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【アニメ ヒカルの碁 第28局「若獅子戦」】 02/04/21

5月になり、待望の若獅子戦が棋院で始まった。これは院生一組16位までと低段位の若手棋士たち16名で行なわれるトーナメント対局だ。ヒカルは遅刻気味ではあったが、意気込んでやっていた。院生たちが固まっているところに、去年のプロ試験で院生組から唯一合格した真柴が挨拶にやってくる。この日の真柴の対局相手は旧知の伊角、真柴は伊角にプロ風を吹かせてイヤミを言って去った。森下門下生の冴木もやってきて、和谷とヒカルに声をかけてきた。そして塔矢アキラはヒカルには一瞥もくれずにヒカルの横を通り過ぎ、プロたちに挨拶をしていた。この若獅子戦一番の注目株は塔矢アキラで、プロたちも全員アキラを注視していた。
そして対局が始まった。伊角と真柴の対局には(今回参加できなかった)院生たちがギャラリーとして取り囲んでいた。対局が始まった頃、日本棋院に赤いスポーツカーが止まり、そこからでてきた緒方は若獅子戦の会場に足を運んだ。そして対局中のヒカルと村上二段の側にやってきて、盤面を覗きこんだ。週刊碁の記者の天野は若手強豪の緒方がわざわざ若獅子戦に足を運んだことをいぶかしんでいたが、アキラを見にきたわけではないのに首をひねる。そして緒方が対局をみている院生であるヒカルが、塔矢アキラの新初段戦を見に来ていた子だと気がついた。
ヒカルも村上二段も対局に集中していたため、やってきた緒方に気がついたのは佐為だけだった。佐為は相手に聞こえないのをわかっていて緒方に一方的に話続ける。緒方がヒカルに興味を持つきっかけになった「子供囲碁大会での死活」も、塔矢名人相手に数手打ったのも「どっちも私」。今はヒカルと打つだけ、碁打ちである緒方とも打ってみたいが… 隣の対局が終了して盤面があいた。佐為は緒方に一局打とうと持ちかけた。しかし、それはもちろん緒方には聞こえていない。「この身がないのがつらい いやヒカルにめぐり会えただけでも神に感謝しなくては これ以上のわがままは望むまい」 そして佐為は緒方に問い掛ける、「ヒカルはどう?」と。いずれヒカルは緒方へのライバルにもなるのかもしれないのだから、と。
そのヒカルだが、佐為のみたところ院生とたいしたレベル差がない村上二段との対局を互角に進めていた。佐為はヒカルの打った一手に「それは悪手〜」と焦る。緒方相手にヒカルの弁護をする佐為だったが、驚く緒方をみて盤面に目を戻した。さきほどの「悪手」でうまく相手を誘うことで「悪手」を「好手」に化けさせた。ヒカルを見なおす佐為。緒方も顔色を変える。村上二段も上着を脱いで、気合を入れた。
フクは田島相手に負けてしまった。そのあとフクは伊角の対局を見に行く。そしてすぐ奈瀬も伊角の対局を見にやってきた。
和谷は中山相手に中押し負け。和谷は勝てなかったものの、自分なりに手応えを感じ、プロへの道は遠くないと感じていた。そして和谷は伊角戦を見に行くが、対局は伊角が有利で進んでいた。一方、本田と対局をしていたアキラの周りにもプロが集まっていた。本田は勝ち目がないと判断して、中押し負けを宣言した。ギャラリーは院生がふがいないから、アキラの本当の力がみれなかったと不満そうだった。
伊角と真柴の対局は、真柴が中押し負けを宣言した。喜ぶ観戦していた院生たち。そのうちのひとりの、これではどちらがプロだかわからないという言葉を聞いて、真柴は毒を吐いた。こんなところで勝ってもプロにならなければ意味がない。院生で2年連続一位で、去年のプロ試験で自分との対局に勝ったのに肝心なところで負けたらプロになれない…と。 和谷は真柴の言葉に怒り、突き倒した。会場は和谷と真柴の取っ組み合いで大騒ぎとなった。
対局終了後、ギャラリーたちも和谷と真柴の騒ぎを見に立ち去り、アキラはひとりになった。ずっと気になっていた後ろの対局、ヒカルと村上二段の対局をアキラはみた。しかし佐為はアキラが見るのはタイミングが遅かったと思っていた。緒方は悪手を好手に変えたヒカルの輝きを感じさせる打ちまわしをみていたが、アキラは見なれぬ石並びの盤面をみてそのヒカルの才能を読み取ることができるのだろうか?と。


さて、いよいよ若獅子戦。話はテンポもよくておもしろかったです。ただ絵が… まあ来週に期待しましょう。来週は緒方ファンには待ちに待ったエピソードが続出な回ですし。

今回は原作の1.9話くらいの分量です。ほぼ原作に忠実でしたが、一部違った部分を。
(1)若獅子戦組合せ表
若獅子戦出場が決まったヒカルが、ネットカフェから去っていったときのアキラの姿を思い出して「自分が」戦うぞと決意しているシーンの直後にあったエピソードがカットされました。
アキラは中学校帰りに制服のままいつもの碁会所に寄ってゆきます。片隅で棋譜並べをしていたら目の前に緒方さんが座ります。緒方さんはアキラがsaiとのネット対局の一局を並べているのをみて、saiは魅力的な打ち手だったがそのあとネットにでてきてないし表にでてこないものに興味はない、ということを緒方さんは言います。そのあとアキラを挑発するように、若獅子戦でのヒカルを見に行くつもりだと告げます。アキラはヒカルの評価を取り下げたかもしれないけれども、自分は難しい局面を即答したヒカルに感じるものがある、とのこと。緒方さんが去っていった後に、アキラは対戦表をポケットから取り出して眺めます。アキラはヒカルと2回戦で当るのですが、

   ┏━本田敏則
  ┏┫
  ┃┗━塔矢アキラ 初段
 ━┫
  ┃┏━進藤ヒカル
  ┗┫
   ┗━村上信一 二段
を縦書きしたような感じになってまして、それをじっと眺めながら「名前が並んでいるだけで まさか対等になったと思っているんじゃないだろうな 進藤」とアキラが心の中で呟きます。…アキラのヒカルへの複雑な感情や、思い込みの激しいところ、それでいてヒカルを意識しまくりなところがでてるおもしろいシーンだと思うんですが、これがカットされたのが残念でした。
(2)真柴さんのイヤミ
原作よりも真柴さんのイヤミは具体的というか、ターゲット伊角さんが明確になってましたね。これ関係では、始まる前の真柴さんのイヤミに怒った奈瀬ちゃんが伊角さんに「勝ってよね 伊角くん」というと、伊角さんが気弱そうに「…全力を尽くします」というところ。伊角さんのヘタレぽさがいい味だしてるシーンなんですが。
あと対局後の真柴さんのイヤミは原作では「プロ試験に受かんなきゃしょーがねーんだよ」だけ。アニメでは2年連続院生一位なのに落ちちゃったとか、プロ試験で自分との対局には勝ったのにここ一番がダメだから落ちただとか、具体的な話がきます。これは今後の展開を考えると、アニメみてる人に伊角さんの事情をうまく印象づけることが目的だったのかなあ、と。
(3)週刊碁の記者
天野さんが不意にやってきた緒方さんをみて「塔矢一門の〜」と思ったところはアニメで付け加えた説明部分です。あとヒカルをみて、アキラの新初段のときにいた子だと思い出してましたが、原作では「伊角くんたちが"塔矢アキラのライバル"と言ってた子!!」でして。このあたりのやりとりはアニメではカットされたので、今回のアニメではああいう説明になったと思うんですが。
ただ、天野さんにとってはアキラは特別の「次世代の希望の星」でありますから、単にアキラの対局を熱心にみてた子(アニメ)とあのアキラの認めたライバル?(原作)ではインパクトが違うような… ただこのあたりは些細なことですけどね。

佐為の悲しい一人芝居。佐為だってわかってはいるんですよ、自分はヒカルに宿らせてもらっているんだから、「自分が」打ちたいというのは「ワガママ」だと。それでも「あれね、私」と呟いたり、佐為の碁打ちとしての自負と強い相手との対局を望む気持ちが伝わってきます。
「ヒカルの碁」の設定のおもしろさは「佐為という幽霊はヒカルにしかみえない」ということではないかと思います。アキラが誤解でヒカルを追いかけ、そして失望し、そのアキラの力がヒカルを動かしたという初期設定から引き出される展開がこれまたうまいんですが。佐為はヒカルを通してでしか他者と関わりを持つことができません。そんな佐為だからこそ、彼自身が「sai」として、アイデンティティを確立することができたネット碁の話はおもしろかったのです。
今は、佐為はヒカルの「師」として前を向いて走るヒカルの背中を押す手伝いをしていますが、それと相容れない碁打ちとしての自負がどんどん大きくなると、ふたりの間は…

今回の話が原作で連載されていた頃、緒方ファンとしては「車がっ!! 私服がっ!!」と嬉しいやらなんやら。アマ碁世界大会での「神か? 化物か?」で緒方さんに惚れたものの、「どうせ活躍のない脇キャラだよ…」と思ってたらそのあと出番が増えて… この前後は第1次緒方祭りでしたね。次回の緒方さんにはこれまたすごいシーンがあるので、今から楽しみで仕方ないですっ。

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