99年6月に読んだ本。

●「ヒトラーの防具 下」帚木蓬生[新潮文庫](99/6/30)

下巻です。
戦争がはじまり、ドイツの歯車はますます軋んでいく。時代が狂気に流されながらも、「人間として」生きていこうとする光彦。しかし、運命は残酷にも……
話も終盤になると、とても痛くて。本当に悲惨な状況中、それでも「生きよう」とする「普通の人」の姿に胸が打たれます。
この本を読んでる間中、もし私がこのような世界に放り出されたら何ができるか?というのを考えてしまいました。間違ってることを「間違ってる」と言えるだろうか。自分に言い訳しながら生きていくことしかできないだろうか。…ちゃんと、生きていくことがでるだろうか。
特にドラマティックな演出をするわけではなく、どちらかといえば話は淡々とした感じで進んでいくのですが、最後の方は胸にじーんとくる感じで、泣けました。
かなり分厚いけど、おすすめの本です。


●「ヒトラーの防具 上」帚木蓬生[新潮文庫](99/6/28)

数年前に、「総統の防具」というタイトルでハードカバーででて、かなり評判のいい作品でした。文庫本化したので読もうと買ったんだけど、厚さにちょっと気後れして、しばらく積読になっちゃってました。
東西の壁が消滅したあとのベルリン。元東ベルリンから、日本の剣道の防具が発見された。その防具はヒトラーに贈られたものだという…そしてそこに残っていたのは、一人の男の数奇な運命を綴った手記だった…
舞台となるのは、第二次世界大戦前後のベルリン。それを独日混血の武官補佐官・香田光彦の目を通して描かれます。
描き方がうまい人だけに、国家が少しずつ狂っていく過程がとても痛いです。ここで描かれてる世界が、60年前に存在していたというのが今となっては信じられないような感じがします。…でも今はあの時代の地続きにあって、そして今もあんな暗い思いに憑かれている国が存在しているのも、事実で。
重い話ですが、先がとても気になります。さあ、次は下巻だ。


●「子供の言い分 毎日晴天!3」菅野彰[キャラ文庫](99/6/26)

「毎日晴天!」シリーズ3作目。ボーイズラブもの。帯刀四兄弟+2名の奇妙な同居生活での、ひとつ屋根の下の恋。基本的にはコメディですが、テーマ自体は重く、深いものでした。
今回メインとなる、高校生カップルの勇太&真弓はすごくお気に入りで、特に真弓には萌えてますんで、本当に楽しみしてたんですよ、新刊を。期待以上にいい話でした。
お互い好きでいても、お互いの育ちがあまりに違いすぎるから、「壁」ができてしまう。お互いを想う気持ちだけで乗り越えられるのか…
ラブラブだけで終わらない話で、切なくて……いいなあ。
真弓って本当に土壇場になったときに、強いですよね。まっすぐでしなやかで、すごくいい子だなあ、と思います。
今回で勇太と真弓の話が一段落というのは寂しいです。雑誌の番外編の話(これもよかった)がまた載るのは楽しみなんですが。
ボーイズラブが好きな人は、このシリーズを一度手にとってほしいなあ。「毎日晴天!」から読んでみてください。


●「六の宮の姫君」北村薫[創元推理文庫](99/6/25)

92年にハードカバーででた「私」シリーズの4作目の文庫本化。
これは出た当時に図書館で借りて読んだんですが、手元に持ってなかったので文庫本化したのでゲット、再読しました。
この「私」と円紫師匠のシリーズは、「身近な謎」を解くミステリのシリーズなんですが、今回の謎は芥川龍之介が自作の短編「六の宮の姫君」について語った、「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」という言葉。文豪たちの作品や、書簡などから浮かび上がってきたのは……
内容は細かく覚えていたのですが、それでも楽しく読めました。私は芥川は薄い本を2冊程度しか読んでないし、菊池寛にいたっては名前しか知らないです。それでも、いろんな資料から浮かび上がってくる二人の関係がおもしろかったです。公開された資料から色々な謎を読み取っていくって、すごく好きなタイプの話なんです。
あと、北村薫の文章って好きだなあ……描写が匂いたつような感じで。なんだかすごい贅沢をしたような気分。
ただ、このシリーズの文学談義があまり好きでない人にはちょっと辛い作品かもしれないですね。
このシリーズを読んだことのない方は、ぜひぜひ最初の「空飛ぶ馬」から読んでください。創元から文庫ででてます。とても素敵なシリーズですよ。


●「葦と百合」奥泉光[集英社文庫](99/6/24)

純文学畑の人がかいたミステリってことで、「葦と百合」は「知る人ぞ知る」という作品でした。ミステリファンにこの人が有名になったのは、「我が輩は猫である殺人事件」…ではないかと。
私はこの作者では「石の来歴」は昔図書館で借りて読んだ記憶が。けっこうよかった、と思います。…実は細かいところは覚えてないんだけど。作者紹介のところを読むと、「バナールな現象」も記憶にあるような…読んだと思うけど、どんな話だっけ?
さてさて。結婚を近くに控えた男が、学生時代に少しだけ関わったコミューン運動「葦の会」の入植地を訪れる。しかしそこは昔に廃れて、誰もいなくなっていた……ひなびた村に伝わる血なまぐさい伝承と、その舞台となる旧家。森の奥で起こる事件…とミステリファンなら惹かれるような題材がでてきます。
そしてあいまいになる夢と現実。
………でも、体調が悪くて思考能力がゼロに近いときに読む本ではないですよねぇ。おかげで最後の方はわけわかんないです。健康体のときならもうすこしこの境界に漂う感じを楽しむことができたんでしょうか。
空想が伝承と化していく過程のエピソードはおもしろかったです。


●「カナリア・ファイル7 変若水」毛利志生子[集英社スーパーファンタジー文庫](99/6/22)

「カナリア・ファイル」シリーズ最新作。今回は敵??だと思われていた、樹浬の過去の話がメイン。なんだか綾瀬って妙な悪の(?)組織だなあと思ってたら、こういう事情だったんですね……たしかにこれだとこうなるわなあ。
色々な「謎」の部分がとけてきて、意外な人間関係…もわかったと思うんだけど、ストーリーを細かく覚えてないのがキャラ名がでてきてもよくわからん…とかわかってきて、そろそろラストスパートかなあ、という感じです。
あとがきの話はおもしろかったなあ。


●「クロノス・ジョウンターの伝説」梶尾真治[朝日ソノラマ文庫NEXT](99/6/18)

雑誌掲載作品に書き下ろしを加えた作品。
クロノス・ジョウンターは人を過去に送り込む装置。…それらをめぐる、三つの愛の物語です。
クロノス・ジョウンターは人を過去に送り込む力がありますが、「過去に留まれる時間には限りがある」「過去から引き戻されるとき、反動でさらに未来へ送られる」「一度戻った過去よりさらに過去に戻ることはできない」…というような制限があります。
自らの意志で過去に戻った3人。愛する人を助けるため、ひとめ見たい情景があるため…
どれもなかなか感動的な話でしたが、個人的には一つ目の話がお気に入り。あの結末を想像するととても切なくて…二つ目の話でも、主人公たちよりも哀れな「婚約者」の方に共鳴するものを覚えたのでした。


●「月と貴女に花束を」志村一矢[電撃文庫](99/6/16)

第五回電撃ゲーム小説大賞選考委員特別賞受賞作。電撃ゲーム小説大賞関係は全部チェックいれてるんで、これを買いました。イラストもなかなかいい感じだし。
高い能力を持つ、「ラグナウルフ」の血をひきながらも変身できない「人狼」の月森冬馬の前に、深雪という美少女がやってきた…彼の妻として。戸惑いながらも彼女に惹かれてゆく冬馬。幸せもつかの間、ヴァンパイヤが彼を襲いにきて……
好みのかわいい女の子が目の前に現れて、ひとつ屋根の下の生活が……とまあ、基本はラブコメですね。それに人狼vsヴァンパイヤの戦いが絡んでくるわけです。
細かいツメが甘いとか、話にもう少し独自性がほしいとか、そういうのはあるけど読後感はいいし、月森一家のキャラはなかなかよかったです。静馬兄さんは好みのタイプかも。


●「朱い竜」鹿原育[小学館キャンバス文庫](99/6/15)

表紙にひかれて買っちゃいました。あまり聞いたことない作家さんだったので新人さんかな?と思ったらもう4年以上やってる方だそうで。そのせいか、結構こなれた感じで読みやすかったです。
ジャンルでいえば「怨霊退治モノ」なんですが、そのシステム自体は既存のものを使うのではなく、新しく作っているあたりはよかったな、と。
あと、主役は三人の兄弟で、長兄は包容力のあるタイプ、次兄は美形で天然の女たらし、末弟は元気で生意気な少年…でそれぞれ結構魅力的。しかもこの三人は、全く血が繋がってないかもしれないけれども、お互いを本当に大切に思ってて。この兄弟愛の炸裂ぶりが見所かもしれません。(念のため、妖しい話ではないです)
話自体は、もうひとつパワーが足りない気がしますが、楽しめました。
まだまだ謎はあるし、今回は話ばかりで姿をみせてない都朱ちゃんもみてみたいし、続きがでたら読むと思います。


●「人形地獄 帝国猟奇探偵社2」流星香[小学館キャンバス文庫](99/6/14)

「悪魔の花園 帝国猟奇探偵社」の続編。
舞台は昭和のはじめの東京。銀髪の美少年で侯爵の魔魅也は、「帝国猟奇探偵社」をひらいて奇妙な事件の解決をしていた。「姉が石膏像に閉じ込められている」と主張する少女と出会ってしまったことで事件に巻きこまれるが…

前作がオカルトで展開がハデだったので、今回もその路線でいくかと思ったらこじんまりした話だったので肩透かしを食らったような。
「人形屋敷」の雰囲気の描写の仕方とかは悪くはなかったけど、もうひとつすっきりしないものがあります。
今、自分の中で「銀髪萌え!!」なんで、侯爵がいればそれでかまわないって感じだったりしますが。キャラ的には悪くないシリーズではないかと。


●「グイン・サーガ66 黒太子の秘密」栗本薫[ハヤカワ文庫](99/6/13)

「グイン・サーガ」シリーズ最新刊。今回の内容もタイトルそのまんまで、スカールがノスフェラスでみた「秘密」をナリスに語る話が中心です。
今までの展開からこの内容もある程度は予想がついてましたが、○○○○○がこういう形で話にかかわってくるとは思わなかったなあ。どう関係づけられるんだろ?
ひとりの女への愛を裏切るくらいなら、世界なんて滅んでしまってもいいと言い切るスカールさんがいいなー。カッコいいです。
さてさて、次はいよいよ!!グインの本編帰還ですね。長かった!!


●「天使降臨」星野ケイ[講談社ホワイトハート](99/6/11)

「堕落天使」の続編。舞台は当たり前のように香港で続いてますねぇ。
「天使」と呼ばれる、人を喰らう異形の生き物たちと戦う人たちの物語です。今回は、天使としては異端であるユウと天使と人を見分ける力のあるエルの出会いの頃の物語が中心です。表紙もそうだし。主役であるはず(?)の達也の影が薄いなあ。
今回はわりとストレートな友情を描いています。あんまりにまっすぐなんで、読んでてちょっと照れが入りましたが、こういうのも悪くないなあ、と。
今回で世界設定などは徐々に見えてきて、わかりやすくなったのはよかったです。


●「放浪探偵と七つの殺人」歌野晶午[講談社ノベルズ](99/6/10)

「○い家の殺人」シリーズでお馴染みの探偵・信濃譲二が出会った7つの事件話です。
短編集ですが、この本はちゃんと読者にも「推理」してもらうために、解答編は巻末に袋とじになっています。
私が本を買って最初にしたのは、袋とじを開けることでした……こんなヌルい奴には「ミステリファン」を名乗る資格ないんだろうなあ…
お話の方は、結構無茶なトリックの話もありましたが、それぞれなかなか練られてておもしろかったです。ミステリ好きな人にはオススメです。


●「暁天の星 鬼籍通覧」椹野道流[講談社ノベルズ](99/6/8)

ホワイトハートの「奇談」シリーズの椹野道流さんの新作。
今回は、大阪の法医学教室を舞台にした、ほのぼの話(?)。いや、謎はあるんですが、あんまりミステリじゃないんで。(展開はミステリぽいんだけどね)
ノリとしてはかなりライトノベルズです。キャラはなかなかいいですね。やりとりが楽しくて。伊月くん、結構気に入りました。
作者は本業が監察医だけあって、解剖の手順や遺体の描写などはリアルです。「死体は語る」のような話が好きな人は、これだけでも読む価値があると思います。
ミステリとして終わってくれたら、もっとよかったのになあ。
「特殊職業モノ」というのが好きなんで、個人的にはとても楽しかったです。続編も(でるよね??)期待してます。


●「名探偵の肖像」二階堂黎人[講談社ノベルズ](99/6/7)

短編集+J.D.カー作品に関する対談+随筆集です。短編は、三つがルパン、鬼貫警部、H.M卿のパステイーシュもの。実は私はルパンは子供向けの作品でしか読んだことなくて(恥ずかしい)、あとの二つは一作も読んだ事がないんで、ちょっとよくわかんなくて。単独のミステリとしては、まあまあという感じです。
パロディ的な作品として、ミステリをワインに見立て、「ソムリエ」ならぬ《読むリエ》がぴったりのミステリを紹介してくれたり、「美味しんぼ」ばりの対決があったりする作品があります。これ、結構ウケました。ここにでてくる実際のミステリ評にニヤリという感じ。一応、でてくる作品の3/4は読んだorタイトルは聞いた事ある作品だったので。ミステリ好きな人には楽しめるんじゃないかな?
でも《読むリエ》が実際にいればいいのになー。自分の好みどおりのおもしろい作品を紹介してくれる人が。
それにしても、この人って本当にミステリ好きなんだなあ、と微笑ましくなりました。


●「死にゆく夏の、喘ぎにも似て」菅野彰[二見書房](99/6/6)

菅野彰さんの94年にでた本です。最初の単行本だそうで。これは絶版なんですが、ちこさんに貸していただきました。ありがとうございます。
ヤクザの組長の息子だが父親に反抗して家をでた直人と一緒に暮らしてた恋人の悠一。直人は暴力事件を起こし、少年院に入れられた。そして悠一の面倒をみることになった、組からつかわされた男・竜二。彼に惹かれはじめた悠一だったが…
耽美というか、ロマンというか。濡れ場、多いですねー。
話の基本構造はいかにもこの系統でありそうな話ですが、全体の印象としては透明なきれいな感じがします。個人的には終盤の直人に感情移入しました。切なかったです。
これで菅野彰さんの商業出版されている本、完読です。読む本がなくなったのは寂しいけど、今年は菅野さんの新刊たくさんでるから、楽しみ。


●「ルナティック シャイン」谷瑞恵[集英社スーパーファンタジー文庫](99/6/5)

「パラダイスルネッサンス 楽園再生」「夜想」がなかなかよかったので、新作も読んでみました。
二流モデルの梨里の恋人・天河は超常現象専門家だった。ある日、彼の元に若い物理学者・千夜が訪れ、「ヴィジョンを返してほしい」と頼む。その後、天河は失踪し、梨里は不可解な事件に巻き込まれてしまうが…
…惜しいなあ。超能力と魔力の統合、「ヴィジョン」によって目覚めた“聖者”と悪魔たちを統べる“精霊王”の対立という構図を少しずらして眺めたところとか、設定自体はなかなかおもしろいんです。すっとぼけたように見えて、深い悲しみを背負った千夜や、口が悪いアクマなどのキャラもなかなかいいし。ただ、それらに比べると展開が物足りない感じがします。悪くはないんだけどなあ、この作品。
これはシリーズにはならないのかな?まだまだ話としては続きそうだけど。


●「彼の楽園」菅野彰[二見書房](99/6/4)

菅野彰さんの、95年頃出た本です。貸してくれたちこさん、ありがとう。
ボーイズラブ…というよりは耽美という感じかな?
二つの話が入っています。表題作の「彼の楽園」は恋人を閉じ込めちゃう男の話。もうひとつの「まだ見ぬ夢の」は、年上の幼なじみを守りたい一心で、不思議な力を得た少年の話。
この作者の初期の作品のせいか、両方とも「余裕がない」感じがします。まだぎこちないけど、固くて透明な感じがする話でした。家族関係がうまくいかなかったせいで、不器用な愛し方しかできない子供のような男たち。こういう痛みを抱えた登場人物たちは菅野さんの作品ではよく登場するんですが、この頃の作品ではその痛みから目をそらしてるんですよね。後期の作品になると、それが「傷を抱えながらも強く生きていく人たち」の話になるんだけども。
菅野さんの作品は、現在発売される作品では、未読があと1冊となりました。数日中にコンプリートできそう。


●「サイケデリック・レスキュー ミステリー・トレイン」一条理希[集英社スーパーファンタジー文庫](99/6/4)

「サイケデリック・レスキュー」シリーズの4作目です。水城財閥の極秘特殊救助部隊のお話なんですが、今回は暴走列車を舞台に話は進みます。スーパー秘書・暮崎さんの過去の話でもあります。
今回の話も、特殊救助隊vs悪の組織的な感じで話が進んでいて、あんまり「レスキュー」という感じではなかったのが残念。基本設定は元々コミックス的ではありますが、ますますそっちに傾いているような…個人的には、個々の勇気と智恵で難局を乗り切る話を読みたいです。
なんだかんだいいつつも、楽しくサクサクとイッキ読みできたのは確かです。


●「カーニバル 人類最後の事件」清涼院流水[講談社ノベルズ](99/6/3)

「カーニバル・イヴ 人類最大の事件」から1年半。
プロローグが300ページあって、当初は「カーニバル」本編は6冊位になるという話だったから、この程度の厚さになったのはまだよかったんでしょう、きっと。…でも850ページ、長かったです。…で、あと一冊「カーニバル・デイ」が残ってるんですよね、まだ。
JDCの爆破事件で始まった、「犯罪オリンピック」現象。不可能犯罪が秘密組織「RISE」によって引き起こされ、全人類の死者が増加しつつある世界。それにJDCの探偵たちをはじめとする、全世界の探偵が立ち向かっていくが…というか。怪しげな組織が観光地で変な事件を引き起こしたり、まあ色々と…って感じですか。
清涼院流水の本を、「ミステリ」として読んでる人がどの程度いるんだかわかりませんが、今回の内容は完全に「伝奇モノ」になってますよね。…かなり荒唐無稽だし。まあ、ここまできたら、○○○○○が空を飛ぼうと、○○○○が人間を襲おうと、もうどうでもいいやって感じになっちゃいます。
これを読んでて思ったのが、「車田正美のマンガみたい…」でした。それでいろんなシーンとかを車田マンガで想像したらちょっと楽しくなりました。
まあ、この変な世界に慣れた後半は、結構楽しめたかも。
ここまで広げた風呂敷きを、この作者は畳む気はあるんだろうか…
メタ的な仕掛けも、やりたいことはわかるんだけどねー、って感じでした。それはおいといても、あの二人称はちょっとねぇ…


●「謎物語 あるいは物語の謎」北村薫[中公文庫](99/6/1)

最近はエッセイスト・アンソロジストとしても名高い、北村薫の96年に出た初エッセイの文庫本化。
たしかこれはハードカバーで持ってたと思うけど…ほとんど忘れてたし、本がきれいだったので買うことに。
それにしても美しい本です。中は二色刷りなんですが、もう一色が透き通ったきれいな青色で。青一色のイラストも素敵だし。その分、厚さに比べてお値段は高めですが、こういうきれいな本が存在するだけで幸せになれるので、満足です。
この本は、「謎」や「物語」について語られたエッセイですが、さすが北村薫だけあって、語り口がいいんです。文章、うまいなあ。
ひとつの作品をさまざまな角度から「読む」ことの楽しさを教えてくれます。「トリックと先例」については、作る側からみた事情はなかなか興味深かったというか。
軽やかに楽しむにはいい本だと思います。


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