりも状況を描くことにウェイトを置いてるように思えるんですが、その各種専門用語にどれだけ馴染めるかでおもしろさが変わるのかもしれないです。
ちょっとのめり込めなかったんですが、宇宙からみた地球の描写はとても素敵でした。
続編、買おうかどうしようか…って感じです。もっとストーリーがメインであれば読んでみたいけど。


●「17才」菅野彰[新書館ディアプラス文庫](99/8/7)

お気に入りの作家さんの本なので買いました。今回は単発ですね。
一応ボーイズラブですが、話がピュアさがどちらかといえば文学のにおいを感じさせるのではないかと。
二つのお話が入っています。「17才」は相手が大切すぎて、無くすのが怖いから、自分から壊そう…としてしまう少年のお話。
「向こうの縮れた亜鉛の空へ」は、大切なものを失ってしまった少年と、宥めるようにしか愛せない不器用な青年との話。
共に湘南を舞台にした、夏のお話でした。切なかったです。


●「ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師」上遠野浩平[電撃文庫](99/8/7)

「ブギーポップ」シリーズ、待望の新作。
今度は、ひんやりと痛い、アイスクリームのお話。ブギーポップも見逃しかけてしまったほどの事件。
子供のように無邪気に、人のためにし続けてきたことが“世界を敵にまわしてしまった”、「失敗作」の“魔術師”。一途なだけに、彼の末路が切ないです。
ラストのイメージの物悲しさがなんとも。
今回は「ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター」の関係者が多数出演。懐かしい人に出会えてよかったです。
表紙や口絵のイラストも、いつもながら見事です。すばらしい。


●「グイン・サーガ67 風の挽歌」栗本薫[ハヤカワ文庫](99/8/6)

シリーズ最新刊。いよいよグインの本編復帰です。
グインがいると、落ち着きますよね。やっぱりグインがいてこその「グイン・サーガ」ではないかと。
今回はグインがトーラスにきたということで、1巻での「約束」がやっと果たされたわけです。
あのあたりのシーンは、結構涙腺にきました。
1巻きを最初に読んだのは、10年以上前なんですが、それから長かったなあ…としみじみ。
さて、次はどこのお話になるんでしょうか?


●「山颪 薔薇十字探偵の憤慨」京極夏彦[講談社 メフィスト9月増刊号](99/8/5)

「鳴釜」「瓶長」に続く、榎さんとゆかいな下僕たちの中編。ちなみに正式タイトルは「百器徒然袋 第3番 山颪 〜薔薇十字探偵の憤慨〜」となります。
今回、なんといっても!!!!関くんの登場でしょう!!
「始末」以来、精神状態が心配でしたが、元気でなによりでした。
それにしても、関くんってばほんとらぶりぃ。あの胡乱さがたまらんです。いきなり京極堂の「愛ある」関くんイジメが炸裂するしっ!!…幸せでした。
今回は「美味しんぼ」のような話かな。わくわくする、楽しい話でした。ただ榎さんの破壊度と京極堂の人でなし度が控えめだったのがちょっとだけ残念です。
たぶん、次の長編の舞台となる事件について軽ーく触れられていますが…連続新婦殺人事件?なにやらハデな感じがいいですねー。これでは関くんも活躍できそうだし。榎さんの出番も多そうだし。楽しみ。
今回の作品は、同音異義語でのお遊びはなかったような…私が気づいてないだけ?
(「やまおろし」と「おろし金」ですな。やっと気が付きました。でも前作や前々作ほど鮮やかじゃなかったし…て言い訳?)
それと、「憂鬱」「鬱憤」「憤慨」ときたら、次は何でしょう?


●「ドッペルゲンガー宮」霧舎巧[講談社ノベルズ](99/8/5)

正式タイトルは「ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会 流氷館へ」です。
第12回メフィスト賞受賞作。あのメフィスト賞ですから期待はしてなかったんですが、今回はストレートなミステリらしい…と聞いて。推薦文は島田先生だし。(でもこの先生の推薦する本って、私的にはちょっと…なのが多いんだけどね)
怪しげな洋館からどこかに拉致された10人の男女。そして起こる連続殺人。…といういかにも新本格な舞台で、「惨劇の進行状況が携帯電話で中継される」とか「密室と中と外に配置された名探偵」というような趣向が。
話自体は、ついツッコミしたくなるほどアラが多いんですが、個人的にはこの「大トリック」が結構気に入りまして。最初に島田荘司の「斜め屋敷」の一節がひかれていますが、私もそこの部分、お気に入りなんです。
そのトリックの「心意気」が気に入ってまして。今回の話も、同じくその「心意気」がよかったです。
ただ、この話自体は「新本格」ムーブメントが起こった頃の作品たちの「最大公約数」的な雰囲気を感じるんですよ。でもまあ、これからどうかわるかわかんないし。とりあえず次作は読んでみようかな。


●「つかぬことをうかがいますが…」ニュー・サイエンティスト編集部編[ハヤカワ書房](99/8/3)

サブタイトルは「科学者も思わず苦笑した102の質問」。イギリスの週刊の科学雑誌「ニュー・サイエンティスト」の読者からの質問コーナーとその解答をまとめたものです。
素朴な疑問から結構深い質問まで、さまざまな疑問がよせられています。それに答えるのもまたしても1読者というのがいいですよね。答える方も楽しんでいるのが伝わってきます。
とてもおもしろかったです。特に「おおー」って思ったのが瞬間接着剤の話かな。他にも色々あったんだけど、とっさに思い出せないや。
ただ、高校程度の理系科学の知識がないと、解答も意味が分かりにくいかも。


●「魔術貴族 フロイト博士の夢」荻野目悠樹[集英社スーパーファンダジー文庫](99/8/2)

「魔術貴族」の続編。
魔術師と魔女の夢の中を舞台にした戦いの話です。
タイトルどおり、あの精神分析で有名なフロイト博士も登場。
キャラの造形は悪くないな、と思います。グレサンデルとセイシのやりとりが楽しいし。
話が軽いわりには、ディーテルはしっかりとしています。
ただ。私はこの作者は、主人公がボロボロにされるような、ギリギリのきつい展開の話が好きだったので、こういうゆるい話は、期待したものと違うというか。こっちの方が読みやすいのは確かだけども…
それよりも、「六人の兇王子」の続きを読みたいんだけど、無理なのかなあ。


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