99年9月に読んだ本。
●「夢の宮〜王の帰還〜上」今野緒雪[集英社コバルト文庫](99/9/30)

ちょっと久しぶりの「夢の宮」シリーズ。
ロアン国の二人の王子テンヨウとシカンの哀しい運命のお話。弟のシカンは王位に対する野心もなく、愛する人とのささやかな幸せだけを望んでいた。兄のテンヨウのことも敬愛していたのだが、兄の結婚と父の死からサイコロは悪い方に転がり、やがて弟は兄を怨むようになるが…
今回は結構流血沙汰ですな。巫女に告げられた予言に翻弄されながらも静かに運命を受け入れるテンヨウがかわいそです。
ただ、今回の話は、なぜシカンがあんな行動を起こしてしまうか、それに対する説得力が弱いんですよね。まあひどい目にあってるけれども、あこそまで極端に走るには理由の裏打ちが足りなすぎるような気がします。
とりあえず、明日は「下」の方を読みます。


●「メタル・アイズ」毛利志生子[集英社スーパーファンダジー文庫](99/9/29)

「カナリア・ファイル」シリーズの作者の新作。
「メタル・アイズ症候群」は、瞳がまるで金属のような色合いを帯びる奇病で、発病者はなんらかの超能力を帯びていた。鮎はメタル・アイズ症候群で、「過去に発せられた音を聞く」ことができ、それを生かして警察の科学捜査研究所で働いていた。
ある日起こった、女子大生の誘拐事件。鮎は誘拐現場と思われるところで聞いた音には、それらしき痕跡はなかったが……

ミステリ的な要素が強いかな。講談社ノベルズあたりでだしても違和感なかったかも。ミステリとしては事件の「見せ方」にもうすこし工夫がほしかったですが。あと、キャラが多すぎてメイン以外の人たちがわかりにくかったのが残念だったかな。
設定的には結構おもしろかったです。それにしても音だけでそれだけのことが本当に分かるものなんでしょうか?わかるんだったらすごいですよね。


●「天使飛翔」星野ケイ[講談社X文庫ホワイトハート](99/9/28)

「天使」シリーズの三作目。「天使」と呼ばれる、人を喰らう異形の生き物たちと戦う人たちの物語。エルを守るために、傷ついてしまったはみだし天使のユウ。達也らはユウをかくまったが、VWAにユウが捕らえられてしまい…
今回もかなり熱い友情物語となっています。あと、少年たちの成長物語。
あまりにもストレートなんで少し気恥ずかしいところもあるけど、「少年ジャンプ」ノリを愛好する人間にとっては気持ちいいというか。途中の展開とか、けっこうグッときました。
次、舞台が日本に戻るそうですが、かなり追いつめられた状況になってるけどどうなるのやら。


●「呪痕の美姫 アナベル・クレセントムーン」中井紀夫[電撃文庫](99/9/27)

いのまたむつみさんのイラストが美しかったのと、この作者が短編で「星雲賞」を授賞したことがあると書いてあったので、大きくハズレないだろうと思って買ってみたんですが。
スカーレットロックの城下町にあらわれる女剣士は実は王女で、親衛隊長の謀反の証拠をつかむために色々と調べていたんだけれども、阻止できずに親衛隊長に追われて町から逃げ出すハメになる。その上、王女は親衛隊長の魔法で額に呪いの印をつけられてしまい…
というような感じの話なんですが、うーん……おもしろくない。姫様はなんだか生真面目なだけだし、ヒーロー(?)であるはずのチンピラ魔法使いは単なる小悪党だし、キャラに魅力が感じられないんです。あと、悪役にしても味方にしても、「なぜ」こういう行動がとるかの裏付け理由がきっちりと描かれていないために、紙芝居をみてるような感じになっちゃって。
最後の方で、この世界の生成理由がでてきますが、それも特に斬新なものではないし、なんだか唐突にでてきたような気がして、読んでて「ふーん」って思うだけ。
いのまたさんのイラストは素敵でした。


●「女王陛下の薔薇1 夢みる蕾たち」三浦真奈美[中央公論社C★NOVELS](99/9/26)

「風のケアル」の作者の新シリーズなのでさっそく購入。今度は少女たちの話です。
ブレニム帝国に初めての女王が誕生した。この国では女性は「家庭の天使」としての役割のみが与えられ、表に出ることなど叶わなかった時代。若い女王の親友である平凡な少女・エスティは彼女の役に立ちたいと願っていたが…
かつての大英帝国を彷彿させる舞台での架空歴史モノという感じでしょうか。今回はまだ序章で、エスティが様々な困難に遭っていく状況が描かれています。「風のケアル」とちょっとキャラが被ってるような感じはしますが、生き生きとしててなかなかいい感じです。あと、人種差別や階級差別によるひずんだ社会とそれを乗り越えていこうという主人公という構図も似てるかも。「風のケアル」の展開からすると、これから先は彼女たちの痛快な反撃が始るんでしょうね。それが楽しみ。


●「TRAIN+TRAIN 1」倉田英之[電撃文庫](99/9/24)

イラストを描いてるのが「鉄コミュニケイション」のたくま朋正さんで、あとは設定がおもしろそうかなあ、と思って買ってみました。
惑星デロカでは、独特の教育システムがあった。15歳を迎えた少年・少女たちは巨大な学校列車「スクールトレイン」に乗り込み、1年かけてあちこちの街を回って勉強する。
坂草礼一は普通科の列車に乗る予定だったのだが、破天荒な少女・アリーナと出会ったことで、はみだしものの集まる「スペシャルトレイン」に乗り込むハメになってしまった…

初期設定はすごくおもしろいと思うんだけど……うーん。なんだかアニメの脚本読んでるような感じ。世界の作り込みが浅く感じる。キャラももうすこしエピソードで「みせる」ようにすればいいのに。
ネタ自体はいい感じなんですよ。書き方によっては、もっとおもしろくなる話だと思うので、それがなんだかもどかしい。
「電撃大王」にのってる、たくま朋正さんのマンガの方はわりといい感じだったんだけども。


●「汝、翼を持つ者たちよ」片山奈保子[集英社コバルト文庫](99/9/22)

98年度のノベル大賞入選作家の文庫デビュー作。コバルト系の新人さんは一応おさえているんで読んでみました。
幼い頃、狼に育てられた少女・シャナはアズバドル村で自警団に勤めている。村に新しくやってきた神官・イーグは、「魔の使い」である「銀の取りプラナカーナ」を彷彿させるような、銀の髪に藍い瞳をしていた。その容貌のため、最初は村人に敬遠されていたイーグも少しずつ溶け込んでいった。しかし、幸せな日々は続かずに…
新人さんにしては文章やキャラや構成がしっかりしてて、安心して読めます。作者紹介を読むと、70年生まれですか。なるほど、これくらいの年齢だったらそうでしょうね。
安定している分、斬新さには欠けるかも。
作品自体は悪くないです。とりあえず次の作品も読んでみようかな。


●「きんぴか3 真夜中の喝采」浅田次郎[光分社文庫](99/9/21)

「きんぴか」三部作のラストを飾る作品です。
まっすぐさゆえに、世間からどこがずれてしまって、ドロップアウトしてしまった、極道者・元自衛官・元大蔵省エリート官僚。その3人を定年退職した名物刑事が集めて…
ピカレスクもの。コミック的な設定のコメディです。
短編集で読みやすいし、とにかく痛快で楽しいです。そして、所々で「浅田節」が炸裂して泣かせますし。今回だと、「裏町の聖者」にはうるうるきました。歌舞伎町で不法就労者相手に診療を続けてる医者の話です。こういうキャラを書かせるとうまいよなあ、この人は……
たった三冊で終わるの、なんかもったいないですよね。またどこかで彼らに会えたらいいのに。
このシリーズはとにかくオススメ。あと浅田次郎なら、「蒼穹の昴」は傑作です。「プリズンホテル」シリーズもすごくいいです。早く文庫本になるといいのにね。


●「人形式モナリザ」森博嗣[講談社ノベルズ](99/9/20)

「黒猫の三角」に続く、シリーズ(そういえばこれのシリーズ名って何になるんだろ?)二冊目。
避暑地に立つ美術館から盗まれた1枚の絵。「人形博物館」で「乙女文楽」公演中に起こった殺人事件。人形使いと人形。操られているのはどちらなのか?
……今回の話は、メイントリックはわりと早い事気が付きました。ロクに考えずにミステリを読む私にもわかったということは、気が付いた人は多いんじゃないかな?
動機の部分、今回の描き方では少々説得力不足ではないかと。シリーズモノの安心感を逆手にとった終盤の種明かしには驚きましたが、話全体がもうひとつ私にはしっくりきませんでした。それとこのシリーズは、萌えれるキャラがいないのが個人的には辛いかな。喜多先生は素敵でしたもの…


●「少年のカケラ」深谷晶子[集英社コバルト文庫](99/9/17)

98年度のノベル大賞受賞作家の文庫デビュー作ということで買ってみました。コバルト系の新人さんは一応フォローしておこうと。
世界大戦で一度滅んでしまった世界。この世界では石を持って生まれてくる。人が死ぬときには石が壊れ、石が壊れたときには人が死んでしまう…
少年の海とシロ、少女の椿の三人は一緒に暮らしていた。ずっと続くかに見えたささやかな幸せな日々はやがて終わりをつげることに…

作者、若い方なんですよね。大学はいったばかりみたい。そのせいかな、表現のしたかったことというのはよくわかるんだけど、力量が足りないというか。海や椿はかなり複雑なキャラなんですが、もうひとつ描き切れてなくて、薄っぺらい感じがします。あと、文章が若木未生の影響、強くないですか?なんだかそれが気になって。
筋は悪くはないと思うんだけどな。石を渡すところの感じとか、悪くなかったし。
もう数年たって、力がついた頃の作品なら読んでみたいです。


●「グイン・サーガ外伝16 蜃気楼の少女」栗本薫[ハヤカワ文庫](99/9/16)

「グイン・サーガ」シリーズの新刊。今度は外伝ではありますが、内容的には今の本編以上に本編。グインの一行がキタイから帰る途中のノスフェラスでの話。本編での大きな謎のひとつであった、カナン帝国の滅亡の真相が明らかにされました。今までの伏線から内容の見当はついていたから、それほどインパクトはないけど。あとはセム族やラゴンとの再会の話です。この前の本編といい、ここしばらくは「約束を果たす」話なんでしょうね。
今回のシルヴィアは結構かわいいところがありますよね。いつもこれくらい素直だったらいいのに。


●「堕天使殺人事件」[角川書店](99/9/15)

若手ミステリ作家による、リレー形式の本格ミステリ。こういうイベントモノって結構好きなんで、ついハードカバーなのに買ってしまいました。
参加した作家さんは、書いた順に二階堂黎人、柴田よしき、北森鴻、篠田真由美、村瀬継弥、歌野晶午、西澤保彦、小森健太郎、谺健二、愛川晶、芦辺拓。このうち作品を読んだことがあるのは9人かな。さらに3人はとても好きな作家さんだったし。
北海道・小樽運河。そこに係留された小船の中に、ウェディングドレスをまとった女性の遺体が見つかった。しかもその花嫁は、6人の人間のパーツで作られていた……という冒頭の謎がなかなかそそられます。そしてそこから各地で連続的に事件が起こっていくわけで。
リレー小説ということで、それぞれの人の文章の肌触りはもちろん違うから、謎と同じく「つぎはぎ」のような印象があります。それぞれが添えた彩りに各作家の個性が現れているのが楽しいですね。
途中で「…本当に解決するのか、これ?」と不安になりましたが、一応なんとかケリはつけてます。豪腕ですが。動機だとか密室トリックとかはちょっと…って感じですが、暗号の件はお見事。
これをひとつの「本格ミステリ」とみるとかなりバランスが悪く、もうひとつなんですが、ミステリ好きによる遊び心を一緒に楽しむための作品かもしれません。ミステリの楽屋落ち的なネタも結構あるし、ミステリファンなら楽しめるんじゃないかと。


●「入神」竹本健治[南雲堂](99/9/14)

この欄では基本的にはマンガの感想は載せないんですが……
「匣の中の失楽」「ウロボロスの偽書」などでお馴染みのミステリ作家・竹本健治が描いた、囲碁マンガです。数年前から竹本さんがマンガを書いてて、その家に遊びにいった漫画家やミステリ作家がアシスタントをした、という話は聞いてたんですが、それがついに出版されました。
17歳で本因坊となった天才囲碁棋士の牧場智久。順風満帆の彼の前に立ちはだかったのは、「囲碁の神様」に愛されたような神懸かり的なひらめきをみせる桃井だった。両者は若獅子戦決勝であい見えるが、そこでの身を切らすような勝負の行方は…
絵は正直いうと下手です。そりゃ、プロの漫画家さんではありませんし。でも話はすごくおもしろい。単に二人の勝負というだけではなく、「神」に近づくための果てしのない苦しみ。そのギリギリのせめぎあいにくらくらします。
囲碁は私はよくわからないんですが、それでもなんとなくすごさは伝わるし、文句なくおもしろいです。
オススメ。「ヒカルの碁」とか好きな方はぜひ読んでみてください。
それにしても、アシスタントのメンツがすごいですよねー。


●「夢幻巡礼」西澤保彦[講談社ノベルズ](99/9/13)

「チョーモンイン」シリーズの第4弾長編ですが、今回は番外編的な内容です。嗣子ちゃんがでてこないのは寂しいぞ。
能解警部の部下の奈蔵渉は、警察官ではあるが、実は連続殺人鬼。その彼が10年前に遭遇した、不可解な事件。密室での殺人、そして消えた「犯人」が10年の月日を経て、再び現れたが……
暗い。どろりとした話だなあ、今回は。親子、特に母子の確執はかなり気味が悪いです。…といいつつ、つい読みふけってしまいましたが。さて、この話はこのシリーズのラストに深く関わるそうですが、どんな話になるんでしょうか。なんだか怖いなあ。


●「盤上の敵」北村薫[講談社](99/9/9)

雑誌「メフィスト」に連載されていた作品をまとめ、加筆したもの。「メフィスト」は買ってたけど、これは読んでなかったの。
末永純一が自宅に戻ると、パトカーが何台も止まっていた。散弾銃を持った男が逃亡中、純一の家に立て篭もり、人質をとっているらしい。純一は妻・友貴子のために、犯人と裏取り引きをして逃亡を手伝うハメになるが……
本格ミステリです。さすが北村薫というか、とにかくうまいですよね、この人は。話の骨組みだけ取り出せばそれほど際立った話ではないのに、とにかく読ませます。エピソードの見せ方がうまい。
とにかく、痛い話でした。切なくて。なんだか文章やエピソードで満腹になっちゃって、話の筋はどうでもいい気分です。いや、筋ももちろん悪くないし、おもしろいけど。
オススメです。
それにしても、本のデザインが美しいですよね。それほどお金持ちじゃないからハードカバーってあんまり好きじゃないけど、こういうきれいな本なら、手に持ってるだけでなんだか嬉しくなっちゃうなあ。


●「巷説百物語」京極夏彦[角川書店](99/9/8)

雑誌「怪」に連載されていた、京極夏彦の新シリーズの短編集。江戸時代を舞台にしたケレン味のある話で、妖怪物語といえなくもないかな。でも妖怪がいるのは、人の心の中。
「必殺」のような雰囲気。京極さん、好きですもんね。最初の方の話はもうひとつピンとこなかったんですが、中盤からの「しかけ」がどんどんおもしろくなってきました。「舞首」「芝右衛門狸」はかなりおもしろかったです。書き下ろしの「帷子辻」は、圧巻。京都を舞台にした話ですが、京都の地名が色々でてくるあたり、知ってるところだけにヤケに怖かったです。(私は京都在住なんで)最後の問答のあたりは、かなり深いですよね……
結構おもしろかったですが、京極マニアじゃない限りは、ノベルズか文庫本化を待ってもいいかも。
ちなみにこの本、表紙カバーの内側(裏側?)も要チェックですよ。


●「月の砂漠をさばさばと」北村薫[新潮社](99/9/6)

小学生の少女・さきちゃんと、作家のお母さんのほのぼのとした日常を描いた、12の物語。おーなり由子さんのイラストがたくさん入ってる、きれいであったかい本です。
ごくささいなことでも、視点を変えるだけで不思議で素敵なことになる。ちょっとしたいい間違いから想像の翼が広がったり。
なんか、ほっとする話でよかったです。個人的に気に入ったのは、「さそりの井戸」(「怒らないよ」のくだりにジンときました)、「連絡帳」です。


●「流血女神伝 帝国の娘 下」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫](99/9/3)

「流血女神伝 帝国の娘 前編」から二か月、待望の後編です。
病に伏した皇子・アルゼウスの影武者として、帝国の皇位継承者が入るカデーレ宮にかわりに行くことになった、少女・カリエ。ついて早々、弟皇子のミュカと決闘騒ぎになってしまい…
今回はほとんど皇子宮を中心に話が展開します。新キャラである、3人の皇子たちのキャラもすっごくよかったです。特にドーンとシオンの関係はなんかツボ。ミュカも結構かわいい。
でも個人的な好みでは、サルベーンかな。私、ユージィン様好きなんで……でもこの人ってある意味ユージィン様以上ではないか、という気もしますが。
前半の皇子宮での暮らしは生き生きしてて楽しかったです。そして、終盤の怒涛の展開……まさかこうなるなんて。切なかったです。
無事シリーズ化するとのことですが、本当に先が楽しみ。色々と謎もあるし、この先どういう展開になるのか…
とにかく、オススメです。このシリーズは始まったばかりでまだ二冊しかでてませんし。キャラクターもいいし、世界観もしっかりしててよいです。架空歴史ものという感じかな。男性でも違和感なく読めるのではないかと。
ぜひぜひ読んでくださいね。
さて、ここからネタバレの感想。文字をバックと同じ色にするので、ドラッグして読んでね。
ここから→ううう、ミュカ(涙)。カリエの秘密がばれてたあたりのエピソードで「ほう」と思った直後にアレとは。元気になったところ、みたいです……こういう挫折が人間的成長につながるのではないかと。
シオンがドーンのことを大切に思った上の行動だとしても、結局ドーンにとっては傷になっちゃったよね…哀しいことです。
サルベーン、一体何者なんでしょう。あと、女神の呪いは迷信ではなかったのね。花嫁って?そのあたりがこれからの展開の核心となるんでしょうか。カリエには運命に負けずに頑張ってほしいです。エドと幸せになってくれるといいんだけどなー。
←ここまで。


●「退団勧告」秋月こお[角川ルビー文庫](99/9/3)

大人気の「富士見二丁目交響楽団シリーズ」の第三部完結編です。
うちの本のラインナップをみると、なぜこのシリーズの感想がないのか不思議がる人もいるのではないかと思います。このシリーズ、一部は結構好きだったのですが、2部からなんとなく遠のいてしまいました。新刊がでると必ず買うし、パラパラと読みはしてるんだけど、最初から最後までの「完読」をしてないんで。感想コーナーには全部ちゃんと読んだ本しかのせてないですから。
ちょっと遠ざかってしまったのは、悠季が落ち込むとこっちまで引きずり込まれちゃって、しんどくなったんで。
久しぶりにちゃんと読んだら、今回の話はすっごい読みやすかったです。悠季が前向きですねー。日コン受賞記念の披露演奏会のために練習に励んでるんですが、少しずつ自分の音をつかんでいくあたりに「わくわく」を感じました。フジミで人間関係のトラブルがあっても、昔ならかなり落ち込んだだろうに、今回はたくましく乗り越えていって。強くなったよね。
ラストあたりは結構キました。よかったです。
今回で第三部完で、次からは留学編ですね。これからはちゃんと読もうっと。


●「グリム、アンデルセンの罪深い姫の物語」松本侑子[角川文庫](99/9/2)

「眠り姫」「シンデレラ」「人魚姫」などの御馴染みの童話を元に、エロティックで残酷な話に仕上げたパロディ小説です。「残酷な童話」系の本のさきがけとなった作品です。
今、話題の「本当は恐ろしいグリム童話」盗用問題で渦中の本なので、一度読んでみようかな、と。
フェミニズムや差別問題を浮き彫りにするためにかなり皮肉めいたお話となっていますが、あでやかな話に仕上がってるのがいいかと。カラーの挿し絵や装丁も美しくて素敵ですね。
この話を読んで、Webをみた限りでは「なんでこんなあからさまな盗用をするんだろう」という感じがしますが、こうなったらグリムの原典と桐生操氏の作品も読み比べてみたい気が。
著作権の問題というのはなかなか難しいですが、松本侑子さんには頑張って闘ってもらいたいものです。


●「ラグナロク5 紫の十字架」安井健太郎[角川スニーカー文庫](99/9/1)

「ラグナロク」シリーズ最新作。元傭兵のリロイと、相棒の喋る剣のラグナロクの格闘ファンタジーです。
今回の舞台はヴァナード王国。今回は前半はいつもに比べて破壊度がおとなしいかなーと思ってたんですが、終盤がなかなか強烈。やっぱり、《闇の種族》がでてこなきゃ。
まだまだ話が途中ですが、今度は続きがすぐでるそうです。それに「ザ・スニーカー」で連載していた短編の方も再来月にまとまるんですね。それも楽しみ。



HOMEへ