1999年の私的ベスト10   1998年度 / 1997年度

1999年に私が読んだ本で、個人的に「おもしろかった!!」「燃えた〜」って本をリストアップします。
ベストテンは、基本的に1998年12月以降に発売された本で、1作者1作品としています。
読んだ本の全リストはこちら

1「鉄コミュニケイション(2) チェスゲーム」秋山瑞人[電撃文庫]
1999年度は私の中でダントツの一位がなかったのでどうしようかと思ったんですが、読み返した回数が一番多い作品がこれだったので。
戦争により人類が死滅してしまった世界。少女・ハルカはコールドスリープしていたのを5体のロボットたちに助けられ、一緒に暮らすようになります。それなりに幸せに暮らしていたハルカが、ある日自分と同じ外見をした少女型ロボットに出会うことから話は始まります。
同名のコミックスの小説化…ではありますが、単なるノベライズの域を越えています。原作マンガのほのぼのした感じも悪くないですが、小説の方が世界の構成が緻密でロボット同士のスピード感溢れた戦闘など読み応え十分。
秋山瑞人って泣かせる話を書かせるとうまい。特にけなげなロボットの描写が抜群です。「E.G.コンバット」のGARPも素敵ですが、とにかく私が萌えたのはルーク!!超高性能軍用戦闘ロボットなんですが、中身がなので喋り方とかかわいいんだ、これがもう。
原作がマンガだとか電撃でもG'sの方だとかそういうのは気にせずに、ぜひぜひ読んでください。秋山瑞人は私が今一番期待している、イチオシ作家さんなんです。新作の「猫の地球儀」シリーズも今から楽しみです〜。
●「鉄コミュニケーション(1) ハルカとイーヴァ」秋山瑞人(99/1/5)
●「鉄コミュニケーション(2) チェスゲーム」秋山瑞人(99/3/8)
2「流血女神伝 帝国の娘 前編/後編」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫]
「キル・ゾーン」シリーズでお馴染みの須賀しのぶの新シリーズ開幕です。
異世界ファンタジーと架空歴史ものの中間って感じの作品かな。
ルトヴィア帝国の辺境の村に住んでいる少女・カリエはある日エドという男に拉致された。彼女は外見がそっくりな皇子・アルゼウスの身代わりとなって、皇位争奪戦に参加することになり……という感じの話です。
キャラクターがとにかく生き生きしているのがいいです。世界の作り方もうまい。挿し絵も素敵ですしねー。とにかく、読んでわくわくした話でした。最後は切ないし。
ネット上での感想ではエドがとにかく人気があるみたいですが、私はサルベーンが気になるかなあ。ああいう美形で腹黒なキャラって好みなんで。これからシリーズ化するとのことですが、先が本当に楽しみです。
コバルトではありますが、男性でも平気で読める話ですし、大人でも読み応えのあるお話です。まだ2冊しかでてませんので、興味がありましたら手にとってみてください。
ちなみに挿し絵の船戸明里さんがCOCOA cupというファンサイトを作成されています。イラストが素敵なのでファンの方は見に行くべし。
●「流血女神伝 帝国の娘 前編」須賀しのぶ(99/7/2)
●「流血女神伝 帝国の娘 後編」須賀しのぶ(99/9/3)
3「百器徒然袋 −雨」京極夏彦[講談社ノベルズ]
大人気・京極堂シリーズの番外編的な話。こちらは榎さんが主役の、とにかくパワフルな話です。中編がみっつ入っています。
閉塞的な状況を榎さんが粉砕!!する話で、爽快で愉快。京極夏彦に興味はあっても、京極堂のウンチクに挫折したとか、あの分厚さにしり込みしている人は、この本から入ってみてはどうでしょうか?ひとつひとつの話も短いし、かなり読みやすいですし。キャラクターにとにかく慣れてみてから「姑獲鳥の夏」を読むとかなり楽に読めると思います。本当は全シリーズ読んでからの方が、細かいエピソードに萌えることができるんですけどねー。
●「百器徒然袋 −雨」京極夏彦(99/11/13)
4「6月の軌跡 '98フランスW杯日本代表39人全証言」増島みどり[文芸春秋]
今回のベストテンが、「1998年12月発行」の本から対象になっているのは、この本のせい。12月にでたのに、全然手に入れることができなくてどれだけ探し回ったことか。
1998年6月、フランスで何が起こったか。それらをスポーツライターの増島みどりさんが数多くの日本代表選手のインタビューを通して再構築してくれる、力作です。
ピッチにたった選手のみならず、サブ、監督、コーチ、コックに至るまでスタッフ全員(カズは除く)のインタビューで構成されています。あのW杯狂想曲が当人たちにとってみるとどんな感じだったのかがよくわかる話。特にメディアとの体温差のことが印象に残りました。1998年の6月をじりじりとした思いで過ごしていた、すべての人に読んでほしい本です。
●「6月の軌跡 '98フランスW杯日本代表39人全証言」増島みどり(99/1/16)
5「子供の言い分 毎日晴天!3」菅野彰[キャラ文庫]
東京の下町に住む、帯刀四兄弟の元に、秀と連れ子の勇太がやってきて住みだした。秀と 長男の大河は人気SF作家とその担当という関係。秀は帯刀家の奔放な長女・志麻と結婚する予定だったのだが、志麻は出奔。そしてそのまま4兄弟と秀たちは暮らしていくことになるが…
ホームコメディなボーイズラブものです。会話のノリやエピソードのテンポがよくてとにかく楽しいんですが、テーマ自体は結構ずしりとしたことをさらりと描いています。
私にとって99年で一番萌えた本でした。勇太と真弓の高校生カップルがすっごいツボでして。特に3作目はお互いが大切で好きでも育ちの違いのせいでできてしまう「壁」を乗り越えようとしていく様が切なくて。
菅野彰は小説としての基本的な力がしっかりした作家さんです。このシリーズはボーイズラブなんで苦手な方はダメでしょうが、「モダン・タイムス」シリーズあたりは普通の人でも読めるし(特に番外編の「木蘭の 沙棠の舟」のデキはかなりいい)、エッセイ(「海馬が耳から駆けてゆく2」)もおもしろいので興味があったら読んでみてほしいです。
ボーイズラブが好きな方はぜひぜひ!!
●「毎日晴天!」菅野彰(99/2/19)
●「子供は止まらない 毎日晴天!2」菅野彰(99/3/2)
●「子供の言い分 毎日晴天!3」菅野彰(99/6/26)
●「いそがないで。 毎日晴天!4」菅野彰(99/10/28)
6「ヒトラーの防具 上/下」帚木蓬生[新潮文庫]
数年前に「総統の防具」というタイトルでハードカバーで出ていた作品の文庫本化。ハードカバーのときにかなり評判をとっていたので読んでみました。
舞台となるのは、第二次世界大戦前後のベルリン。それを独日混血の武官補佐官・香田光彦の目を通して描かれます。
とにかく筆力のある人で、状況が淡々と描かれているから余計に、国家が少しずつ狂っていく過程がとても痛いです。めちゃめちゃ切ない話。下巻はとにかく泣けます。
ここで描かれてる世界が、60年前に存在していたというのが今となっては信じられないような感じがしますが、今はあの時代の地続きにあって、そして今もあんな暗い思いに憑かれている国が存在しているのも、事実で。色々と考えさせられました。
重い話ですが、とにかくオススメ。ぜひ読んでいただきたい本です。
●「ヒトラーの防具 上」帚木蓬生(99/6/28)
●「ヒトラーの防具 下」帚木蓬生(99/6/30)
7「夜明けのブギーポップ」上遠野浩平[電撃文庫]
この1年でブギーポップもすっかり人気シリーズになっちゃいましたね。2000年は映画化&アニメ化とますます人気に拍車がかかりそうです。
このシリーズってなんだか説明しづらいんですけど、「ブギーポップ」という少女たちの間だけで囁かれてる噂の「死神」が、「世界の敵」と戦っていく話…というと何かが違うような。パズルのような構成とケレン味のあるキャラが魅力のある話です。個人的には、希望と不安が入り交じっていた、10代の頃の気持ち…今でも私の中の柔らかい部分に残っていますが…をストレートに撃つんです。
今回選んだ「夜明けの〜」はブギーポップ誕生秘話で、凪の物語なのがよかったです。あの霧間誠一がでてきますし。シリーズのファンにはとにかく美味しいお話でした。
来年はシリーズじゃない作品も読めるみたいですし、「エンブリオ浸蝕」の続編も2000年早々に読めるし、2000年も楽しみな作家さんです。
●「ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王」上遠野浩平(99/2/9)
●「夜明けのブギーポップ」上遠野浩平(99/5/8)
●「ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師」上遠野浩平(99/8/7)
●「ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸蝕」上遠野浩平(99/12/8)
8「グラスハート5 いくつかの太陽」若木未生[集英社コバルト文庫]
若木未生については、特にファンってわけではないです。今の「オーラバスター」や「イズミ」のシリーズもむちゃくちゃおもしろいとは思わないし。
でもこの「グラスハート」にはヤられました。
このシリーズは、一言でいうとバンドものというか、音楽モノの青春小説。感じとしてはライトノベルズというよりも純文学よりな感じがするけど。
とにかく、傑作です。描写がみごとというか。この本も、最初はうまく世界に入りこめなかったけど、最後は完全にシンクロしちゃって読み終えた後も気持ちがあっちにいっちゃって帰ってこれなくて。
このシリーズの問題は、刊行ペースがあまりに遅いことでしょう……待ち続ける覚悟はありますが、なるべく早くオーヴァークロームの番外編とかも読みたいなあ。
●「グラスハート5 いくつかの太陽」若木未生(99/4/28)
9「球形の季節」恩田陸[新潮文庫]
99年は恩田陸の本を沢山読めて幸せでした。旧作も文庫本化していくし。
恩田陸の魅力はあの文章と、それで綴られる世界のなんともいえない微妙な色合いの美しさでしょうか。
「球形の季節」は以前にもハードカバーのときに借りて読んだことがあったのですが、文庫本化したから手元に置いとくことができますしね。
この話は、北のある町にある、ごく普通の地方高校で広がった、奇妙な噂を巡る話。「すぐ近くに別の世界が隣り合わせに存在している」感覚、人工的に発生した「秩序」、「噂」「おまじない」の使い方、それらが描く世界が、好きなんです。秘密めいた話の展開に比べるとラストが少々弱く感じられますが、まだ「恩田陸」を知らない方は一度手にとってみてほしいものです。
●「球形の季節」恩田陸(99/2/1)
10「バトル・ロワイヤル」高見広春[太田出版]
某賞を落選した作品ですが、口コミで話題になり、ついに「このミス」にも入賞してしまいましたねぇ。ネットでもこの作品が徐々に広がっていく様をみてるのはなかなかにおもしろかったです。
アジアの東に存在する大東亜共和国は、総統によって支配される、ファシズム国家であった。その国で毎年行われる「プログラム63」。それは、任意に中学三年の50クラスを選び、「ゲーム」を行わせる。その「ゲーム」は、隔離された場所で互いに殺し合せ、最後に残った一人のみが勝者となり帰宅することができる。そして、香川県城岩中学3年B組がこのプログラムに選ばれ、デスゲームが開始された……
中学生がクラスメイト同士互いに殺し合うという設定に、「悪趣味だなあ」という感じがしました。サバイバルな状況が容赦なく描かれていますが、生徒ひとりひとりをきちんと描きわけ、それぞれキャラ立ちしているのは見事。ただバックグラウンドのなる部分の描写に力不足を感じたのは確かですが。
話自体は実はストレートな青春モノで、最後とか結構泣かせます。
●「バトル・ロワイアル」高見広春(99/4/22)


その他、おもしろかった本です。こちらは新作・旧作入り乱れています。順番とおもしろさは関係ないですよー。(読んだ日付の逆順なだけです)


●「キル・ゾーン 背信者」須賀しのぶ
●「クリスタルサイレンス」藤崎慎吾
●「岸涯小僧 多々良先生行状記」京極夏彦
●「ブライトライツ・ホーリーランド」古橋秀之
●「天翔けるバカ flying fools」須賀しのぶ
●「木曜組曲」恩田陸
●「魔法の庭3 地上の曲」妹尾ゆふ子
●「新人賞の獲り方おしえます」久美沙織
●「三千世界の鴉を殺し(1)」津守時生
●「李歐」高村薫
●「キスの法則」和泉桂
●「慎治」今野敏
●「ラグナロクEX. BETRAYER」安井健太郎
●「象と耳鳴り」恩田陸
●「君の鳥は歌を歌える」枡野浩一
●「天魔の羅刹兵 一の巻」高瀬彼方
●「凍える島」近藤史恵
●「EDGE〜エッジ〜」とみなが貴和
●「これは王国のかぎ」荻原規子
●「高天原なリアル」霜越かほる
●「きんぴか3 真夜中の喝采」浅田次郎
●「入神」竹本健治
●「盤上の敵」北村薫
●「巷説百物語」京極夏彦
●「月の砂漠をさばさばと」北村薫
●「退団勧告」秋月こお
●「星のパイロット2 彗星狩り」笹本祐一
●「ハサミ男」殊能将之
●「ペリペティアの福音 下〜聖還編」秋山完
●「あぶない竜の選び方」津守時生
●「スカーレット・ウィザード1」茅田砂胡
●「夢の樹が接げたなら」森岡浩之
●「E.G.コンバット3rd」秋山瑞人
●「六の宮の姫君」北村薫
●「クロノス・ジョウンターの伝説」梶尾真治
●「HARD LUCK 5」菅野彰
●「HARD LUCK 4」菅野彰
●「西の善き魔女5 闇の左手」荻原規子
●「屋上の暇人ども」菅野彰
●「明朝快走 金陵城内記」真樹操
●「雷&冥シリーズ 早咲きのMay Rose」尾鮭あさみ
●「キル・ゾーン 虜囚」須賀しのぶ
●「玩具修理者」小林泰三
●「鴉」麻耶雄嵩
●「不安な童話」恩田陸
●「クリムゾンの迷宮」貴志祐介
●「愛がなければやってられない」菅野彰
●「桜闇 建築探偵桜井京介の事件簿」篠田真由美
●「モダン・タイムス3 大江戸、貧乏暇無頭巾」菅野彰
●「慟哭」貫井徳郎
●「風のケアル5 旭光へ翔かける翼」三浦真奈美
●「サミア」須和雪里
●「タブー」須和雪里
●「モダン・タイムス欄外 木蘭の 沙棠の舟」菅野彰
●「モダン・タイムス2」菅野彰
●「眠れない夜の子供」菅野彰
●「蒲田行進曲」つかこうへい
●「真・運命のタロット7 《隠者》は影に」皆川ゆか
●「私が彼を殺した」東野圭吾
●「キル・ゾーン 来たれ、壊滅の夜よ」須賀しのぶ
●「オルガニスト」山之口洋
●「念力密室!」西澤保彦
●「図書館戦隊ビブリオンII」小松由加子


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