私などは、ザッパの音楽に対しては、「過激な音」という固定観念が少なからずある。かといって、別にパンク(ザッパは、パンクロッカー達をバカにしきっていたフシがある)やスラッシュメタルのような過激さを求めるわけではない。純粋に音としての過激さがザッパの音楽にはある。そういった音は、魅力的な変拍子とか、ザッパのジャグジャグしたギターの音とか、叫び声とか、延々と続くユニゾンとか、はたまたノイズの嵐などによって構成される。また、特にライブにおいて、単調なリフレインを言葉によって引き裂く、といったような手法も用いていた。こういった音は、上記のパンクやスラッシュメタルなど(余談ながら、私はこれらの音楽も良く聴きます)の、肉体的な過激さとは異なり(全てがそうだとは言わないが)、脳細胞に直撃するのである。そう、「脳味噌が捻れる」のだ。(何が「そう」なのかはよく分からないが…)
何となく毎日が物足りなく、常に刺激を求めて彷徨っている人は、世の中に多いのではなかろうか。そういった人達には、アブない道へ走る前に、次の3作品をお勧めする。
この3作品に関しては、もう、何も言うことがない。オーケストラのメンバーが目に涙を浮かべながら演奏したという"Lumpy Gravy"、Roy Estradaの笑い声が狂気過ぎて放送禁止になった国まであるという"Weasels Ripped My Fresh"、それに、シンクラヴィアを使って作られた、ほぼ演奏不可能であると思われる曲(後に、一部の曲について、演奏が可能であることが示された)ばかり収録されている"Jazz From Hell"。
- Lumpy Gravy (1968)
- Weasels Ripped My Fresh (1970)
- Jazz From Hell (1986)
これらのどれをとっても、いわゆるノイズミュージックなどとはひと味もふた味も違った刺激を楽しむことができる。これらの作品の場合、きちんとした音の配列として音楽が構成されていて、それにより刺激が創り出されている。案外、ザッパの頭の中にはいつもこうした刺激が詰まっているのかも知れない。
上記の3作品の他にも、"Uncle Meat"などで刺激的な音楽を楽しむことができる。こういった傾向の作品は、わりと初期の頃に多かったのであろうか。