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【ヒカルの碁 第153局「一歩前へ!」】 02/06/24

第153局「一歩前へ」。
御器曽とヒカルの対局。御器曽は、熱くなったヒカルが激しく攻めてくることなく手厚く打ってきたことに拍子抜けしていた。逆に御器曽は中央への進出を図る。自分の華麗なうち回しを自画自賛する御器曽に、ヒカルは冷たく「オレに話しかけてくるヒマがあったらもっとよく盤上をみるんだね」と言った。一見、ヒカルが劣勢に見える盤面であったが、ヒカルは冷静に「ここからだ」と打ちこんでゆく。
北斗通信システムの室長とそこのOLは、大会が開催されるホテルの責任者と北斗杯の打ち合わせを行なっていた。ホテルの責任者はお客様である日・中・韓へのすべての人への気配りが大切、特定のチームは応援しないというが、OLはやはり日本を応援したいという。彼女は日本では期待できそうな人の名前として、塔矢アキラの名前を警備員のおじさんたちから聞いていた。しかし、塔矢アキラ以外に韓国や中国に勝てそうな子は日本にはいないとも聞いたのだ。それを聞いて、室長は「もう一人いるよ」と答えた。まだ今年のプロ試験に合格したばかりでプロとしてのスタートを切ってないが、まわりに期待されている子が関西棋院にいる、と。
御器曽とヒカルの対局。御器曽は青い顔をしていた。ヒカルは中央の薄みを構わず地に走りすぎたのがアンタの敗因だと冷たく言う。若いやつらに踏みつけにされていくのにはなれていたが、まさか初段にまで… 御器曽は負けを認めた。若いヒカルに格の違いを見せつけられるような碁を打たれてしまった。
一方、アキラも中押し勝ちをおさめた。片付けが終わったアキラは、ついヒカルの方を振り向いて様子をみてしまう。御器曽は碁石を片付けながら、「秀策に詳しいようだな…秀策の打ち碁をよく並べたりするのか?」と問いかけた。ヒカルは「ああ、毎日ね」と答える。そして御器曽に「アンタはもうずっと碁の勉強なんかしたことねェんだろ」と切って捨てた。その様子をみて、アキラはヒカルが勝ったようだなと少し微笑む。アキラを振り向くことなくヒカルは席を立って部屋をでてゆき、アキラも声をかけずにそれに続いた。「だが ボクも足を止めない 追ってこい進藤 北斗杯の予選なんかでつまづくなよ」


今回は順当な展開。やはりヒカルが格の違いを見せつけて勝ちました。「地」にこだわる御器曽と、「厚み」をきかせるヒカルとの違い。こういう対比は以前の話…10巻58局で越智くんちに指導碁にいったアキラの検討のときのセリフにもあります。あくまでも地を気にする越智くんに「キミは少々地を気にしすぎるんじゃないかな 厚みは攻めに働かせないと…」というアキラ。このあたりの話は「ヒカルの碁勝利学」(石倉昇 集英社インターナショナル)に詳しいので、興味がある方は読んでみてください。
囲碁は自分の石で囲った陣地(地)が多い方が勝ちです。でも「地」を気にしすぎていたらダメで、大局観を持って「地」と「厚み」のバランスをとらなきゃダメだそうです。前述の石倉さんの本では、「地」は「実利=目先の利益」、「厚み」は「将来への投資・夢」と喩えられています。先々を見越した上で(大局観を持つ)、目先のことと将来への投資にかける力をどうバランスとっていくか… 初心者や若い人はどうしても目の前の利益に目を奪われがちですが、本当に強い人はその「大局観」が優れているとか。もちろんその大局観を実現するだけの力が伴っていないとダメなんでしょう。

今回のエピソードの作用は、「悪いヤツ」をヒカルがやっつける、それを以前のアキラのエピソードとの対比でヒカルも確実にアキラの後ろを追いかけているのだとわからせる、そして「秀策の棋譜をヒカルは毎日並べている」というエピソードを出す。現在私が思いつくのはこのあたり。ほったさんのことだから、これ以外にも現在の「地」ではなく将来への「厚み」の一手である可能性もありますが。
御器曽にしても、若い人に踏みつけにされていくことに「慣れ」ちゃダメなんですよね。それで諦めて、向上心まで失ってしまったら。そういう「大人」を断罪した話に。
ヒカルが並べている「秀策の棋譜」は秀策時代のだけじゃなくて、佐為がヒカルにみせた数々の対局も並べなおしているんでしょうね。ヘボだった頃のヒカルにはわからなかったことも、きっと今のヒカルになら石の流れをみることで佐為が何を考えていたかわかるだろうし。そうやって、佐為の思いを吸収して、ヒカルは佐為の夢であった神の一手への道を歩んでいくんでしょう。

今週のアキラをみて、「なんだかんだいってもストーカー気質は抜けてないんだなあ…」と思ったのは私だけですか? 後ろをついていくなら一声かければいいのに… いや、アキラもヒカルの意気込みを知っているからこそあえて声はかけなかったんでしょうが、だったら黙って後ろをついていくというのは… アキラらしいですが。このシーンがふたりの「追いかけっこ」の象徴ということはもちろんわかってるんですけどねぇ。

さてさて、新キャラ登場の予感です!! 北斗杯の舞台が日本であることは決定、そして関西棋院の将来性がある子供。どんな子かなあ。「大阪弁を話す馴れ馴れしいヘラヘラとした少年」というありがちキャラだけはやめてほしいものです。個人的には女の子を希望。華がほしいです。一見おっとりとした少女が石を持つと鬼と化す、そういうのもいいなあ。でも代表枠が3人であることを考えると、これでますます和谷くんの戦いが厳しいものになりましたねぇ。北斗杯がどういうシステムで代表選考になるのかわかりませんが、リーグ戦をやる時間的余裕があるとも思えないし、かといってトーナメントでは一回戦で強い者同士が当ってしまう恐れがありますし。…柔道のような、決勝進出者と対戦したものには「敗者復活戦」としてもう一度チャンスが与えられるというようなシステムは囲碁にはないんでしょうか?
その関西棋院の子は物語上でどういう役割を背負うんでしょうか? ヒカルと早いうちに当ることで「ヒカルが勝てるかどうかハラハラさせる役割」になるのか、それとも和谷くんの夢を阻むのか。
あと、お楽しみは「大会前日のレセプション」。「ボクはお前を倒すためにやってきたんだ」とかヒカルに日本語で話かけてくる秀英とか、楽しみですなー!!

予告によると、次は葉瀬中囲碁部の話。ヒカルと三谷くんの和解に繋がるエピソードかなあと思っています。なんらかのトラブルが囲碁部にあって、その解決にヒカルが手を貸す、と。ヒカルは囲碁部を途中で抜けることで迷惑をかけてしまいました。それはヒカルの夢のためには仕方のないことで、残された囲碁部メンバーでちゃんと囲碁部をたてなおすことはできました。そこにヒカルは関わることができなかったんですが…いや、ヒカルはなんとか囲碁部の力になりたくても「三谷くんの帰ってこれる場所を確保すること」を大切にしたあかりちゃんたちがヒカルの助力を拒んだから仕方ないんですが。でも三谷くんももう心の底ではヒカルのことを許しているだろうし、三谷くんの許しさえでればヒカルもたまに囲碁部に指導碁に来れるだろうし… それがヒカルが弱小囲碁部にできる一番のお返しでしょう。小池くんと矢部くんだけでは色々と大変でしょうから、ヒカルが力になってあげればいいのになあ、と。

オマケ。「ジャンプ」302ページの「第8回ストーリーキング大募集」の記事で、ほったさんのインタビューと2ページ分のネームが載っています。ネームは連載再開第1回である、149局の一コマですね。ほったさんの書く和谷って結構かわいい。細かい注意書きだとか、セリフが変わってるところとか、なかなか興味深いです。次回でもほったさんのネームを徹底解剖するそうで、またそこで見ることもできるんですね。楽しみ。
できることなら「ヒカルの碁」のメイキングとしてほったさんの全ネーム集も出版なり、CD-ROMで販売してくれればいいのになあと思っています。日本棋院作成の棋譜も全部つけて。コミックスの「ネームの日々」からもわかるとおり、「ヒカルの碁」はほったさんと小畑さんのキャッチボールでできあがった作品ですが(佐為の扇子のこととか)、その過程をもっと知りたいなあと。無理かなあ…


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