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【アニメ ヒカルの碁 第64局「慶長の花器」】 03/01/13

今週のダイジェスト。
・ヒカルが中1だった頃、囲碁部の大会が終わって夏休み前、ヒカルは三谷に連敗して悔しいので囲碁部をさぼって帰ろうとしていた。
・野球のボールがヒカルに当り、口論の末バッターボックスに立つヒカル。ヒカルの打った球は、将棋部の部室に。加賀愛用の湯呑を割ってしまい、怒った加賀は弁償しろという。
・ヒカルは湯呑を買いに町に出かけた。ふと入った古美術商の店で「慶長の花器」を店主が男性に150万円で売ろうとしていたが、慶長の花器に詳しい佐為はそれがニセモノであることを一目で見ぬいた。
・その花器を強引にみようとしたヒカルは手を滑らせて割ってしまうが、ニセモノだと見ぬいたヒカルの目利きに免じて店主は許した。その店主の言葉を聞いて客はニセモノだったと声を荒げる。店主は客をカモ呼ばわりし、この世には「目の利く奴」と「目の利かないマヌケ」の2種類しかいないといった。
・少女がひとり店に入り、飾ってあった花器は半年前に盗まれた自分の祖父のものだから返してほしいと言い張った。店主は安物の花器でも自分のものだから返さないと主張する。
・佐為はその花器が本物の慶長の花器だと気がついて驚いた。昔、宮中に虎次郎と共に一度だけ囲碁指南に赴いたときに見かけたものと同じだったのだ。
・店主と言い争って突き飛ばされ、少女は茶碗を割ってしまう。少女に弁償を迫る店主に佐為の怒りが爆発。奥の部屋に碁盤をみつけた佐為は、ヒカルに店主に囲碁勝負を持ちかけて5万をチャラにしようと言い出した。
・アマ五段の店主はその勝負を引き受けた。対局は店主が黒を持って始まった。佐為と店主の力の差はあまりにも圧倒的で、中盤で大差となり店主は投了。さらに佐為は勝負を言い出す。その大差の状態から、石もアゲハマも交換してヒカルが勝ったら、少女に花器を返してほしい、と。
・店主はそんなことできるわけないと勝負を引きうけた。そして見事に佐為は逆転勝ちをおさめた。
・「あんな花器返してやる」と捨てセリフを吐く店主に、ヒカルは花器の種明かしをする。花器に水を注ぐと、花の模様が浮かび上がるのだ。花器は花を生けてこその花器、これは弥衛門最後の傑作だという。貴重な品だと知った店主はそれは自分の物だといい張ろうとするが、ヒカルは店主のさきほどの言葉を反撃。この世には目利きと目の利かないマヌケがいる。店主はそのマヌケの方だったのだ、と。
・帰宅したあと、湯呑のことを思い出して慌てるヒカル。ヒカルが加賀に渡した湯のみは寿司屋のもので、それがバレてヒカルは加賀に怒鳴られた。

今回の話は、予告をみたときには2001年ジャンプフェスタで上映され、その後ジャンプで全員プレゼントとしてビデオが販売されたアニメ「ヒカルの碁特別編 裁きの一局! いにしえの華よ咲け!!」の話をやるのかと思っていました。ところが実際は、その話を元に作られた番外編「藤原佐為編」(コミックス19巻収録)を改めてアニメ化したものが放映されました。なんでそんな手間をわざわざかけるのかなあと思いましたが、前者のアニメは「ジャンプフェスタでしかみれない」ことをウリにしていたから契約上の問題なのではないでしょうか。

そのジャンプフェスタのときも製作時間の問題なのか作画がもうひとつでしたが、今回の番外編のアニメも作画が… うーん、アップもシーンによっては結構きれいだったりしますが、崩れすぎて気になる部分もありますし。
内容自体は、ほぼ原作のエピソードそのままでした。この話がジャンプに掲載されたのは、第一部が終わった後のキャラごとの番外編が掲載されいた時で、その番外編シリーズの最後を飾る藤原佐為編に大きな期待をしていただけにジャンプで読んだ時には「既に知っている話の焼きなおし」ということでがっかりしたものでした。個人的には、できることなら佐為と虎次郎の話が読みたかったので。エピソード自体は、「悪いヤツを碁で佐為が懲らしめる」というダケさん・御器曽プロとすでに本編で二回描かれたのと同じパターンのエピソードでありますが、佐為とヒカルのなにげないやりとりや、碁を打つときの容赦ない佐為の美しさなど、もう見れなかったはずのものが見れただけでもよかったかもしれません。
今回のオジさん、悪徳古美術商ではありますが、「騙される方も悪い」というのは一面の真実でもあります。骨董品や美術品は素人が投資(というより投機)のためや虚栄心を満たすために買おうとしてもロクなことはないんですよ。それよりも自分が気に入ったものを「この値段ならいいや」と思える無理のない範囲で購入して、しまいこむのではなく愛用して楽しんだ方がいいのではないでしょうか。花器は花を生けてこそ、花器なわけで。

で、今回は元のジャンプフェスタでのアニメと原作(ほぼ今回のアニメと同じ)の違いについてを。ジャンプフェエスタでのアニメの原案は原作のほったゆみさんだったそうですが、もともとどの程度細かい部分までほったさんの出されたアイデアなのかはよくわかっていません。
でもジャンプフェスタでの話とマンガ版ではストーリーはほぼ同でも、マンガの方がちょっとしたエピソードの付け加えによって物語に深みを感じられるようになっていました。
(1)囲碁部での話
ジャンプフェスタのアニメでは珍しく筒井さん、あかりちゃん、三谷くんとヒカルでトランプ(ババ抜き)をやっていて、最後の勝負でヒカルが三谷くんに負けてしまい、「それなら囲碁で勝負だ」と三谷くんと対局しているときに野球部のボールが囲碁部に飛び込んできて…という展開でした。
(2)将棋部と加賀くん
ジャンプフェスタのアニメではヒカルが将棋部に打ちこんでしまったボールを追いかけていったところ、そこには人はいなくて、たくさんあるトロフィーに書かれた名前が加賀くんのものばかりであることをヒカルが見つけます。そのときに加賀が入ってきてヒカルに声をかけて…という感じでした。
加賀くんの怖さは、マンガでの表現の方が「静かな怒り」という感じでいいかも。
(3)悪徳古美術店の店主
元のジャンプフェスタでは、ハデなシャツを着て金のネックレスをしていましたが、マンガの方では和装になって顔のデザインもかわっています。
(4)「ガマカエル」
佐為がガマカエルを彷彿とさせる店主の笑顔に怯える描写はマンガだけです。
店主の笑顔に怯える佐為と、「ニヤリともさせませんから」と冷たく冴え渡る表情をみせる佐為のギャップがいいですねぇ。
(5)「ちさと」と「葵の君」
今回のゲストキャラの少女はジャンプフェスタのアニメでは「ちさと」という名前がちゃんと与えられています。また佐為は少女に平安の時代に自分に懐いてくれた「葵の君」を思い出す…というエピソードがジャンプフェスタのアニメではありました。
(6)「佐為が打ちたいだけ」
囲碁での勝負を佐為が持ちかけたのは、もちろん義憤にかられた部分もあるでしょうが、佐為としてはとにかく碁が打ちたい…というのも本心なんでしょう。マンガでのヒカルはそのあたりちゃんとわかってるわけで。
(7)佐為が花器を店主から取り上げようとした理由。
ジャンプフェスタのアニメではどちらかというと、「佐為にとっての懐かしい人の面影を宿す少女を助けてあげるため」だったんですが、マンガでは時や運命を超えて再会した、美しくも儚い花器に「虎次郎との思い出」も重ね合わせて、不愉快な人物の手元から救い出してあげたいという気持ちからではないかと思います。
(8)流転する運命
ジャンプフェスタのアニメにはなく、マンガで付け足されたエピソードです。御所にあったはずの花器が町の古美術商の店に並んでいること… 本因坊秀策…虎次郎が生きていた時代というのは、ちょうどペリーが黒船に乗ってやってきてそりゃもう日本中大変でしたから。そんな花器の運命に、佐為が魂となって生き長らえる自分を重ね合わせることで深みを感じさせてくれる表現だったと思います。
(9)対局の描かれ方。
ジャンプフェスタのアニメでは碁石の交換ではなく、場所を入れ替わっていました。
(10)架空
ジャンプフェスタのアニメでは本編のあとに今回でてきた焼き物は架空です、という注意書きがありましたが、マンガの方にはそれはありません。今回のアニメでもそうですが、本気にする人もいるかなあ?

今回よりエンディングが新しいものに変わっています。前回のが喪失の悲しみだとすれば、今回はヒカルの悲しみから覚醒に至る道のりを表現しているのかもしれません。曲も画面も、力強くも切ない感じに仕上がっています。



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