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【ヒカルの碁 第168局「北斗杯 一か月前」】 02/10/21


今週のダイジェスト。
・対局で水沼に負け、検討中の桑原本因坊。今日の負けは、一か月後の本因坊戦7番勝負に向けて体力をためているのだと桑原は言った。
・塔矢行洋は、韓国で行なわれる国際棋戦・三星火災杯の出場資格を得るために、韓国のアマ棋戦に申しこみしようとしたが、主催者側がそれを聞いて三星火災杯のシード枠を用意した。
・ひとり待っていた桑原の元に、本因坊挑戦権を得た緒方がやってきて戦線布告。
・囲碁サロンで検討中のヒカルとアキラ。ヒカルの口のきき方に腹を立てる北島を広瀬が「ふたりは活発に意見をかわせるいいライバル」なのだとフォローする。ライバルがいるから打ってて楽しいという広瀬に、対等の相手がいない碁の神様は孤独だなというヒカル。広瀬はだからこそ碁の神様は人間に碁を教えて自分の相手ができるほどの棋士を育てているのではないかと。
・自宅で夜中に目覚めたアキラは、父親の部屋から明りが漏れているのに気がついて覗くと、父親は盤面に一手を置いたまま、じっとしていた。まるで誰かを待っているかのように。

一週お休みだったので、本当に待ち遠しかったです。扉絵のアキラとヒカルは穏やかな雰囲気でいい感じですよね。それにしても輪郭を書かない線画だけで光や影まで感じさせるのはさすが小畑さんです。
さて、今回はツナギの話。「対」を意識したエピソードでしょうか。
まずは緒方さんと桑原先生。検討のシーン、あの桑原先生でも口で劣勢になることもあるんですね。なんだかんだいってお年ですから、体力的にもキツイ部分もあるんでしょうね。そこに現れた、緒方先生の顔… こ、怖い。ついに緒方さんにリベンジの機会がやってきましたが、今度は勝てるんでしょうか。この前のアキラとの対局のときの捨てセリフといい、緒方ファンの私ですら、緒方さんに負け犬オーラを感じてしまうので… ジジイの首を取るのは緒方さんであってほしいのですが、その一方で桑原先生にはいつまでも若者を翻弄しつづけてもらいたい気分でもあったりします。

次はヒカルとアキラ。それにしても二人はすっかり仲良しさんですねぇ… それでそれで微笑ましいんですが、なんだか物足りなく感じてしまうのは贅沢なんでしょうか。ヒカルのことでヒートアップするアキラもまた見てみたいなあ。
今回、「碁の神様」の話がでてきましたが、あれは佐為の目指していた「神の一手」についての別の角度からみた象徴的なエピソードではないでしょうか。(「ヒカルの碁」ではこういうエピソードがでてきたからといって、本当に「神様」が現れて対局を挑んできたりはしませんが) ヒカルの口から「碁の神様」という言葉がすぐにでてきたのはやはり佐為の影響なのでしょう。多くの人たちが長い年月をかけて、バトンを受け渡しながら少しずつ「神の一手」に近づく。物語中では同じことが少しずつ角度を変えて、何度も語られてきています。それが物語世界に広がりを与えていますが、最後はどうなるのかなあ。ヒカルも誰かにバトンを渡して、それで終わるのでしょうか。

最後は塔矢名人(今は元名人ですが)。彼がひとり、じっと待っている相手はやはりsaiなのでしょうか。「対」となる相手を待ち続ける名人がなんだか寂しそうで… それにしても名人はあのあとヒカルに会ってないんでしょうか。碁会所でアキラと一緒にいるヒカルを見たりはしてるだろうけども、名人はアキラの目の前でsaiの話を持ち出すほど無粋ではないでしょうし。saiと関わりのある人といえば他には緒方さんがいますが、緒方さんもヒカルとそのことで話たりはしてないのかなあ… そのあたりのエピソードが出てくることは期待しているんですが。
それにしてもアキラの寝姿、かわいいです… パジャマをきちんと着ていることといい、「お水」といい、アキラは育ちがいいんだなあとしみじみ。
今回の名人はさすがにアキラと血が繋がっているというか、碁のことになると天然で回りに迷惑(?)をかけているんでしょうね。国際棋戦の参加資格を得るために、韓国のアマの大会に日本の頂点を極めた人間が出場するというのは… 中学校の囲碁部の大会にアキラが出場するようなものですもんね。親子だ。
で、この話にでてくる「三星火災杯」は実在の棋戦で、韓国で行なわれる国際棋戦です。大きな大会に優勝したトップアマと、プロであればどこの国の人でも参加することができます。ただし予選では対局料や交通費などがでない、自前参加になるようですが。コミックス17巻の「ネームの日々」にほったさんが韓国に取材にいったときに三星火災杯の担当者に取材した話がでていることからしても、この大会がストーリー上の舞台になるのは間違いないでしょうね。ちなみに物語上では、第150局にて倉田さんがこの大会で韓国の安太善に負けたというエピソードがでています。…これで名人の大会出場が決まりましたが、この大会にはヒカルたちにも参加資格はありますから、ヒカルたちが北斗杯のリベンジ(まだ始まってないけど)のためにこの大会に参加するという話の展開になるかも。
「国」というしがらみから自由になった名人は、世界の囲碁界に大きな影響を与え続ける存在になるんでしょうね。本人は意識してないでしょうが。

話が少し変わりますが、「エースをねらえ!」(山本鈴美子)のコミック文庫版が最近刊行されていまして、10月の発売分の10巻で完結しました。この往年の名作少女マンガは、一部ファンの間では「ガラスの仮面」(美内すずえ)と並んで「『ヒカルの碁』に影響を与えた作品ではないか?」といわれていたりします。私は「エースをねらえ!」は昔にアニメでみたことしかなくて、今回初めて原作版を読んだのですが、アニメ版で受けた印象とかなり違いまして、思った以上に求道的でストイックな作品でした。
さて「エースをねらえ!」の「彼」は舞台から退場しても物語上に君臨し、登場人物たちのほとんどから賞賛を受け続けていましたが、「ヒカルの碁」の場合、佐為はあくまでもヒカルの心の中だけの存在なんですよね… 二部に入ってから佐為の名前どころかsaiの名前すら一度もでてきていません。そのくせ佐為を彷彿させるエピソードは、ヒカルの扇子、神の一手発言、秀策の棋譜並べ、「ううん」「オレもそう思う」、じいちゃんちの蔵の碁盤…と数多くでてきているわけで。そして今回の来ない対局相手を待つ名人のエピソードのように、かつてなんらかの形で佐為と関わった人たちとのエピソードも描かれています。一部は佐為の存在がヒカルを通じて色々な人々の運命を狂わせていったことが物語の主軸の一つでありましたが、二部は佐為によって蒔かれた種のその後の話が、裏の主軸なのかもしれないなあ、とふと思いました。

ヒカルの服が一瞬半そでになっていたのは、コミックスで修正されるのかな?


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