05年02月に読んだ本。   ←05年01月分へ 05年03月分へ→ ↑Indexへ ↓高永麻弥へのメール
●「ひかりのまち」長谷川昌史[電撃文庫]550円(05/02/28) →【Amazon】

第11回電撃小説大賞《金賞》受賞作。
百年に一度の日黒期のため、昼夜関係なく闇に町が覆われて1か月。町の有力者の息子のネリムは、6年前に兄が失踪した「森の神隠し事件」に対する父の態度への不信感から、父親の元を離れて暮らしていた。ネリムが通う高等部に新しくやってきた保険医のディネは、ネリムに「『本当のこと』知りたい?」と思わせぶりに話した…
どうもこの作品は、私のツボからはかなり外れているようで。特に後半の展開は、前半のネタフリから期待した部分とはかなりズレていたのが残念でした。
微妙にネタバレ→思わせぶりにでてきた、天動説が教えられてきて、地動説の本が禁書となっているとか、そのあたりがあまりつながっていないというか。
科学←(1)→疑似科学←(2)→魔法
の中で、この本は(1)あたりにあるのかなあと思っていたら、(2)だったのでがっかりきた、という感じでした。


●「ルカ −楽園の囚われ人たち−」七飯宏隆[電撃文庫]510円(05/02/25) →【Amazon】

第11回電撃小説大賞《大賞》受賞作。
人類が絶滅し、 秋山瑞人作品では「鉄コミュニケーション」が一番好きな私にとっては、ツボにくる設定なのでついつい過剰に期待してしまいました。前半の展開は正直たるいと思う部分もありましたが、後半の予想外の展開(幽霊vs人工知能)はおもしろかった。 ただ、


●「指揮のおけいこ」岩城宏之[文春文庫]495円(05/02/23) →【Amazon】

「オーケストラの職人たち」がおもしろかったので、そちらで言及されていた「指揮のおけいこ」も購入。世界的に有名な指揮者の手による、指揮者の実態(?)に関するエッセイです。
指揮者と言われてとっさに思い浮かぶのが「フジミ」シリーズの桐ノ院圭と、「のだめカンタービレ」の千秋様だという、クラッシック素養がない私にもおもしろいエッセイでした。
この本を読んで、指揮というのがどれだけ肉体的にも辛い仕事なのかが初めてわかりました。たしかに、腕を一日に何時間も振っているだけでもかなり辛そうです。
あと、組合との関係の話とか興味深かったです。


●「オーケストラの職人たち」岩城宏之[文春文庫]524円(05/02/18) →【Amazon】

世界的に有名な指揮者による、オーケストラを支える裏方さんたちのお仕事について描かれたエッセイ集です。
今回とりあげられたのは、オーケストラの事務局や楽器の運送、遠征時に帯同するドクター、調教師などなど…
こういう「職人話」は好きなので楽しく読めました。それにしても、関係者はみんな音楽が好きだからこそ、大変な割りには実入りの少ない仕事を続けていけるんですね。そういう「好き」な気持ちが伝わってくる、気持ちのいい本でした。
その中でも特に興味深かったのは、ちらし配りの話。大阪では、芝居を見に行ったときでもせいぜい十数枚程度のチラシが座席に置かれている程度だったので、東京では1,2センチもの厚さになるチラシの束が配られているというのはびっくりでした。大阪でそういうサービスが広がらないのも、大阪ならではの理由があったんですね。なるほど。


●「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学」山田真哉[光文社新書]735円(05/02/17) →【Amazon】

表題にもなっている、需要があまりなさそうな「さおだけ屋」がなぜ商売が成り立っているのか、住宅地のど真ん中にあるフランス料理屋はなぜ潰れないのか? などなど…
「女子大生会計士の事件簿」シリーズの作者の手による、会計学の入門の入門。軽い経済エッセイです。
おもしろかったし、読みやすいけれども、ボリュームが少ないので少々物足りない部分もありました。こういう「会計感覚」がおぼろげにわかってくるような、そういう素人向けの入門書がもっと出版されるようになるといいのですが。


●「異邦人―fusion」西澤保彦[集英社文庫]540円(05/02/16) →【Amazon】

23年前の夏に父親が何者かに殺された。その時の危機的状況を解消するため、レズビアンの姉は恋人と別れて、家を継ぐために結婚した。姉の犠牲のために影二は自分の好きな学問を続けることができたのだ… それがネックになって、影二と姉の間にはわだかまりが残った。影二が久しぶりに実家に帰郷するとき、姉の要望で彼女のかつての恋人だった女性の書いた小説を空港で影二は購入した。それが引き金だったのか、気が付くと影二は23年前、父親が殺される数年前にタイムスリップしていた…
西澤保彦作品には、前からどことなくフェミニズムの匂いがしていて、そうなった原因はなんだろう?と密かに気になっていました。前に、作者の青春時代を強く反映していると憶測される作品「黄金色の祈り」を読んだときに、主人公と作者を重ね合わせて「あの頃の反動(反省?)でそう考えるようになったのかな?」と思ってしまいました。もちろん、主人公と作者はイコールではないので、そう考えるのはあまりに浅はかですが…
今回の作品を読んで、西澤作品のフェミニズムの匂いは、本来あるべきとされている「家族」に対する違和感が元になっているのだろうか…という気がしました。わりと最近の作品だと「方舟は冬の国へ」もそうですし、チョーモンインシリーズもそうですし。
今回の話自体には直接私の底には響きませんでしたが、作中作である「アニスの実の酒」で描写された「契約」についての話が印象的でした。


●「空ノ鐘の響く惑星で6」渡瀬草一郎[電撃文庫]590円(05/02/12) →【Amazon】

新キャラは爽やかで好感が持てますが、主人公サイドの人たちがみんな「いい人たち」なのが少々物足りなかったり。 渡瀬さんはもっと濃いキャラが


●「All You Need Is Kill」桜坂洋[集英社スーパーダッシュ文庫]571円(05/02/08) →【Amazon】

最近、評価の高い作家さんの作品 いつまでも繰り返され 切ない話でした。 秀逸なガンパレードマーチのプレイ日記を読み返した時の、あの気持ちを思い出しました。


●「ユージニア」恩田陸[新潮文庫]667円(05/02/04) →【Amazon】

恩田陸の新作。傑作です。
透き通った悪意の美しさが生み出す魔術に酔うためにも、先入観なし読んだ方がよい作品ではないかと思います。できればあらすじも知らない状態で。
それにしても装丁が美しい。特に予感に満ちたプロローグのイメージを、デザインが見事に増幅しています。この美しさだけでも、文庫落ちを待つのではなく、ハードカバーで購入する価値はあると思います。
以下、微妙にネタバレな感想→私は信仰を持っていませんが、それでも「神の御技」を感じたことはあります。
仏像や西洋の宗教画の中には、真の光を内包しているとしか思えないものがあります。それらを生み出した彼らには、神を見、感じ取ることができていて、それをこの世のものにもみえるようにうつしとろうとしたのだ、と…
でも、その御技は神の力の反映ではなく、実はいくつかの偶然の連鎖によって生み出された蜃気楼だとしたら…
そのむなしさやラストの尻すぼみ感もふくめて、実に美しい作品でした。
「Q&A」とある意味似た様な構成ではありますが、ティストが全く違うあたりはさすが恩田さん。
デビューしてかなり経つのに、いまだに書けば書くほどに伸びていく作家さんなので、新刊が本当に待ち遠しいです。


●「ブラック・ベルベット 神が見棄てた土地と黒き聖女」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫]495円(05/02/03) →【Amazon】

須賀さんの新シリーズ、開幕です。
ブラックベルベット 私は雑誌で読んでたのですが、この文庫本では雑誌に大幅に加筆されてまして、何より大ネタの一つが追加されていたせいで、びっくりしました。そうなるのか…
シリーズのプロローグという感じで、今後の展開が楽しみです。


●「作家の犯行現場」有栖川有栖[新潮文庫]667円(05/02/01) →【Amazon】

江戸川乱歩や横溝正史ゆかりの地、有名ミステリの舞台、そして鍾乳洞、トリックアートの美術館、流氷に阻まれた北限の地…ミステリ作家さんの有栖川有栖さんが旅して、得たインスピレーションをエッセイや短篇に映した読み物です。
雑誌「ダヴィンチ」の連載をまとめたものが2002年に単行本として出版。それの文庫本化です。文庫の書き下ろしの「旅」がひとつ追加されていました。
おもしろかったです。私の妄想も色々と刺激されました。
大時代的な素敵な洋館をみると、「ここで連続殺人事件が…」とつい妄想しがちなミステリファンにオスメです。


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