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【ヒカルの碁 第123局「消えたくない!!!」】 01/07/09

第123局「消えたくない!!!」。佐為が宿っていた碁盤の、ヒカルにしか見えなかった染みが、なぜかヒカルには以前よりも薄く見えるというのを聞いて、一層不安を募らせる佐為。祖父に芝居に誘われたヒカルは、一泊二日で泊まりの仕事があるからといって断った。そのかわり、これから一局打とうという話に。自らの消えうせる運命を悟った佐為は、せめて…これから帰って二人で一局打とうとヒカルにお願いする。しかし、ヒカルは佐為とはいつでも打てるから久しぶりに会った祖父を優先させるつもりだった。とりあってくれないヒカルに焦れて、ついに佐為は告白する。「ヒカル! 私はもうじき消えてしまうんです」と。でもヒカルにはその佐為の叫びは伝わらなかった。それは佐為の「いつもの」ワガママじゃないかと軽く受けとってしまって、つい文句も言ってしまう。蔵から出ていくヒカルの後ろを促されながらとぼとぼヒカルについていく佐為は悲しげに呟く。「ヒカルなんか 私が突然いなくなってオロオロすればいいんだ」と。
翌日。観光ホテルで開かれた一泊二日の日本棋院主催の「囲碁ゼミナール」。ヒカルも手伝いとして参加する。緒方十段も参加することをスケジュール表で知ったヒカルは、saiのことであれこれ言われたくないからなるべく近づかないようにしようと決めていた。囲碁ゼミナールでは緒方十段と春木良子初段との公開対局。盤面解説は芦原弘幸四段と西川恵美三段。芦原と緒方のやり取りに会場から笑いが漏れる一幕も。その後は自由対局があったり指導碁があったり。ヒカルもオジさんたち相手に指導碁を行っていた。昼間はなんとか緒方から逃げ回ることに成功したヒカル。夜中、まだ会場に居残っているオジさんたちに指導碁をし、その教え方のうまさに感服するギャラリーだった。すっかりヒカルびいきとなっていたオジさんたちはヒカルの今後に期待をかけ、いずれは海外棋戦も頑張って日本のふがいなさを返上してほしいと発破をかける。その話を聞いて韓国の院生の子と対局して勝ったという話をヒカルはする。オジさんたちに指摘され、秀英もプロになっているのかも…と思いを馳せるヒカルだった。
突然、そこに緒方十段登場。緒方はすでにぐでんぐでんに酔っ払って、座った目で「saiと打たせろ」とヒカルに迫るのだった。ヒカルは慌てて否定するけれども、saiは落ち着き払った顔で「打ちましょう」これだけ酔っ払っていてはざれ事にしかならないだろうから、と。緒方がこんな状態ではまともな碁にはならないんじゃないか?と訝しがるヒカルに、佐為は今後緒方と打つ機会はないだろうから、たとえどんな碁であっても一局打って病院でみせた緒方のsaiへの思いに答えてあげたいと言う。それを聞いてヒカルも「十段祝いに打たせてあげようか」と思いなおした。そこで逆にヒカルは今から自分と打ってほしいと持ちかけて、緒方の部屋で対局を行うことに。冴えない顔をしている佐為にヒカルは苛立ちを覚える。そして部屋に移動するヒカルについていきながら、佐為は答えのない問いを誰にでもなく投げかけるのだった。「なぜ私ではなくヒカルなのですか? 神さま」自分は消えてしまうのに、なぜヒカルにだけ輝かしい未来があるのか。ヒカルへの嫉妬を押さえきれない佐為。でも嫉妬だけではない。「ヒカルと別れたくない」「虎次郎とも別れたくなかった」「あの時病の床から虎次郎は私に言った すまない佐為―――と。」「別れたくなかった」「別れたくなかったのに」


うわっ、酔っ払い緒方さん!!!!…はとりあえず後回しにして、まずは感想を。
最後の方のページ、泣きました。何度みても涙がじわりと溢れてきます。

人間というのは、他者からの視線によって自分の位置を確認しないとやっていけないのかもしれません。口汚くののしられるよりも、無視されたり空気のように扱われる方が堪える場合だってあります。佐為はとりついた本人以外の人とのコミュニケーションはとれません。それでも秀策にとりついていたときには碁を通して対局相手と語り合うことはできましたが、今は自由に対局ができない上に唯一の窓口であるヒカルは自分の気持ちをわかってくれない。…それも仕方のない話ではあるけれども。ヒカルにしてもせっかく佐為を喜ばせようとしたのに嬉しくなさそうな顔をされたり、自分をバカにするような言葉を言われたら機嫌損ねて頑なになるのも仕方がない。それと初期の何かあるとすぐに「対局!!」と言い出したことが今になって跳ね返ってくるわけです。「いつものワガママ」だととられてしまう狼少年状態に。そういうわけで佐為も自業自得といわれてても仕方ないと思うけれども。その上、自らの命を絶つという後ろ向きな選択をして、本来ならばこの世から消滅してたはずなのにそのまま魂だけは残り、秀策の運命を狂わせ、ヒカルやアキラ、名人といった様々な人の運命を変えていったのは佐為なのですから。でも今、佐為にはそれらの反動がすべて跳ね返ってきていますし…佐為はワガママだよなあとは思うけれども、今回の佐為の静かな慟哭は胸に応えました。ヒカルへの歪んだ嫉妬を自覚し、思いきって告白したのに自分の苦しさをわかってもらえないヒカルに「ヒカルなんか」とつい思ってしまうけれども。でも一番は、好きだから、大切な人だから、離れたくないという思い。…切ないなあ。

前から緒方さんはsaiの正体についてはキーとなる人物だと睨んでましたが(saiがらみの緒方さんの伏線が多数ありますから)病院での対局未遂に気を殺がれちゃいまして。でもそれで終わらずに、ここでこう絡んでくるとは。なりゆきの対局ぽい描き方ですが、ここまでの伏線をかんがみると、佐為は緒方さんとの対局をきっかけに、なんらかの転換があるのは間違いないかと。
ただ、ヒカルの佐為のことを分かってやれない数々の失言は、佐為を失ったときにヒカルが受ける痛手になるのはたしかでしょう。だからヒカルから佐為は離れてゆくだろうし……でもここでいきなり佐為vs緒方戦が実現したというのは、単に佐為が消えうせるような単純な展開になるとは思えないし。
いっそのこと、なにかのきっかけがあって(対局中にカミナリがいきなり落ちるとか)突然佐為がヒカルから離れてしまう。そのときに対戦していた緒方は倒れて数日意識を失う。そして病院で目が覚めたときに、緒方の側には緒方にしかみえない烏帽子姿の幽霊がいた…というのはどうでしょうか。ヒカルも佐為を失って反省するだろうし、佐為は物語から消えることなく済むし、緒方さんは出番が増えるし。そんなオバカな展開にはならないだろうとは思いつつも、なってくれたら…と妄想がとまりません。オカルトみたいなものはハナからバカにしてた緒方さんにいきなり佐為がとりつく!! うろたえる緒方さん!! 子供な反応をする佐為に手を焼く緒方さん!! 想像してると楽しいです。…実現してくれないかしら。(ムリだって)

それにしても緒方さん……タバコはスパスパ吸うわ、人をネタに賭けするわ、少年誌の巻頭カラーで女の家から朝帰りするわ、子供の教育上悪いことばかりやってる上になんだか情けない緒方さんですが、来週の巻頭カラーも酔っ払い緒方さんから……いいのか、ジャンプ。私としてはカッコつけてるわりはみっともない緒方さんもかわいくて仕方ないんですが(あのジャンケン!! うわー、たまらんです〜〜〜)未来のある青少年にこんなダメダメ大人を見せちゃっていいんですか? あ、反面教師とか?

でもなぜアキラが今回は参加してないんでしょうねぇ。収入も経験も少ない低段者に優先して棋院が仕事を斡旋していたとか、単に順番とかその程度の理由なのかなあ。

第121局の感想で物語中の日付をまとめてみましたが、あれは間違いでした。「ヒカルの碁かってヨミ」の掲示板で「プロの対局は低談者は水曜日に行われる」ということを教えてもらい、翌日は休みということから、ヒカルが東京でアキラが名古屋で対局していたのは5/3。5/4がおじいちゃんちの蔵での話で、5/5,6が囲碁ゼミナールとなります。ついでに若獅子戦はおそらく5/19。
ちなみにほったさんが去年の7/31の第79局「ヒカルVS椿」の回の近況報告に「取材で二泊三日の囲碁ミナールに参加しました」と書いてあるんですが、それが今回の話ですね。もう1年前にこのあたりのエピソードの構想はできてたんですか。元々ほったさんのネームは発売より10週程度は先行しているのは分かっていましたが…こうやって私が毎週ジタバタしてるところなんて、とっくの昔にほったさんは作り終えてるわけで。なんかお釈迦様の手のひらで遊ばされてる感じだなあ。でもいいや、おもしろいから。次のマイルストーンになるエピソードは、85局のときの近況報告でほったさんが書いていた「京都・山陰、そして秀策の出身地である因島にまで取材で足を運んだ」でしょうが、今の佐為の存在問題がカタがついたらその話に移るのかなあ。
あと、今回秀英の話がでてきましたから、日韓戦へのヒカルの出場もさほど遠くない頃にあるかもしれません。

次号はまたしても巻頭カラー。…あの、つい先々週が巻頭カラーだったんですが。小畑先生、酷使されすぎです。次号は衝撃の展開だそうですが…いよいよ、佐為消滅のカウントダウンの終了ですか? でもここで緒方さんが絡んでくるあたり、一筋縄の展開にはならないと思いますが。


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