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【ヒカルの碁 第171局「存在の証」】 02/11/11


今週のダイジェスト。
・中国リーグ戦翌日、塔矢行洋はシンセンの棋院で韓国のプロ棋士・徐彰元(ソチャンウォン)が話していた。徐は行洋と話すために帰国を1日遅らせた。行洋が韓国の徐の家にいたときには、多くの棋士が押しかけてきて碁ばかりしていてゆっくり話ができなかったからだ。
・行洋は、韓国で町の碁会所に出かけ、置石の賭け碁で真剣勝負をしていたらしい。
・徐は行洋は引退してからかわったのではないかと問い詰める。昨日の中国リーグで行洋と対戦した中国の陳学明八段も、以前に行洋に対局したときと同じように敗北感を味わっていた。
・行洋は引退して以前より強くなったのではないかと言う徐に、引退した今は強さだけが自分のプロとしての証なのだと答える行洋。
・徐は行洋を韓国棋院の客員棋士として働きかけるかわりに、今行洋が何を目標としているのかを訪ねた。行洋はある棋士との再戦の前に力をつけているのだという。
・日本棋院、ヒカルをみかけた古瀬村は北斗杯で韓国に負けてほしくないといい放つ。記事にはできなかったが、古瀬村は高永夏に秀策をバカにされたことを根に持って、それをヒカルに教えたのだ。顔色が変わるヒカル。

行洋先生、日本だけでなく中国でも韓国でもモテモテ!!…だという話かも、今回は。
でも、韓国にいたときには塔矢先生は李先生の家にいたのでは? 徐さんが「ぜひぜひうちにも泊まってください!!」と誘ったのかなあ。本当にモテモテだ…

さて、第168局の感想に書いたことの続き。「表の物語」と「裏の物語」について。
連載再開してからの「ヒカルの碁」では、表立った物語「ヒカル」の裏側でもうひとつの物語「佐為」が進行しています。個人的には、二部の「裏」の話は「佐為が始めた物語」に「ヒカルが終わりを告げる話」なのではないかと思っています。(ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」からの連想。)もっとも、佐為が色々な形で与えた影響は波紋のように静かに影響を与えていって、もう完全には元に戻りませんが。でも佐為と直接対局をすることで影響を与えた人たちと対局をすることでヒカルは何かを乗り越えていっています。
院生〜プロ試験編に比べたら、姿を消し名前すら一度も出てこない今の方が、佐為の物語中での存在感は大きいのではないでしょうか。しかし、その裏の「佐為の物語」は作中では明示されていません。佐為どころかsaiの名前すら一度もでてきていません。でも明示はされてはいないものの、裏の物語はわかりやすく、あからさまに描かれています。少なくともコミックス読者であればわかるでしょう。でもジャンプで流し読みをしていたり、2部以降からジャンプのみで読んでいる読者には裏の物語については意味不明かもしれないと思うのですが。
ジャンプの場合は子供向けで、かつテンポの速さと勢いが求められる週刊誌マンガというメディアの特性もあって、物語の構造やキャラクター配置が比較的単純な物語が多いです。(もちろん、ジョジョやハンターのようなシステムが分かりにくい(でもおもしろい!!)物語もありますが)
小説や昔の少女マンガ、大人向けのマンガではこのような手法は珍しくないですが、「ジャンプ」というメディアで、こういうことが許されるなあ… コミックスではジャンプ読者より大人の読者もターゲットで、売上もいいので大丈夫でしょうが、低年齢の読者はそれを分かって読んでいるのだろうか、というのは少し気になります。でも子供って、案外ちゃんと考える力を持っていたりしますから、大丈夫なのかなあ…

今回の「存在の証」は、プロを引退した塔矢行洋の碁打ちとしての矜持を示すものであるだけではなく、彼…saiのアイデンティティについての話でもあるのではないでしょうか。
佐為と言葉を交わすことができたのはヒカルだけでした。佐為が去った後、佐為が実在した証はヒカルの記憶の中にしか存在しません。(佐為が消えた後、ヒカルが学校の先生に平安時代の「藤原佐為」を調べてもらっていないことを知ったシーンも、それを示すエピソードなのでしょう。)でも、saiはネット上で確かな存在感がありました。普通、顔が見えないネットの向こう側にいる人を「個別の人間」として認識するのは、その相手の人格なり考え方なりを鮮やかに感じることができた時ではないでしょうか。saiはネット上ではどこの掲示板にも書きこみせず、チャットもせず(かろうじてsaiとしてヒカルがzeldaこと和谷くんと短い会話を交わしただけです)、ただその碁の圧倒的な強さゆえに、他の人と明確に違った存在として多くの人たちに認識されたのです。saiの存在を支えているのは、その強さだけ。

で、その行洋先生は、saiには自分が力をつけてから挑戦したいと思っているようです。あの後、名人は碁会所に頻繁に来ているヒカルをみたはずですが、約束をした以上は人前でsaiの話はしないでしょうね。でもいつか、ヒカルにsaiとの対局を申し出るはず。そのときヒカルはどうするんでしょうか… saiが消えてしまった以上、行洋先生の真摯な思いを受けとめるのはヒカルしかいません。でも、今のヒカルではまだまだ佐為のかわりにはなれないし… だとすると連載は作中期間であと2年は続くのかなあ。
佐為が始めた物語に明確にケリがついていないキャラは、後は緒方さんだけです。アキラは今のヒカルをありのままに受け入れることでsaiの謎から離れましたから。
緒方さん、あれ以来ヒカルとsaiの話をしたことはないのでしょうか? もっとも今の緒方さんはジジイの首をとるのに集中しているでしょうが、いずれsaiからみの話もでてくるのでしょうか…

さて、今度は日本棋院での話。やはりあの高永夏の話は記事にはならなかったようです。個人的には合宿中にアキラや社の目の前で秀策の話を聞いてヒカルは顔色を変え、そんなヒカルをみてアキラはかつて自分を振りまわした謎のことを思い出す…展開を希望してたんですけどねぇ。こうやって永夏の秀策をバカにしたとの誤解(?)をヒカルがすることになった以上、その誤解を解くエピソードもでてくるのでしょうが… ヒカルとヨンハの因縁は物語にどう関わるのでしょうか。

それにしても、日本棋院のメガネのお兄さん、今回は出番が多くて嬉しかったです〜。


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