今週のジャンプ。「バキ」の作者の本を読んだ直後のせいか、いまさらながらジャンプバトルマンガの薄っペらさが気になってしまう。ONE PIECEとかハンターは虚構がしっかりしているからそれほど気にならないんだけどね…ベラベラ喋って正面から対決する殺し屋とかもううんざりです。
ジャガーが久々に復活。やっぱりおもしろいなあ。ハンターはまたしても…
さて、「ヒカルの碁」。第108局「2人きりの病室」。「saiといいます」と話を切りだしたヒカル。それに名人は「知ってるよ」と。以前緒方さんから、saiとアキラの対局を並べてもらったらしい。「キミの知りあいなのか?」という名人の問いをヒカルは肯定するも、「誰にもナイショにしてください」とお願いするのだった。saiは名人と対局したがっているが、ネット碁しかできないから…というヒカルに、正体を明かそうとしないsaiに不信感を抱く名人。「ここに呼びたまえいつでも打とう」とあくまでも対面の碁を希望する名人に、佐為は一瞬切ない顔をしたあと、「私はここにいる! 碁盤と碁石の用意を!」と叫ぶのだった。そんな佐為をみて、ヒカルはもう一度名人に懇願する。名人は…saiの力はわかるが、アキラとの一局はアキラのヨミの力が足りなかっただけで、自分なら勝てた。ただ実際に自分で打ってみないと相手の力はわからないが…と。それにヒカルが「一度でもお願いしますっ」と必死に。そのヒカルの熱心さに打たれた名人は対局を了解する。
一方、緒方さんの部屋。一度棚上げにしたsaiのことをあれこれ考えていた。一度はヒカルのことをsaiかと思ったが、実際にヒカルの対局をみてヒカルは佐為でないと断定する。「ではsaiは誰だ?」
病室に戻って。「タイトル戦の合間の気晴らしになる」という名人の言葉にカチンとくる佐為。もう一度「saiと自分のことを誰にもナイショにしてほしい」とヒカルは名人に念押して、名人は他言をしないことを約束した。対局は来週の土曜日に。せっかくの名人との対局が叶ったものの、タイトル戦の合間のついでのような扱いに、「こんなついでのような対局を望んでいたわけではないのに」としょげる佐為だった。そんな佐為をみたヒカルはつい名人に「真剣に打ってくださいね」と。「先生が負けたときに「真剣じゃなかったから」って言われちゃやだし」と口を滑らせてしまう。それにムッとした名人は「私は負けんよ 負けたらプロを辞めてもいい」と。あまりに重大な言葉にヒカルはなんとかその約束を撤回させようとするが、そんなヒカルの態度にますますムキになる名人。一方佐為は「ヒカル 感謝します」と名人に闘志を剥き出しにするのだった。
今週はジャンプの表紙も「ヒカルの碁」でした。佐為とヒカル。でも佐為の狩衣の色が強烈だなあ。春を意識した色なんでしょうが…小畑先生って線が綺麗で、カラーも質感の出し方は抜群にうまいけど、色彩感覚はもうひとつのように思えるのは私だけでしょうか。
さて、本編。表紙の佐為の表情、迫力ありますよね。ぎりぎりまで引き絞られた矢のような。今回の話もただの会話だけなんだけど緊張感があってよかったです。名人に佐為が見えないし、佐為は自分の言葉を名人に伝えるすべはないから、すれ違ってしまう気持ち。それゆえに高まる闘志。そんな2人の間を必死に取り持とうとするヒカルがけなげでした。この三者三様の微妙なズレがうまくドラマを作っています。名人の「負けたらプロを辞める」宣言とか。名人からすればプロでもない素人に負けるとは思えないでしょう。それだけ囲碁にプライドがあるからこその五冠なわけで。一方ヒカルにすれば佐為の強さを知ってるから、名人が負ける可能性も考えられてしまう、と。そんな態度が逆に名人には自分を侮っているように思えたんでしょうねぇ。
「私はここにいる!」の佐為が切ないなあ。肉体を持たない、ヒカル以外とのコミュニケーションを持つことはできない辛さ。saiがリアルを獲得できるのはネットの中だけで。…前にインターネット碁編をやったときに、ヒカルが「オモしれェな 佐為 おまえってオレにしか見えないのにさ この箱の中にはハッキリおまえがいるんだぜ 藤原佐為が」と呟くシーンがありましたが、ネットの中で生き生きとした生命を持てる佐為に私もドキドキしたものでした。今回はそのことを思いだしちゃって。
逆にネットになじみのない名人が、そういうつながりに訝しさを抱くのも当たり前なんですよね。でも名人はヒカルの中の何かの存在に気が付いているかも?と考えてたんですが、そこまで世の中甘くなかったです。たしかに霊が宿って…など普通は思いつかないろうし。
あと、緒方さんのsaiとの関わりの伏線がここでまた復活しました。一度は「表にでてこないものは興味がない」と切り捨てたわりには、マメにネット碁を覗いていたんですね、緒方さん。ヘボsaiのことも知ってるし。直接の当事者ゆえに幻惑されているアキラとは違って、緒方さんはヒカル≠saiであることが分かってるようです。…前にも何度か書きましたが、私は佐為の正体の判明には緒方さんが深くかかわると思ってたんですよ。「現代の定石を覚えた本因坊秀策」の伏線がありますから。佐為の正体に対しては登場人物たちが少しずつ正解へのピースを持ってるわけで、それを誰かが集めてひとつにしてくれたら答えがわかるのに…ともどかしく思います。私はその役割を緒方さんに期待してるんですけど。三谷姉と白川先生の持つピースを手に入れてくれるのは緒方さんではないかと。
さて、名人と佐為の勝負。…いくらなんでもここで名人がプロを辞めるわけにはいかないでしょうから、佐為が負けるか、もしくは対局がなんらかのトラブルで最後までいかずに途中で終わるとか。…でもほったさんだからなあ、あの人なら何をやってもおかしくないですから。名人敗北の可能性も捨てきれない。あ、でもよく考えてみたら、結局はヒカルが打つわけで、ヒカルも佐為のいうままにアキラと対局した昔とは違って、今は盤面の形勢もわかるわけです。名人の言葉を思いだして、佐為が勝ちそうになっても指示どおりに打たずにわざと負けることもできるわけだし。とにかく、どんな対局になるか楽しみです。
キャラ萌えとしては、緒方さんが今週もでてきてくれて嬉しかったです。あいかわらず生活感のない部屋ですねぇ。灰皿がおもしろいデザインですけど、あれも小畑先生のものかな?
今回はヒカルがなんかかわいいですねぇ。切なそうな顔、おろおろとした困った顔といい。ベストショットは「アイツ……ネット碁しかできねェし…」のしょぼんとした背中。ヒカルの気持ちが切々と伝わってきます。私は第57局のノートをみつけたときの三谷くんの背中も好きなんですが、こうやって背中で気持ちを語れるだけの画力が小畑先生にあるからこその演出なんでしょうね。