00年7月に読んだ本。   ←00年6月分へ 00年8月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「石の目」乙一[集英社]900円(00/7/28)

「夏と花火と私の死体」で鮮烈なデビューを飾った乙一の新刊。4つの短編が入っています。状況的にはホラーではありますが、暖かく、泣かせるものがあります。情景描写もうまく、「石の目」での乱立する石像のシーンでの美しさが見事で。
なかなかに味わい深い短編集でした。今後も要チェックの作家さんです。


●「マエストロ エミリオ」秋月こお[角川ルビー文庫]533円(00/7/28)

大人気ボーイズラブもの「富士見ニ丁目交響楽団シリーズ」の第4部スタートです。いよいよ留学編。舞台はローマ、観光ガイドとしてもなかなか楽しめました。悠季のバイオリンの新しい師匠のエミリオは豪快で包容力のあるなかなか素敵なオジさまですな。新キャラも登場、今回は結構おもしろかったです。
今回からイラストが西さんから後藤星さんに変更。アクが弱いですが、イメージとしてはそれほどかけ離れてないのでいいんじゃないでしょうか。


●「麦の海に沈む果実」恩田陸[講談社]1800円(00/7/27)

学園幻想ミステリ。いかにも恩田陸らしい作品。文章のイメージの豊かさに酔わされました。

海より帰りて船人は、
再び陸(おか)で時の花びらに沈む。

海より帰りて船人は、
再び宙(そら)で時の花びらを散らす。
湿原に囲まれ、孤立している全寮生の学園。2月の終わりの日、理瀬は転校してきた。そう、ここは3月の国。3月以外にやってくる転入生は、学園を破滅に導くという…
奇妙な楽園か豪奢な牢獄か。生徒たちの謎の失踪。秘密とゲームと噂。死。そして…

ストーリー紹介を読んで「あれ?」って思う方もいるんじゃないでしょうか? そう、恩田陸の出世作「三月は深き紅の淵を」の第4章に出てきた学園モノの別バージョンなんです。…でもこの本、もう3年も前のなんですね。「三月〜」を読んだときの幸福感ははっきりと覚えているのに。そう、この本を読んだときに「この学園ものをちゃんとひとつの話にしてくれないかなあ」と願ったんですが、それが叶えられました。
個人的には、これは恩田陸の最高傑作「光の帝国 常野物語」を越えたのではないかと思います。青いすりガラスで作られた小鳥の置物のような、繊細で色合いの美しい、珠玉のような作品。宝物です、まさしく。1800円だして読むだけの価値は十分にあります。あ、でもこれを読むならできれば「三月は〜」を先に読んだ方がいいけど、話としては独立しているから単独でも大丈夫。ラストだけなら、私は「三月〜」バージョンの方が好きかな。
今、この時代の日本に生まれて、恩田陸の作品をリアルタイムで読める幸せ。

ハードカバーはちょっと…という方は、とりあえず新潮文庫で出てる「球形の季節」から読むことをオススメします。今手に入る文庫の作品では、これが一番恩田陸ティストが濃いから。これで作者と波長が合えば、他の作品もぜひ読んでください。
ちなみに今回の本は「三月〜」と同じくイラストが北見隆さんでブックデザインは京極夏彦さん。ブックカバーを外した中のイラストがこれましたいいんだなあ。


●「子供たちの長い夜 毎日晴天!6」菅野彰[キャラ文庫]629円(00/7/27)

「毎日晴天!」シリーズ最新作。これは東京の下町を舞台にした、帯刀四兄弟+2名の奇妙な同居生活での、ひとつ屋根の下の恋。ボーイズラブもの。
今回は私の一番のお気に入りの勇太と真弓のカップルの話ということなんで発売前からワクワクして待ってました。
収録されている話は二つ。ウオタツこと真弓の幼馴染の達也の話と、勇太×真弓の話。このシリーズって基本路線はコメディなんですが、この話はかなりシリアスで重かった。アダルトチルドレンもの、とラベルを貼ってしまうと何か大きなものを切り捨ててしまったような感じになるし。こういう、どうしようもないやるせない昏い気持ちの描き方が本当にうまい。山下親方と真弓のやりとりが泣ける。勇太の背負っているものは恋だけで乗り越えてゆけるようなものじゃないかもしれないけれども、二人には頑張って乗り越えてもらいたいなあ。しみじみ。
でもなんでこれをボーイズラブでやるんだろう。読者の幅を狭めちゃうからなんかもったいなさ過ぎるよ〜。私は菅野さんは一般ジャンルにでていくべき作家さんだと思うんだけど、ずっとボーイズで書いているというのは男×男じゃないとかけないからなのか、本人にその欲がないのか、それとも……私は単なる1ファンだから、作者の進路についてあれこれ言えるわけはなくて、せいぜいできることは新刊がでたら必ず買うことくらいだけども、あー、もどかしい。
それにしても、ウオタツいいヤツ!! 不憫だし…かわいい彼女を作ってやってほしいものです。下町祭りの描写が生き生きとして楽しそうで。さすがだなあ。
でも帯の煽り文句やあらすじはなんか違うような…これじゃお気楽ボーイズラブものにしかみえないし。それが作戦か。


●「キル・ゾーン 罰」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫]476円(00/7/26)

「キル・ゾーン」シリーズの待望の最新刊。未来世界SFミリタリーアクション陰険漫才ラブロマンス(意味不明)。
物語は終盤。そのためか、今回はまさしく「怒涛の展開」です。あとがきによるとあと二冊で完結だそうですが、これだけ広げた風呂敷をどうやってたたんでくれるか、須賀さんの力量に期待しましょう。でも続きは楽しみだけども読みたくないような…ずっとリアルタイムで楽しんできた物語だけに、終わりが近づくのは寂しすぎますから。
さて、ネタバレ感想→うわー、やっちゃいましたかっ、ユージィン様!! …でもまさか本気じゃないよね?ヴィクトールじゃなくても、あの人が誰かに本気になるのはイヤ、たとえそれがキャッスルでも。マックスにはわかっているというユージィンの「望み」って? 単に「すべてを破壊したい」というようなRPGにありがちな魔王みたいなことにはならないと思いますが……ユージィン様の行動の意味が全然読めないです。完結したら分かるのかしら…
エイゼンがそういうキャラじゃないと分かっていても、キャッスルが誰に心が向いていてもエイゼンがしれっとしているのにはムカムカ。私はどっちかというとラファ×キャッスル派ですが、やっぱりエイゼンにもキャッスルに執着してほしいんですよ。(でも一番愛してるのはユージィン様)
ラファがすごくかわいそう…重苦しい中、今回はシドーとの再開は嬉しいシーンでした。
一番萌えたのは、オヤジーズによる陰険漫才。ユージィン様の誘い受けな感じがたまらんです。
それにしてもあのラスト……無事を祈るだけですが。


●「スレイヤースすぺしゃる15 エイプリルの事件簿」神坂一[富士見ファンタジア文庫]480円(00/7/26)

本編はこの前完結したばかりの「スレイヤーズ」ですが、番外編のコメディ短編集は続くそうで。まあいつものごとくサクサク読めましたが、「リナちゃん・おしゃれ大作戦」は久々におもしろかったです。(そういえば前に1度角川ミニ文庫の方で読んでたけど)


●「女王陛下の薔薇4 咲き匂う花たち」三浦真奈美[中央公論社C☆NOVELS]857円(00/7/25)

「女王陛下の薔薇」シリーズ完結編。ちゃんと終わるのかな?思ったけれども、今回は怒涛の展開。
かつての大英帝国を彷彿とさせる、ブレニム帝国。女性はおとなしく家の中だけで生きていくことが美徳とされていた時代。帝国史上初めて女王のセリシア、そして彼女の親友のエスティが力強く生きていく話。植民地バカンで起こった内乱。それを解決させるためにマシャバ藩主の娘のブランカは奔走していた。一方、コラムニストとして有名になったエスティは植民地省特別顧問としてバカンにでかけてゆくことになったが…
話が始まった頃は硬い蕾のようだった少女たちが咲かせた大輪の花。少女たちの前向きに生きる強さ。話の展開がはやすぎたきらいはあるものの、エスティとブランカの別れ、そしてラストは涙腺にきました。なかなかよかったです。文句をいうならば、もう一冊くらいかけて丁寧にかいてほしかった、というくらいでしょうか。
このシリーズも、「風のケアル」シリーズも、逆境でも強くいてゆく人たちを描いた、良作です。剣も魔法もない、架空歴史モノという感じかな? 派手さはないものの、じっくりと描いていて読んで損はない作品かと。次回作を楽しみにしています。


●「スカーレット・ウィザード3」茅田砂胡[中央公論社C☆NOVELS]857円(00/7/24)

「スカーレット・ウィザード」シリーズ最新刊。パワフル宇宙恋愛小説(?)。お金持ちで強烈に強いスーパーお嬢様の活躍する話ですが、今回はわりと宇宙海賊のダンナ様・ケリーの出番多いかも。ただシリーズ三作目になって、パワーは落ちたような気がする。どんなに常識外れなことか描写されてても、読んでる方は「すごい!!」とは思えなくて。気になるところで終わってるから、とりあえず次に期待。
ダイアナの誕生秘話(?)を描いた番外編がついてますが、SF的な話はちょっと萎えな感じに。この人にはあんまり向いていないような…


●「魔術士オーフェン・無謀編10 なかったことに出来ねえか?」秋田禎信[富士見ファンタジア文庫]480円(00/7/24)

アニメ化もされた人気シリーズ「魔術士オーフェン」のコミカルな短編番外編。ま、いつものごとく意味かあるんだかないんだかという勢いだけの話。あと書き下ろしのプレオーフェンはアザリーとキリランシェロの他、今回は→マジクの母ちゃん登場。でもあのめちゃくちゃな強さは一体。「スレイヤーズ」の「故郷のねーちゃん」みたいなものかしら。金髪碧眼って、貴族の血をひいてるわけ?マジクの瞳の色からしても、母親もドラゴン種族の血が濃く出てるってことかしらん。


●「R.O.D」倉田英之[集英社スーパーダッシュ文庫]495円(00/7/21)

同じ作者の「TRAIN+TRAIN」がどうもイマイチしっくりこないので、この本も最初はパスの予定でしたが、漏れ聞く話では設定のバカっぷりがなかなかいい感じでしたので読んでみることに。
読子・リードマンは大英図書館のエージェントで紙を自在に操り武器とする「ペーパーマスター」、そしてその実態は人並み外れた本好きであった。その彼女が臨時教師として派遣された高校に、現役高校生作家・ねねねがいて…
アニメの脚本やってる人だけに、キャラ設定が話の展開がいかにも「アニメ」ぽい感じになって、「TRAIN+TRAIN」のときはそれが話を薄っぺらいものにしていましたが、今回のようなバカ設定話では、それがうまくプラスに働いているかも。読子ほどにないにしても、私も日本人で(本にかけるお金が)上位7%に入る本好きとして、読子の行動原理に「うん、そうそう!」と共感できる部分が楽しかったです。本屋をまるごと買い占めるって1度やってみたいなあ…
バカ設定とアニメぽい展開が好きで、本が好きな人にはオススメ。


●「「Y」の悲劇」有栖川有栖・篠田真由美・二階堂黎人・法月綸太郎[講談社文庫]533円(00/7/19)

エラリィ・クイーンのかの名作「Yの悲劇」に捧げるオマージュ。書き下ろし短編アンソロジーです。
有栖川有栖は、火村シリーズで。ミステリとしてはなんだかなーって感じです。まあ、元々火村シリーズってミステリとしては…なものが多いですからね。学生アリスの方のはデキ映えがいいんですが。
篠田真由美は、「建築探偵」シリーズの蒼の一人称。京介たちは直接はでてきませんが、蒼が結局どんな名前を名乗ったかがこの話でわかります。そっかー、そっちにしたのか…
で、話としては、ネット恋愛と演劇とをうまく絡めていて、雰囲気よく仕上がってます。作中劇はなかなか興味深い。ミステリとしてはバタバタ急に話をたたみすぎたかなあ。
二階堂黎人は、「奇跡島の不思議」という作品(私は読んでないけど)に出てきた登場人物たちを使った、メタな展開のバカミステリ。あの伏線やらあの伏線は一体なんだったんだろうとは思いますが、こういうバカトリックは好きだなあ。
法月綸太郎は、法月親子モノ。(図書館の方ではないですよ)ミステリとしてのデキはこれが一番よかったかも。そろそろ完全復活も近いですか? 長編はいつになったらでるのかな。
今回出てきた作家のシリーズものが好きだったら買っても損はないかと思います。


●「キノの旅 the Beautiful World」時雨沢恵一[電撃文庫]530円(00/7/18)

ちょっと前の「電撃hp」に載ってた作品を加筆して文庫本化されたもの。この作品自体は、電撃大賞の最終選考作品を元に作成されたそうです。
子供のキノと喋る二輪車のエルメスの二人旅を描いた6つの話。ファンタジー、というよりは少々毒のある童話という趣。エピソードを(おそらくわざと)中途半端で放り出しているために、なんともいえない居心地の悪さが残ります。全体として悪くはないけれども、パンチが足りない。そのあたりが最終選考どまりの作品かなあ、という気はします。
イラストはなかなかよいですね。特に口絵の色合いが絶品。本のデザインは「ブギーポップ」シリーズも手がけている鎌部善彦さんですが、この色調整は鎌部さんの仕事?それともイラストレイターのセンスなのかしら。本文イラストも白と黒のコントラストがいい味わいを出しています。鎌部デザインの好きな人は買いでしょう。


●「防壁」真保裕一[講談社文庫]533円(00/7/17)

SP、海上保安庁特殊救難隊員、陸上自衛隊不発弾処理隊員、消防士など身体を張って安全を守っている「公務員」たちの死と隣り合わせの日々と彼らを取り巻く女性を描いた短編集。
取材がしっかりしてあって、結構読ませる話となっています。
この作者のは、初期の長編とか映画化もされた和製ダイハードの「ホワイトアウト」、偽札作りをさわやかに描いた「奪取」などがオススメです。


●「少年名探偵 虹北恭助の冒険」はやみねかおる[講談社ノベルス]840円(00/7/15)

児童書の青い獲り文庫でほのぼのミステリ夢水清志郎シリーズを書いてる作者の、初の一般向けラインナップ。…だと思ったら話のノリはほとんど同じですね。語り口が易しいので、小学生でも全然大丈夫でしょう。(逆に大人の方は拒否反応を示す人もいるかもしれませんが)
最近はちょっと元気はないけれども、優しさにあふれている虹北商店街を舞台に、古本屋の店番で学校には行ってないものの、知識は高校生以上の少年・恭助がまるで魔法のように商店街で起こる不思議な出来事を解決していく…という話です。
ミステリとしては特筆するほどのトリックではなかったですが、話のほのぼのした雰囲気は好きです。あと、ミステリの楽屋オチが多かったですね。でも元ネタがわかんないものも…うむむ。


●「双色の瞳 ヘルズガルド戦史」霜越かほる[集英社スーパーダッシュ文庫]495円(00/7/14)

バーチャルアイドルをめぐる騒動を愉快に描いた「高天原なリアル」のあと、新作をずっと楽しみにしてたんですよ。1度スーパーファンタジーのラインナップに載ってて発売を楽しみにしてたら結局出なくて…心配してたけど、こうやって読めて嬉しい。
今より未来の世界。人間がばらまき続けた毒の影響のため、完全に健康な人間はほとんど生まれてこないありさまだった。そのため、15を過ぎても毒の影響を受けない子供は「選ばれし子」と呼ばれ、帝都に連れて行かれて支配階級の一員に組み込まれる。デフィは健やかに育った。ただひとつ、右は赤、左は緑と色合いの異なる瞳を除いて。…母親は色のついたレンズをハメさせることでそれを隠し、娘を帝都に送りだした。肉体を偽っていることがバレれば死罪は免れられないのであるが…
未来世紀末的戦史モノ。魔法も超能力もでてこないファンタジー。これ、すごくいいです。世界設定に深みを感じるし、キャラクターもいい。特に、少女たちが手につけた技術や能力を生かして手柄を立てていくあたりが痛快。
まだ話は始まったばかりだけど、今後の展開が楽しみなシリーズとなりました。大バケしそうな予感。はやく続きでないかなー。
大プッシュ、オススメ!!
挿絵は表紙や口絵はともかく、本文が…デザイン的に狙ってやったのかもしれないけど、ちょっとヘナヘナします。普通に書いてほしい。
それにしても、「目からウロコの落ちる話」を文字通りに解釈したなんて、愉快な人だなあ。


●「摩天楼ドール フェザークィーン」谷瑞恵[集英社コバルト文庫]495円(00/7/14)

「摩天楼ドール」の続編。オモチャ箱をひっくり返したような猥雑でエネルギッシュな町・オムルを舞台にしたアクションもの。前作にはさほど満足できなかったんですが、この作者は昔書いた「夜想」がすごくよかったので、一応チェックしておこうかと。
前作よりは話の方向性としてクリアだし、悠ときよらの微妙な関係とか描写は悪くなかったと思うんだけども、世界やキャラクター設定に薄っぺらさを感じてしまうのが…「ありがち話」になってしまっている。潜在能力は結構ある作家さんだと思うので、今の作品がこの程度にとどまっているのが惜しい。
次回作はこのシリーズじゃない方が嬉しいんだけどな。


●「もう一度だけ新人賞の獲り方おしえます」久美沙織[徳間文庫]552円(00/7/12)

小説の書き方講座の「新人賞の獲り方おしえます」の続編の文庫本化。前作がおもしろかったので、即購入。文庫本化にあたって、あとがきと解説が付け加えられてるそうです。
小説講座のわりと基礎的な話についてでした。文章を書く上で大切な言葉の使い方、視点などなど。構成やキャラメイキングについては個人的にはもっとつっこんだ話を読んでみたかったです。
私は小説化を志望しているわけではないけれども、もうすこしまともな文章がかけたらいいなあ、という希望はあります。それにも役に立つかも。できれば、こういう文章指南でWeb日記に的を絞ったようなレクチャーをぜひ読んでみたいけれども、どこかで書いてくれないかなー。
あとがきで、現在の本をめぐる状況の暗さについてグチが入ってましたね。プランニングハウス社のようにいい本を出していてもつぶれちゃうところがあるし…もっと本を日常的な娯楽としてとらえる人の総数が増えない限りは、衰退していく一方なのかもしれません。
あと、英語では人称が省略されないのが当たり前なので、登場人物すべてにはいりこんだ「視点」で描かれることが普通だと聞いて目からウロコ。そっかー、私が翻訳小説の文章がしっくりこないのは、それもあるのかもしれない。それに、アメリカではプロットの段階で出版エージェントが出してくれる出版社を探すようなシステムなんだそうですが、そういう感じだと売れセンの本しか出しにくいように思えるのって勘違い? 日本とは色々と違いそうですね。ちょっと興味がでたので、アメリカの出版事情について詳しいサイトとか探してみようかな。
この「新人賞の〜」のシリーズってあと一冊あるそうですが、それもはやく文庫本化してくれないかな。


●「グイン・サーガ73 地上最大の魔道師」栗本薫[ハヤカワ文庫]540円(00/7/12)

「グイン・サーガ」シリーズ最新刊。表紙はぐらちーとユリウス。引き続きパロでの話です。
まー、パロも色々と大変なことになっております。今回の展開はちょっとだけ意外。でも「姫」連呼はちょっとなあ…作者も別にやおい本を書くのはいいけど、本編のあとがきで宣伝しないでくれよ…「フルハウス」は友達に借りて読んじゃったりしてしまいましたが、ああいうお遊びはもっとこっそりやってくれ。
次も、その次もパロ関係の話ですね。今まで名前だけでてきたアグリッパがやっと登場ですか。
100巻では完結しなさそうなことを作者本人も開き直っていっておりますが、シリーズ最初の頃の密度で話を展開すればいけなくはないんじゃないかな? あと27冊しかないといっても、27巻のタイトルって「光の公女」だよ? ちなみに今から27冊前は…アムネリスと結婚した頃かいっ。それだけしか進んでないのか〜。最近のペースがトロすぎるだけだと思う…


●「三千世界の鴉を殺し(3)」津守時生[新書館ウィングス文庫]590円(00/7/11)

「三千世界の鴉を殺し」シリーズ最新作。お笑い軍隊SFコメディで美形だとか超能力者がわさわさ出てきて、ちょっぴりホモくさい話と説明するとなんだかよくわかりませんが、キャラ立ちが激しく、セリフがテンポよくて楽しいんですよ。今回はやっとルシファードがサラディンの間に進展がっ!!
「喪神の碑」「カワランギ・サーガラ」シリーズの続編世界の話ですが、今回はルシファードの母親の話が………ちょっとそういうのは好みじゃないです。うーむ。
愉快な話ではありますが、ちょっとひっかかったのは、男性ってそんなに自分の性別に執着するもんなんでしょーか。それともオーバーな描写をしてるだけ? この本を読んでる男性で、ご意見があったら教えてほしいものです。(って雫くん指定か?)


●「ラグナロクEX. DIABOLOS」安井健太郎[スニーカー文庫]533円(00/7/5)

格闘ファンタジーシリーズ「ラグナロク」の外伝短編集その2。今回はいかにも外伝なバカ話と、リロイの子供時代の話、本編の裏側…ですがかなり確信に迫る話になってますね。でも本編の記憶がぼんやり状態なので、完全には設定やエピソードが頭の中で繋がらなくて。
書き下ろしはリロイの子供時代編その2ですが、これはなかなか。乾いた感じがいい。あと、少年・ランディのイヤなヤツぶりがちょっとツボ。リュビィールもイカスおやじです。
本編の組織の敵対関係が錯綜していてよくわかんなくなってきてましたが(その原因はラグナロクの一人称のために彼の知らないことは描けないというのもあるんだろうね)、「The Sneaker」の特集でやっと分かった感じ。でもま、作者には「読者は必ずしも作品を読み込んで前にでたエピソードを全部覚えているわけではない」ことを前提の上に話を作ってほしいものです。


●「ネバーランド」恩田陸[集英社]1500円(00/7/4)

恩田陸待望の新刊。ゲット後、我慢できず読み出して、途中で止められなくて一気に読了。今は余韻に浸っているところです。恩田陸はいいよねぇ…
地方の寮のある名門男子校。冬休みに入り、寮生が帰省する中、様々な事情から寮に残った3人と1人の乱入者。クリスマスの夜から7日にわたる4人の生活を綴った作品です。
今回はホラーではないし、ミステリというのもちょっと違う。恩田陸の手による「トーマの心臓」プラス「ここはグリーンウッド」。表紙にあしらわれたミントグリーンのような、少しだけピリリと痛く、そのくせほのぼのした青春物語。
お互い計算しながら距離をとって生活している少年たちが、4人きりで過ごすことで互いに一歩内側に踏み入れてしまって…それぞれ傷を抱えて生きてゆく少年達の孤独と強さと。がらんとした寮のかもし出す雰囲気の描写や、会話とか、いいなあ。この方の文章が好きで好きで、今回も恩田陸ワールドにどっぷりでした。
恩田陸はオススメ作家さんですが、未読の方はとりあえず文庫本で出ている「球形の季節」あたりからの入門がいいかも。個人的に一番好きな作品は、「光の帝国」。泣けます。


●「アース・リバース」三雲岳斗[角川スニーカー文庫]533円(00/7/4)

電撃で「コールド・ゲヘナ」シリーズを書いてたり、この前、日本SF新人賞を受賞した(「M.G.H」…だったよね?タイトル)作者が、さらにスニーカー大賞に応募して特別賞に輝いたのがこの作品。貪欲な作家さんですな。ま、そういう風に積極的に活路を求めていく姿勢は悪くないと思います。特にライトノベルズなんてジャンルとして不安定すぎるから、待ってるだけでは次のステップに進めないだろうし。
さて、内容。灼熱の溶岩に覆われた「炎界」での話。人類はギリギリのバランスの上で要塞都市の中で暮らして、他の要塞都市を諍いを起こしていた。シグは要塞都市を守る人型兵器「デミ・エンジェル」のパイロット。ある日撃墜した敵機から脱出した少女・ティアに惹かれるものを感じ、彼女をかくまうことになる。伝説である「世界の果て」を目指して生まれ故郷を逃げてきた彼女と共に、旅立つことになるが…
設定も色々と考えているようだし(でも途中でネタの見当はついてしまいますが)、手馴れた戦闘シーンの描写とか、悪くはないんですが強烈な魅力に欠けるような。この方でなければ書けないような、持ち味があればいいんだろうけどね。今回の話はキャラがありきたりで、あと話がバタバタしてスケールが小さく感じられたのが残念でした。
決してつまらない話ではないのですが。


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