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【ヒカルの碁 第149局「最強初段」】 02/05/27

第149局「最強初段」。
「碁は無限なり」 「百万局打ってもわからない」
「答えは……あるのか?」
「盤上は未だ深い闇」
「手さぐりで前へ行くのみ 光明を求めて」
「しがらみを捨てたにすぎぬ この身は永遠に十九路の迷宮にある」
「私はまだ神の一手を極めていない――」

名人の碁会所で、学校帰りにアキラとヒカルが対局後の検討を行なっていて、そのまわりを碁会所の常連おじさんたちが盤面の様子を眺めていた。そこに久米が久しぶりにやってくる。市河の話によると、ヒカルが来出したのは最近のことらしい。「仲いいんだ?」と聞かれて苦笑する市河。ちょうどその時、見学していたおじさんたちが雲行きが怪しくなったことに気がついて退散。ヒカルがいくつも読み落としをしていたことにアキラがキレて声をあげ、ヒカルもそれに口答え。子供のようなケンカをした挙句、怒って帰ったヒカル。それは碁会所での恒例行事のようなものらしい。それをみた久米が、たかが初段のヒカルが本因坊リーグにいるアキラと対等ぶるなんて身のほど知らずだと呟くと、それを聞いていたアキラは氷のような冷たい顔で「ボクだってたかが三段ですよ」といい放つ。どんなに強くても最初は初段、「進藤を初段と思って侮らないでください」と告げて立ち去るアキラをみて、つい市河に「ケンカしてたんだよな?」と確かめてしまう久米。

日本棋院に和谷とヒカルが向っていた。この日、ヒカルは本因坊戦の一次予選三回戦で、川崎三段が相手。和谷は名人戦一次予選のニ回戦で遠山二段相手との対局だった。ヒカルは早く高段者とやりたいと嘆息する。川崎三段をなめちゃだめだろうという和谷に、ヒカルは舐めているわけではないけれどもアキラはすでに九段を相手にしているのだと答える。最初は誰も初段、そこで大手合で買って段位を少しずつあげてゆくか、タイトル戦を一次予選から地道に勝ち抜いてゆくしか低段者が強い相手と戦う道はない。和谷はまだ二段、ヒカルに至ってはまだ初段なのだ。ヒカルももちろんそれはわかっていても、まだるっこしい。
ヒカルの対局相手の川崎三段は、今日の対局相手のことを考えていた。彼は今年の新入段者だが、プロになって半年以上であれば、強い奴は二段に昇格してもおかしくないはず。警戒する必要はないだろうと判断した。しかし、もちろん油断はするつもりではない。調子もいい状態で、川崎三段の対局は始まった。
お昼になって、ヒカルは外に食べに出た。注文していた店屋物を食べに控え室にいこうと和谷は沈痛な顔をした川崎三段から呼びとめられる。「…なぜ初段なんだ?彼は」と。あれだけ強ければ昇段してて当たり前なのに。和谷はヒカルが春から夏にかけてヒカルが手合いをサボって不戦敗になり、昇段ポイントが溜まらないので当分は昇段できないことを言うと、川崎三段は「これだけ打てるのに当分は初段なのか… 最強の初段だ」と呟く。その言葉に誘われるように、和谷も盤面をみた。
和谷は控え室でお昼を食べながら、ヒカルと川崎三段の対局のことを思い出し、ヒカルの強さについて考えこんでいた。そんな和谷の耳に、他の棋士達の噂話が聞こえてきた。若手プロ対象の国際棋戦が行なわれるらしい。18歳以下での日中韓Jr.団体戦。低段者の自分たちでも活躍の場ができると喜ぶ和谷。しかし、日本代表は代表選抜戦をやるのではないか…と聞いて和谷は喜びから引き戻された。ちょうどその時、お昼から帰ってきたヒカルが和谷に声をかけた。ヒカルは売店で目に止まった扇子を購入していた。扇子を眺めるヒカルの言葉にしがたい雰囲気に気おされた和谷は、Jr,大体戦の話をヒカルにはできなかった。ヒカルの背中を眺めながら、代表選抜か…と考える和谷。そして午後の対局が始まった。


ついに本編が再開です。どれだけ待ったことか… これから毎週読めるかと思うと、嬉しい限り。
やはり番外編と本編では「濃さ」が全然違う。おもしろいなあ、本編は。
今回はジャンプ表紙(ヒカル+アキラと秀英、楽平、揚海)に巻頭カラー28ページ。扉絵はヒカル、アキラ、和谷、伊角さん。みんなカッコいい!!

「佐為編」の最後、ヒカルとアキラの「初めて」の対局の時期は2001年の10月、それからどれだけ時間が飛ぶのかなあ…と心配していたんですが、時間はそれほど経ってない様子。市河さんの言葉や「プロになって半年」、アキラとヒカルが中学校の制服姿などと考えあわせると10月終わりか11月頭あたりではないでしょうか。「キャラクターブック」の「週刊碁」のアキラ2008年の長髪になってなくて、とにかくよかったです。やはりアキラはおかっぱが似合う。

それにしてもヒカルとアキラの仲のよいことといったら。馴れ合いの友達じゃなくて、子供みたいなケンカを本気でし合える相手というのがいいですよねぇ… 市河さんや碁会所の人たちの「あーあ、まただよ…」というようなうんざりと呆れかえった雰囲気がいい味を出してます。
あのふたりらしい、いい感じのライバル関係になったようで。でもあのケンカ、アキラは本当に回数を(意識しないうちに)数えてそうですが、ヒカルの方は適当に言った数値じゃないかと思うんですが、どんなものでしょ? それともふたりとも自分のことはよく覚えてなくても、相手のことはちゃんと数えているって感じなのかなあ。
ケンカしているはずなのに、ヒカルがバカにされるようなことを言われるとそれを切って捨てるアキラが最高。本当にアキラにとってヒカルは特別な存在なんでしょうね。

さて。「佐為編」はアキラとヒカルの「誤解と思いこみとすれ違い」による追いかけっこなライバル関係を主軸にしていましたが、それが解消されてどんなのが柱になるかと思ってたところ… 冒頭の囲碁の深さに足掻く棋士たちの言葉(「私はまだ〜」は明かに佐為、「しがらみ〜」が名人なのは確実としても、「手探りで〜」は桑原先生かと思うんですがどんなものでしょうか?)からすると、「神の一手編」になるのではないかと思うんですが。
ヒカルは今まではアキラの背中を追ってまっすぐに進んできたけれども、次のステージとしてヒカルが強くなることで、囲碁の深さを感じ取り、囲碁の神様の前での自分の小ささに絶望を感じる…というような展開になるかも。こうやって私が文章にする薄っぺらくなってしまいますが、究極を求める人たちがどれほどの高みでわずかな差を競って苦悩しているかは、竹本健治のマンガ「入神」(南雲堂 905円)あたりに描かれています。今後、「ヒカルの碁」でもそういうギリギリの攻めぎ合いが正面きって描かれるんじゃないかと思います。今回の扇子のエピソードは、ヒカルが第148局で佐為から扇子を受け取ったときと同じ構図で描かれていることから当然「佐為からヒカルが神の一手を目指す道へのバトンを受け継いだ」こととリンクしているはずですし。
「神の一手」を主軸とするなら、枝要素として「国際棋戦」や「新しい波」の話になるのではないでしょうか。「神の一手」は佐為編は「アキラとヒカルの関係」を主軸とした「佐為編」の重要な枝要素でしたから、それによって主軸がシフトした感じかなあ、と。

その国際棋戦。メンバー選抜あたりにはヒカルが「最強初段」であることもエピソードして関わってきそうですから(「進藤? その子はまだ初段ではないですか」というような感じの)わりと早いうちに行なわれるような気がします。揚海さんも趙石くんにまた会えるのが今から楽しみで仕方ありません。団体戦のメンバーが何人になるかわかりませんが、実力的にはまず当確のアキラやヒカルではなく、境界線上にある和谷くんの目線から話は描かれるんでしょうか。でも和谷vs楽平のエピソードはあるでしょうから、なんとか和谷くんがメンバーに潜り込むんじゃないかなあ、と思うんですけどね。ヒカルがあれだけ成長したために、和谷くんが「ヤムチャ化」するのではないかという心配も少しあるんですが、ほったさんのことですから和谷くんがただの「やられ役」や「解説役」に成り下がるということはないとは思いますが…

それにしても小畑さんの絵の冴え方が見事です。元々のやんちゃなヒカルが、どこか一皮むけてどこか変わった感じを見事に出しています。小畑先生の表現力の凄さを感じさせてくれます。

関連書籍の話。「ヒカルの碁勝利学」(石倉昇 集英社 1300円)が発売されました。タイトルは怪しい便乗本のようですが、発売が集英社なのでもちろんオフィシャル。表紙は小畑先生書下ろしの佐為・ヒカル・アキラのカラーイラストです。(残念ながら今回の絵は「どこかでみたことある」構図…)
マンガをその道の専門家が読み解く「勝利学」シリーズの三冊目で、執筆者は「白川七段」のモデル(?)というプロ棋士の石倉八段。彼は東大→大銀行就職とエリートコースを歩みながら、囲碁への情熱を押さえきれずにプロになったという経歴の持ち主です。色々な本を書いてる方だけあって、囲碁を知らない初心者向けにもわかりやすく、しかもその道のプロの深さも感じさせてくれるいい本に仕上がっています。私が「ヒカルの碁」にハマったときに、ちょうど読みたかったのがこういう本だったんです。
「ヒカルの碁」に何気なくでてくる会話…例えば、越智くんの家に初めて指導碁に行ったときの、アキラと越智くんとが検討するときの会話はどういう意味を持っているのか? マンガに登場する棋士たちのタイプ(棋風)はどんなのか? プロ棋士たちは盤面を「絵」のように覚えているらしい… などなど、原作の作品世界の背景についての理解が深まるのではないかと。少なくとも「キャラブック」よりはよほど。(あれはあれで楽しいのですが…)
この本を読むと、ほったさんが物語に息を吹き込むためにどれだけ取材して、その感覚を自分なりに消化してきたのかがよくわかります。ハードカバーゆえにちょっとお値段は高めですが、熱心なファンなら読んで損はない内容だと思います。

コミックス17巻は6/4発売。表紙は佐為ですか。てっきりヒカルとアキラだと思ったんですが…
物語に一区切りが付く巻だけに、気合の入った絵が見られそうで楽しみです。
また全員プレゼント第二段のお知らせがありましたが、今回はきんちゃく。絵がかわいいので申し込みする予定。
7/19には「ヒカルの碁」の囲碁スターターセットがでるそうです。イラストつき碁石はほしいかも…


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