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【ヒカルの碁 読みきり番外編】 03/07/14

美しいなあ… 久しぶりにみた小畑さんの絵はとても美しくて、つい見とれてしまって、最初のページで手が止まって、なかなか次のページを繰ることができませんでした。

読みきり、個人的にはとても満足でした。話としては番外編というよりは第5.5局と第191局(脳内第190局はヒカルと秀英の碁会所対局なので)という感じでした。
特に第二話目、なんてことはない話だけれども、「ヒカルの碁」の世界では第189局以降もずっと日常が続いていて、ヒカルとアキラは切磋琢磨して神の一手への長い長い道のりを歩み続けている。彼らの歩みは上の人たちや仲間たちだけじゃなくて、次に続くものたちにも影響を与えている。そうやって道は続いている… それが分かったから、十分です。
ただ、本当はもっと全開のヒカルの笑顔をみたかったけれども。でも、ヒカルの目の光の強さから、大丈夫だというのはわかりましたし。

正直、まだこれから先の彼らの歩みを見たかったなあという気持ちは残っています。でも、ほったさんがここで語り終えることを選んだ以上、その後の部分は自分の妄想で補完するしかないのでしょう。
「ヒカルの碁」という作品に初めて触れたのは、コミックス1巻が発売された99年4月末、思いっきりハマって毎週の感想を書き出したのが2000年1月から。それから3年半、憂鬱だった週始めの月曜日が待ち遠しくなり、毎週の展開に一喜一憂して楽しんできました。私にとってこれからは月曜日がただの月曜日になってしまうのは寂しいけれども、長いこと楽しませてくれたほったさん・小畑さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

番外編(1)藤原佐為VS塔矢アキラ
・第5局から第6局の部分を佐為視点から描きなおした話。「今から打とう!」⇒「ありません」まで。
・電車で碁会所まで移動しながら、佐為は蘇ったのになかなか打てないことを嘆きつつ、これから碁を打てる喜びにはしゃいでいた。
・対局が始まった。佐為は格下のアキラ相手に対局を本気でするつもりはなかったが、アキラの気迫にワクワクしながら遊びの手をあれこれ打っていた。
・しかし、佐為は予想以上のアキラの力に次第に本気になった。息の根を止めなければこちらが潰される…そう感じた佐為はアキラを一刀両断した。
・中押し負けを告げ、肩を落とすアキラを見ながら佐為は、この子は自分を追ってくるのだろうか、どこまで成長してゆくのだろうか…と考えていた。
・時間が飛んで、北斗杯から一週間後、アキラが初めて碁会所に顔を出した日、市河に北斗杯二勝のお祝いを言われた。ヒカルが北斗杯後の秀英との対局で勝ったこと、北斗杯で二敗してもヒカルの評価は高いことをアキラは市河に話した。
・もうすぐ若獅子戦、アキラの三連覇がかかっているが、アキラは「進藤には負けません」と宣言。そこにちょうどヒカルがやってきて、アキラに打とうと言った。

佐為が、佐為だなあ、と。
ワガママだけど、はしゃぎ方がかわいい。獲物を弄ぶ猫のような残酷さ、本気になったときの苛烈さ。その、佐為の百面相、すべての表情がそれぞれニュアンスの違うけれども、どれも美しくて。
本当に美しい人だったなあ、と思います。私は佐為が好きだから、佐為の万華鏡のような様々な表情をもう一度見ることができて嬉しかったです。
久しぶりにみる、まだ幼いヒカルがかわいいし、アキラもかわいいけれども凛々しいし。大きくなってカッコよくなった二人もいいけれども、小さい頃も捨てがたい。
今回、小畑さんうまいなあと思ったのは、ヒカルの表情。盛り上がってる佐為とアキラを尻目に、ヒカルはつまんなそうな顔をしています。何もわかってないきょとんとした顔をしてるヒカルをみてると、なんだかとても切なくなりました。この頃のヒカルは、まだ何も知らなかったんですよね…
あのあと3人それぞれが辿る道を思い出しながら読んで、感慨深かったです。
アキラと佐為の二度目の対局、なぜ中押し勝ちをしたかについての佐為の説明は本編ではモノローグで語られていましたが、「一刀両断するしかなかった」というのがもうひとつしっくりこなかったんですよ。それが今回の話で納得。佐為は格下のアキラ相手に、最初は色々な遊びの手を試そうとしてたけれども、予想以上のアキラの力に、慌てて本気の力を出してしまった、と。
このあたり、連載当時もそのあたりをもうちょっと描写したかったのにやむをえなくカットしたのかもしれません。
たとえば、連載が始まったばかりの頃は読者にとってわからない囲碁描写は押さえ気味にして、ガンガン話を進める必要があったから「くるがよい!!」⇒「ありません」が一瞬になったとか。
佐為は「最強」の存在として登場したのに、真価を発揮しないままあれだけ焦った顔を描写してしまえば「大したことないじゃん」と読者に思われてしまう危険性があったからとか。
ヒカルの主観から、二度目の対局の「あっけなさ」を効果的に出すためにカットしたとか。
この一話目は蛇足といえば蛇足な話でしたが、私としては佐為の百面相や小さい頃のヒカルやアキラを見れたので満足でした。

番外編(2)「庄司君っ!岡君っ!」
・5月、院生研修日、足立や小宮ら院生たちが北斗杯の棋譜を並べて検討しているところに奈瀬がやってきた。
・小学五年生の庄司は目を輝かせながら、塔矢アキラはすごいと呟く。そこに同じく五年生の岡がやってきて、進藤ヒカルの方がカッコいいと言い出した。岡はヒカルと永夏の一局にしびれたらしい。
・アキラとヒカルのどちらがすごいかを言い争う岡と庄司に呆れ顔の奈瀬。庄司は院生16位、岡は14位、院生になって一年、同期で同じくらいの力の二人は互いに競争心を持っていた。
・マジメな岡とさぼり屋の庄司、ケンカになるのは岡がムキになるだと小宮はいう。庄司は岡に、自分はいままでいい加減な気持でやってたけれどもこれからマジメになって北斗杯に出たいと言い出した。岡は無理だと言い返す。
・そこに院生師範の篠田がやってきて、二人をしかりつけ、そして来週にある若獅子戦の対戦表を配りだした。自分の対戦相手をみて、目を丸くする二人。互いの憧れの存在の逆が対戦相手なのだ。
・第11回若獅子戦。古瀬村は事実上の決勝戦、アキラとヒカルの対局が二回戦にあるために「つまらない組み合わせになった」とグチっていた。篠田は伊角のように、若獅子戦に出てない子にも強い子はいると話した。
・ヒカルがやってきた。自分の一回戦の対戦相手の姿をみて、緊張する岡。小宮はヒカルに対戦相手の岡、隣にいた庄司のことを教える。ヒカルは相手が何位でもみくびらない、自分も16位ぎりぎりで若獅子戦にでて、その年にプロになったんだから、という。
・そしてアキラもやってきた。自分の戦う相手を目の前にして庄司は焦った。ヒカルがアキラにお前の対戦相手は…と説明するときにちらりと見られるだけでビクビクする庄司。アキラ自身はそんなことまるっきり気にせずに、ヒカルも共に芹沢先生の勉強会に誘われたことを話し、ヒカルも行くと返事していた。
・若獅子戦一回戦が始まった。岡と庄司は圧倒的な力の差の前にあっさりと負けてしまう。塔矢アキラと進藤ヒカル、どちらがすごいではなくて、どちらもすごい。二人の強さを目の当たりにした二人は、改めてプロになって北斗杯に出たいと誓った。
・そこにやってきた古瀬村は、北斗杯はプロだけでなく院生の子にも刺激を与えているのだなあと言った。二回戦のアキラとヒカルの対局の予想を二人に聞くと、自分の対戦した相手の方が勝つ!!と、当初の意見から逆になってしまって言い争う二人。
・二回戦、ヒカルとアキラの対局。二人の周りには大勢の観戦者が集まっていたが、岡と庄司はかきわけて一番前で二人の対局を見る。
・ヒカルが石を持ち、一手を置いた。

最初にも書きましたが、この二つ目の話、何気ない話なんですが「物語はずっと続いているんだなあ」とじんわりと感じることができて、満足でした。
先週、ジャンプで予告をみたときには、未来の話ということで、どれ位先になるんだろう?と不安になりました。数年のうちならいいけれども、すっかりオジさんになって、結婚して子供もいて…そういうアキラやヒカルは正直みたくなかったんです。未来が決まってしまうと、あれこれこの先を想像する余地が減っちゃうから。
その一方で、ヒカルがアキラに佐為のことを話す、物語の終着点を見たいなあという気持ちもあって。でもそういう「いかにも」なラストにしなかったのは、ほったさんはその部分を読者の想像にゆだねてくれたのかもしれません。
でも、あまり先の未来の話はみたくないなあ…と思っていたにしても、まさか北斗杯からたった2週間後なんて。…若獅子戦は5月の第三土曜日から始まるので、「ヒカルの碁」の作中時間では2002年5月18日が最後の日付となります。

今回の新キャラ、負けん気の強い岡くんと庄司くんのやりとりはほほえましかったですが、この話では会話の中から伺える既存のキャラたちそれぞれの事情の方が私にとっては楽しかったです。
ただ、若獅子戦なんだから、伊角さんや和谷くんもちゃんと登場してほしかったのに、出番がなくてそれが残念でした。
以下、そのあたりを箇条書き。
・奈瀬ちゃん、1年前の弱音からどうしているかなあと心配でしたが、院生を続けてたんですね。もう18歳だからこの年が院生でいられる最後ですか。最年長だけあって、雰囲気が「お姉さん」って感じ。今年こそはプロ合格してほしいなあ。
・この時点での院生一位は足立くん。
・小宮くんがカッコよくなってました。
・フクはでてこなかったけれども、辞めちゃったのかなあ…
・若獅子戦、奈瀬の一回戦の対戦相手は本田くん。はっきりとは出てこないけれども、おそらくそのセリフを言っているのが和谷くんじゃないかと思います。
・真柴くんがやっと二段に。
・アキラの白の上下というスタイルは永夏の影響なのか、緒方さんの影響なのか。
・アキラがやって来た時に、それまでヒカルと話していた小宮くんも本田くんもさっと離れていますが、やはり彼らにとってはアキラはとっつきにくい相手なんだろうなあ。
・アキラはあいかわらずヒカル以外はアウトオブ眼中という感じで。
・芹沢さんは本因坊リーグでアキラと最終戦を戦った、サイボーグみたいな顔をした人。今後の活躍をみたいキャラの一人だったので、アキラとヒカルとの接点が強くなって、今後の脳内妄想で楽しみがひとつ増えました。
・関係ないけれども、現名人なのに出番がなかった畑中さん。一度は喋るところをみたかったなあ。

今、日付確認のためにコミックス6,7巻あたりを読み返してたんですが、この頃の出来事って、作中時間でたった2年前なんですよね。あれからヒカルとアキラが辿った道を思うと、その時間の濃さを改めて感じました。2年前のヒカルは、岡くんや庄司くんのような、怖いもの知らずで礼儀知らずだけども元気にあふれたお子様だったんですよね。

「ヒカルの碁」の世界では、日本はアキラやヒカルの「次」の層が薄いので、どうなるのかなあと思っていたけども、庄司くんや岡くんにも頑張ってもらって、次へ、そしてその次へ、バトンをつなげていってもらいたいものです。


◆ジャンプ巻末のコメントはほったさんと小畑さんと両方載っています。9/4発売のコミックス23巻にはほったさんの書き下ろしがあり、表紙は今までありそうでなかった組み合わせだとか。予想では、ヒカルとアキラか、ヒカルと佐為とアキラかのどちらかでは? 今まで扉絵やジャンプの表紙ではこの組み合わせが何度も描かれていましたが、コミックス表紙ではなかったんですよね。

◆既報ですが、キャラソン第二弾のお知らせがジャンプにも載っていました。あとはTCGの全国大会の案内も。

◆「ストーリーキング大賞」の案内ページに、ほったさんの「ネームの日々番外編」が1ページ。ほったさんが投稿したときのネームでは絵は大雑把だったという話でした。個人的にはほったさんがネームキング大賞に投稿したときのネームをぜひ読んでみたいんですが、そういうのが出版されることはないんでしょうねぇ…

◆8/8 アニメ「ヒカルの碁」ビデオ第二期飛翔篇Vol.9レンタル開始

◆雑誌「囲碁未来」8月号にほったさんの手塚賞受賞関係のコメントが載っています。「囲碁未来」編集部の方に問いかけに、ほったさんは「『ヒカルの碁』はすべて書き上げてしまいました。」と答えて、続編は否定されたとのこと。残念ですが、そのかわり(遠い未来に制約を付けず)物語を丸ごと残してくれたことで、読者はその後を自由に想像できるのですから、ヒカルやアキラのその後の歩みをあれこれ想像して楽しむことにします。

◆次の更新は、7月末にジャンプ原画展(大阪)の感想の予定です。

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