◆　アンケートを終えて雑感


謝辞
まずはじめに。アンケートにご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。やる前は「100くらい回答が集まればいいのに…」と思っていたのですが、まさかこんなに多くの方にご協力いただけるとは思いませんでした。バラエティに富んだご意見を知ることで、私も様々な刺激を得ることができました。
また、集計についてはたかはしさんに大変お世話になりました。rubyを用いた自動化ができてなければ、集計だけで3か月はかかっていたのではないかと思います。本当にありがとうございました。


アンケートをはじめたきっかけ
私のネット歴は、1992年にパソコン通信を始め、1995年にWWWにアクセスし、1996年に個人サイトを持つ…というわりと古い部類に入る方ではないかと思います。最初に作成したのが芸能系ファンサイト、これはその当時のその分野での最大手でしたが色々あって閉鎖、現在は書評サイトをメインに活動しています。
私が始めた当時は「WWWが魅力的なのはハイパーリンクで色々なサイトを繋ぐためであるから、リンクは積極的に行うべき」であるし、「勝手にリンクをするのもされるのも当たり前のこと」という風潮でした。私も当然そう思ってたのですが…いつからか、パソコンが普及し、ネットの敷居が低くなってくる中、少しずつ空気が変わってきたと感じるようになりました。「ネットで公共の場である」という意識の薄い参加者の増加。そして、少しでも批判されたり、リンクを張られただけで過剰に反応するサイトの作成者をみながら、「公共の場にサイトをアップするという覚悟が足りないなあ」と思っていました。ある時期までは。
しかし、リンクをした人に悪意はなくても、場合によってはリンクが「暴力」となってしまうような事例をいくつもみたり、リンクについての様々な考えを読むことで、「自由なリンクを望まない人がいてもいいのではないか」と考えるようになりました。広くアクセスされることを前提としたサイトだけではなく、特定の中の仲のよい人達だけでコミュニケーションをとるようなサイトであってもいいのではないかと。もう今は、「学術ネット」だったあの頃とは何もかも違ってきてるのですから。自由にリンクをしたい人達と、ある程度制限をかけたい人達で棲み分けができたらいいのに。
ですから、私のリンクポリシーは「自分のサイトへは自由にリンクしてもいいけど、人のサイトにリンクをするときには相手のルールにあわせる」です。
でも、他の人はどういう考えなのでしょうか。私の現在のメインジャンルの書評/WEB日記系では勝手にリンクをするのは当たり前という風潮があります。その一方で他のジャンルでは「無断リンクをするのは失礼です」という勢力も少なくありません。それらの考えの人が実際にどう思っているのかを知りたいという気持ちからアンケートを始めました。


結果の感想
とりあえず集計を形にするだけで精一杯だったため、クロス集計まで手がまわりませんでした。ですから定量的には言えないのですが、アンケートが届いたときにひとつひとつの回答を見ながら得た印象について語ります。

リンクについての感覚に、ジャンルやサイトを始めた時期によって大きな違いがあるようです。
古くからのネットユーザーで、テキスト文化圏の人達にとっては、「リンクというのはリファレンスにすぎない」。論文の参照のように、単なるデータへのアクセス手段だと。
わりと最近にネットを始めた方で、ファンサイトや同人系など同ジャンルでのコミュニティが大きな存在を示しているジャンルの人達にとっては、「リンクというのは人と人の繋がりである」と。
もちろん、すべての人がそう感じているというわけではありませんが、傾向としてこういうタイプが多いようです。これはジャンルによってネットでのコミュニケーションのあり方、サイトオーナー同士の気持ちの距離が違ってたりするせいかもしれません。

（2001/6/14追記）このあたりの感覚の違いについては、ありさとさんの6/13の日記に示唆にとんだ記述があります。Webでの活動は「資料（リソース）」あるいは「道具（ツール）」の一種である職人的な人たちと、「作品」だという芸術家的な人たちが いて、前者にとっては資料や道具であるから使われて（リンクされて）ナンボ、後者にとっては「子供」みたいなものだから批判されると人格が傷ついてしまう人たちも一部にはいる。
これに私が付け加えるならば、その人の中の「知識」から作ったものと、「感情」から生まれたもので、作者と作品の距離が違ってくるのではないでしょうか。やはり前者より後者の場合の方が、「できあがったものと自分の人格とを分けて考えられない」人たちの割合が大きくなりそうな気がします。それが「自分のサイト」＝「おうちみたいなもの」という感覚に繋がるのではないでしょうか。
「知識」からできたサイトはリンクについてもドライな感覚に、「感情」から生まれたサイトはリンクについてもウェットな感覚になりやすい傾向があるような気がします。（追記終了）

また、アンケートを行う前は、私のサイトがテキスト文化圏であるために「リンクが自由なのが当たり前だ。リンクは無断で行う」という意見が圧倒的かと予想していました。色んなサイトでそういうことを主張されてるのを読んでいましたから。結果は「リンクはなるべく自由であってほしいけれども、今は昔とは違うから相手のやり方にあわせている」という意見が多数を占めてました。これは私にとって意外なことでした。
あと、皆さんの意見を読むと、相互リンクの押しつけと外したいリンクをどうするかについて悩んでいる方が多いようです。このあたりをもうすこし詳しく調べるような質問も用意したかったです。（せめて、「相互リンクを募集していますか？」という質問だけでも）

リンクへの考えとネット観
リンクについての感覚は、その人のネット観をよく示しているのではないでしょうか。ホームページを「テキストにすぎない」と思ってるドライな感覚の人と、ホームページを「個人の家」だと思っているウェットな感覚の人では、リンクについての考えもおのずと違ってくると思います。
インターネットは広くても、実際にアクセスするのはその人が興味を持つごく一部のジャンルのサイトだけです。そのために、普段よく行くジャンルでのローカルルールが「ネットの常識」としてその人に認識されてしまうこともあるのではないでしょうか。それが正しいとか正しくないとかいうのはおいといて、この「ネットの常識」が人によって違うかもしれないということを分かっていないと、誤解を生んでトラブルに発展してしまう可能性もあると思うのです。自分の正しいと思っていることが、人にとっても正しいこととは限らない。ルールが違うせいでトラブルになった場合は、お互いの摩擦を少なくするように歩み寄るしかないのだと。…そういうことをできるだけ多くの人が知る機会があればいいのですが。実際には、ネットはどんどん広がっているのに、ネット上での行動範囲は狭い人が増えてゆきそうな気がします。

今回は個人サイト同士のリンクについてのみのアンケートでしたが、最近の傾向では企業サイトもリンク許可制をとっているところが増えたような気がします。望ましいアクセスをコントロールして、企業イメージを保ちたいという意向があるのかもしれません。現行法では無断でのリンクはなんら問題となりません。例外として誹謗中傷や脅迫の言葉と共にリンクをしたり、フレーム内リンクもやり方によっては問題となることがあります（トータルニュース社の問題など）。しかし、企業も個人サイトも「アクセスコントロール」をしたいと思う人がこのまま増えてゆけば、何年かあとの「ネットの常識」というのは今とは変わってしまう可能性もあるかと思います。
だからこそ、アンケートによって2001年5月段階での色々な方のご意見を残すことができるのは、意味のあることだと思います。

反省
設問の一部が今にして思えば不適切だったり、説明不足のため真意を伝えることができなかったりと反省することしきりです。
また、予想以上に多くの方に答えて頂けましたが、どうしても「インターネットでホームページを持とう!!」というような雑誌の記事をきっかけに自己紹介や日記のサイトを作った…ような普通の方にはほとんど答えていただけなかったので、そういう方がどんな考えを持っているのかを知ることができなかったのが残念です。やはりネット全体の傾向を知るためには、Yahooのような大きなところでアンケートをしないかぎりは無理なんでしょうね。
どこかでやってくれたらいいのになあ、と思います。

最後に
このアンケートは回答者層に非常に偏りがあるために、結果から一般論に展開するのは難しいですが、それでも様々な考えの方がいる…ということを感じていただければ、アンケートを行ったかいがあるというものです。
長い文章を読んでくださってありがとうございました。