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【ヒカルの碁 第121局「塔矢行洋引退!」】 01/06/25

2週間ぶりの「ヒカルの碁」。第121局「塔矢行洋引退!」 名人の引退発言をうけて、囲碁関係者に衝撃が走る。四冠の名人が引退すればタイトル戦はどうなるのか? 棋院はおおわらわだ。出版部の天野は驚くばかり。名人の後援会会長も事情は知らされていなかった。森下九段の門下生たちはとまどいの中、体調不安のせいか?と推測していた。自分はまだタイトルを奪っていないのに、と子供のように怒る倉田。「…行洋の家に行ってみる」とだけ呟く、名人と同期の森下九段。タイトルと引退は関係ないだろうとイヤミったらしく言う座間。名人の碁はこれから新境地を開くものであるので、限界を感じての引退とは思えない緒方十段。名人がネット碁でアマに負けたという噂を聞きつけて棋譜を手に入れたらそれが名局、「saiに負けて引退」という噂は嘘だと売店のオバさんに一方的にまくし立てる一柳棋聖。何もかも悟ったかのように「―ったく、ワガママな男じゃのう 塔矢行洋」と呟く桑原本因坊。
そして、名古屋。アキラは対局のために日本棋院中部総本部に来ていた。そこで父親の引退は体調のせいか?と聞かれる。引退の理由はアキラも知らないが、父親の体は元気だと告げるアキラ。アキラの母の明子は、理由はしらないけど、「心配しなくてもいいわよ」と。なぜなら「あの人は思い悩んでるようなカオしてないもの」と。しかも名人の家には棋士が何人も来ているので、対局に困ることはない。それでも納得できない棋院の職員に、「父の好きにさせてあげて下さい 代わりにボクが頑張りますから」と笑顔で告げるのだった。そこにひょっこり現れたのは妻の実家の法事のために名古屋にきていた一柳棋聖。棋聖に名人の様子を聞かれ、「碁を打ってますよ。森下先生や大久保先生もきました」と答えると、「そういえば倉田くんも行ったってなあ」と棋聖の口から倉田の名前がでてくる。倉田の名前がでてくると、とたんに表情が思いつめたものになるアキラ。…倉田が名人のところにきて一局指したとき、アキラも側にいて対局をみていた。碁を自由に打つために引退したという名人の理由を聞いても納得のできない倉田。やはりタイトル戦の空気の中でしか打てないものもあるはず、だと。しかし名人にとっては、様々なしがらみや移動などで時間を潰さなければいけないことの煩わしさも無視のできないものであった。倉田は言う、「これからは先生はこの家にいるだけで対局相手の方がやってくるわけですか。このオレのように」 「また来ます」という倉田を玄関まで送っていくアキラ。倉田や緒方を目指して頑張る、この前は倉田に負けたが今度は勝ちますというアキラに、「キミは上ばっか見てるな 下にもコワイのがいるのを知らないだろう」と言う倉田。「キミのすぐ後ろに 進藤ヒカルがいる」と。思いがけなくヒカルの名前を聞いて、それまでの愛想のよいアキラの表情は険しいものに変わった。倉田までもがヒカルに注目している……対局を前にしてアキラは、今日の対局さえなければ東京のヒカルの対局を見に行けたのにと、ヒカルに思いを馳せるのだった。
そして東京。若手棋士ふたりの会話はやはり名人引退についてだった。片方の人(三段)の本日の対局の相手がヒカル。彼はヒカルは新人だし、プロ一戦目はアキラに不戦勝だったため実質これが初対局、ヒカルの過去の対局も去年の若獅子戦は一回戦負け、新初段戦もメチャな碁だった。正直大した相手だとは思っていなかったが、落ち着き払ったヒカルに少し動揺する。
なにか一皮剥けたかのような表情のヒカル。「19路の碁盤がいつもより狭く感じる 負ける気はしない」と。そんなヒカルをみて、「ヒカルが神の一手に続く道を歩みだす― 私でなくヒカルが― 神のさだめたこの運命にはあらがえないのか?」と寂しげな顔で自らの思いに篭る佐為だった。


一週あいてた分寂しい思いをしましたが、その分今週はオールスターキャストで満腹。しかもカラーですし。サファリルックのヒカルがかわいいです。質感の出し方があいかわらずうまい。眼福でした。
名人の引退へのトップ棋士それぞれの反応がキャラの個性を見事に表してるのがうまいですなあ。個人的には森下九段と名人との間にある絆を感じられたのがなんだか嬉しかったです。森下九段の訪問したときの様子は本編では描写されませんでしたが、なんか想像を刺激するというか。若手はオロオロという感じですが(ズルイって子供のように怒る倉田はとてもらしい)、オヤジたちの反応が深い。最後に桑原本因坊の何もかも分かったような感じのつぶやきでしめるあたりが、見事。
これでわかったのは、名人の引退がsaiに負けたせいであるという噂が流れているということ。やはりあの対局をみてた人は多いんでしょうねぇ。名人から直接話を聞く機会ができる日本ならともかく、世界中のネット碁ではそれが真実かのように語られていくのかなあ。
アキラは父親の引退に取り乱したりしなかったんですね。それについて詳しい描写はされてませんが、saiとのことでなにやらうすうす感づいていたのでしょうか。それにしても明子さんはさすがあの名人の奥さんというべきか。ああやってありのまま受けとめてあげる度量というのはすごいですね。でも作中でも語られてましたが、生活に困っていないとはいえ年収1億円がふいになるんですよっ。……お金にはあんまり執着してないんでしょうね、あの一家は。
アキラはあいかわらずというか、もうヒカルのことになったら盲目です。ある方のレポを読んでて気がついたのですが、アキラとヒカルって、「もう二度とキミの前には現れない」と5巻でアキラがヒカルに告げてから、この前の病院で「進藤?」「塔矢!」まで2年間、言葉交わしてないんですよっ!! …少年マンガにおいてライバルが物理的に遠く離れてるならともかく、顔を合わす機会が何回もあるのにコレって一体……そのくせ互いに気にはしてて、アキラはジャンプ編集部にさえ「ストーカー」呼ばわりされる始末ですから。変わったマンガだなあ。もうしばらくアキラとヒカルのすれ違いは続きそうですが、だとすると近々あるはずの若獅子戦は一体…これはまた後述。

まさしく一皮剥けたかのようなヒカルの顔。絵だけでそれまでのヒカルとは何かが違うことを一瞬で読者に悟らせてしまうんですから、すごいです小畑先生。19路という広さを持つせいで、現在のコンピュータでも処理しきれないような無限の可能性が生まれる碁盤でも、今のヒカルにとっては狭くすら感じるほどとは。急激な成長なんだなあ。そのぐんぐん成長するヒカルゆえに佐為は複雑な思いを抱いていますが、とりあえず3週ぶりに佐為が出てきたことはよかったとして、ヒカルも佐為があんな表情してきたら気がついてやれよ〜〜〜。佐為にしてもそんなにマイナス思考に入るなよ〜。ヒトはヒト、自分は自分であって、誰かが誰かの道具なんかではないのです。そのことに早く気がついてくれないかなあ…ほったさんのことだから、「自分はヒカルが神の一手を極めるための道具だ」という思いに佐為が囚われてるまま消滅なんてことはないと思いたいのですが…
あと今回の小ネタでは、アキラの口から出てきた「大久保先生」って誰?ってところでしょうか。森下先生と並んで名前がでたということは、実力派棋士なんでしょうね。本格的な登場が楽しみです。

さて、ここでここしばらくの展開を時系列で整理してみましょう。
4/4(水)  ヒカルとアキラの大手合。名人が倒れ、ヒカルの不戦勝
4/7(土)  名人ネット碁開始。ヒカルが名人の病室にお見舞いに。名人、saiとの対局を約束
4/12(木) 十段戦第四局。名人vs緒方は名人の勝ちで2勝2敗に。
4/14(土) 名人とsai、ネットで対局。sai勝利。佐為、自分の存在を危うく感じ始める
4/15(日) ヒカルが名人の病室に。そこでの話を緒方に聞かれる。アキラとヒカルがニアミス
4/17(火) 森下九段の勉強会に参加するヒカル
4/19(木) 十段戦第五局。名人vs緒方は緒方の勝ちで緒方が十段位をゲット。
4/20(金) ヒカルと倉田が碁会所で一色碁を。名人の引退宣言。
4/21(土) 倉田と名人の対局。アキラが倉田からヒカルの名前を聞く。
4/22(日) アキラは中部で対局。ヒカルは東京で大手合。

ヒカルがプロになった頃が遠い昔のような気がしますが、まだ作中ではこれだけの時間しか動いていないわけです。作中の世界はジャンプでの連載とほぼ同時進行ですから、今は同じ2001年。佐為の砂時計が動き初めてからすでに一週間経ってます。数日の命であるかのような反応を佐為がしてたので心配でしたが、とりあえず一週間は持った、と。
今後の展開として、5月に入れば若獅子戦があるんです。ヒカルはもうかなりの力をつけてきてますから、去年みたいに一回戦負けとはならないでしょうし。勝ち続けるならアキラとの対局があるだろうし…でもここまで散々スカしてきて、若獅子戦程度でアキラとの対局が実現するとも思えないんですよねぇ。うーん。アキラかヒカルのどちらかがトーナメントに参加できないような事情がでてきてしまうとか? あんまり考えたくないけれども、ヒカルが佐為を失ってしまったせいでズタボロになって絶不調で一回戦負けになるとか…
そして、7月に入ればプロ試験の予選開始です。門脇さんは今年は挑戦するのか? 伊角さんの復活はなるのか? ぜひ書いてほしいんですけどねぇ。
ここしばらくの展開で現実との時間軸がズレちゃいましたから、また途中で季節をポーンと飛ばされちゃいそうな気はしますが。さあて。予告は「ヒカルの驚くべき急成長ぶりを目の当たりにした佐為の想いは…!?」となってますが、…まさかここで爆弾が爆発するようなことはないですよね? ジャンプの予告ってアテにならないかなあ。


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