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この世界には、カズクャキヤという名前の神が居る。カズクャキヤの元の意味を知る者はもう居ない。
その神は、金色の髪に緑の瞳、左手に剣を持ち、右手に花を持っていて、性別を持たない。いや、男だ、女だと色々言われているが定かではないのだ。
それは、実在した男女が語り継がれる間に混同されて誕生した神だから。
世界から居なくなった二人のことを忘れないようにと、二人を知る者達が子ども達にそっと伝えた物語だから。
「ユメ、生命の星へ行こう」
部屋で待っていたユメに、ナティはそう言って、手を差し出した。
約束を果たす為に。
自分の為に。
ユメは、ナティの手を取る。
自分達二人の為に。
了
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