1 | 「原罪の庭」篠田真由美[講談社ノベルズ] |
建築家探偵・桜井京介シリーズです。 ある御屋敷の温室で、悲惨な状態の数体の死体と共に見つかったのは、その家庭の息子だった。その少年は、心を閉ざし、事件のことを語ろうとはしない。果たして、その事件を起こしたのはその少年なのか? ……すごく「痛い」話でした。痛くて切なくて、読んでる間中祈るような気持ちでした。 最後は泣いたなあ… | |
2 | 「ブルー・ブラッド 復讐編」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫] |
「キル・ゾーン」シリーズの番外編の「ブルー・ブラッド」の二作目です。 火星での話パート2ですね。ユーベルメッシュは、火星の科学力が生み出した超人。巨大な能力があるために精神的に不安定で、それを補う意味で二人一組で生まれてくる。ユーベルメッシュはお互いが半身で、それゆえに互いに執着してしまう。火星の支配階層のブルー・ブラッドの一員で、かつユーベルメッシュのマックスとエーリヒは、軍務大臣ユージィンと情報部長官ヴィクトールの対立に巻き込まれてゆく… ユージィンとヴィクトールの水面下での闘いが素敵です(うっとり)。 悲しくなるほど一途なエーリヒが健気だし(T T;)。 最後の方は、何回読んでも泣けます(T T;)。 続編が1月にでるのが楽しみ。ただ、今度は「上」なんですよね(^ ^;)。「下」はすぐ出るの?まさか「中」はないよね(^ ^;)? 本編の「キル・ゾーン」もおもしろいですが、「ブルー・ブラッド」だけでも話はわかりますので、ぜひ読んでほしいです〜。 | |
3 | 28年目のハーフタイム」金子達仁[文芸春秋] |
最近は中田くんに夢中のあまり、記事が偏ってるぞ…と批判も多い金子さんですが(^ ^;)、この本の頃はまだバランスがとれてます。 ブラジルに勝った、あのオリンピックでのサッカー。あの裏で一体何があったのか、それについて検証した、ノンフィクションです。雑誌「Number」の連載記事を元にした本です。 いやあ、おもしろかったです。文章力があり、ドラマティックに描写しているために、作者の言うことを無条件で受け入れてしまいそうな怖さがあります(^ ^;)。…サッカーを知らなくても、「フィクション」としてもすごく楽しめます。 | |
4 | 「三月は深き紅の淵を」恩田陸[講談社] |
「三月は深き紅の淵を」という本は、作者不明、本の少しの部数しか刷られず、そのわずかに配布された本も、「たったひとりにだけ、たった一晩しか貸してはいけない」という約束があるために、幻の本となってしまっていた。その、幻のような本に関する、4つの短編集です。 物語と現実が溶け合うような、メタミステリとファンタジーの中間のような、不思議な色合いの話です。作中の本『三月は〜』と、実際のこの本の話と微妙にシンクロしているところの、その差違がなんかいいなあ…。 私自身はシンクロ率(笑)が高くて、すごく好きな話ですが、これもダメな人にはつまらないそうで、誰にでも勧められる話ではないけど…でも私は好きです。 | |
5 | 「六人の兇王子 サーリフの宴」荻野目悠樹[集英社コバルト文庫] |
私にとっての、今年一番の煩悩本でした。 邪悪な秘密結社「家」の元でこの世ならざる魔の力を持つ「兇王子」として育てられたギヴァ。彼は人間としての心を保つために、「家」を裏切り逃走する。その彼に、同じ兇王子の追手がかかる…… このシリーズは、兇王子それぞれのぶっとんだ性格がいいんです〜。 あとは、鬼畜な作者様かな(笑)。コバルトなのに、これだけ主人公を痛めつけ、ヒロインはあんな扱い(爆)。先が楽しみなシリーズです。 | |
6 | 「ブラッドジャケット」古橋秀之[電撃文庫] |
「ブラックロッド」の続編。オカルトサイバーパンクです。 積層都市ケイオス・ヘキサンを、吸血鬼の恐怖から救った「ブラッドジャケット」の隊長・アーヴィング・ナイトウォーカーの過去の話です。 前作にもましてパワフルで、濃厚で、読んでてクラクラしました。どっぷりハマりました。 オカルトがすべての生活の基盤となり溶け合った世界、独特の言葉、特異なキャラ、それらの醸し出す強烈なにおいが素敵です。血も、肉も、首も飛び散るような話でありながら、結構リリカルなところもあるし。アーヴィングとミラの「隠れ家」での生活のところとか、青春映画って感じで、ちょっと切なくていいんです〜(T T;)。 私は大満足でしたけど、結構スプラッタな話だし、世界や用語が独特なので一読だけではわかりにくいし、万人に勧められる話ではないんですが…少しでも興味も持ったら、ぜひ読んでください。 同じ作者の、「ソリッドファイター」は格闘ゲームに熱中している少年の話で、すっごくおもしろいです!!こちらは誰にでもオススメです。 | |
7 | 「緑の我が家」小野不由美[講談社ホワイトハート] |
この話は、90年に発行した「グリーンホームの亡霊たち」を加筆訂正したものです。 話は、高校生の男の子がひとり暮らしをするために、「グリーンホーム」に引越ししてくる。そこで、いくつもの不愉快なイタズラ(?)が続いて…という話。 ホラーです。結構、じわじわとくる怖さです。私がひとり暮らしをしているから余計怖かったのかも(^ ^;)。 さすが小野さん、描写が的確で、こっちの脳裏にくっきりと色々なものがみえるんですよ。だから、150ページのところ、私にも「声」が聞こえちゃって、怖かったですよ〜(T T;)。 ラストでは、ちょっと泣いてしまいました。成仏してほしいものです…… | |
8 | 「日輪の遺産」浅田次郎[講談社文庫] |
数年前に出ていた作品の、待望の文庫本化。 ストーリーを簡単に紹介するなら、「帝国陸軍がマッカーサーより強奪し、終戦直前にどこかに隠した、時価200兆円の財宝。それをめぐる話を、当時と現代と両方から描いていく」という感じで、タイトルとあらすじだけでは「謀略小説」か「冒険小説」のように思えるんですが、ちょっと違う、「浅田次郎」らしい小説です。…「勇気」の物語である、という感じでしょうか。 初期の話だけあって、話全体の構成のバランスが少々おかしかったりするけど、そんなの問題に全然ならないです。キャラがね、いいんですよ、本当に。血の通った、というのはこういうことを言うんだろうなあ。口の悪い乱暴な不動産会社の社長も、一見冷たそうなボラティアの福祉員も、強欲な老人も、女学生たちも、マッカーサーも、みんな、「いい」んだよなあ〜〜〜。浅田次郎の小説は、「うまい」や「すごい」というよりは、ひたすら「いい」んですよ。もう、「いい」としか言う言葉しかないです。 これ、出張帰りの新幹線の中で読んでたんですが、そんな環境でもついボロボロ泣いてしまいました(^ ^;)。読んだあとに、胸の中にポッと暖かい灯がつくような、勇気がでてくる、そんな話です。 ちなみに、氏の直木賞受賞作の「鉄道員」はまだ読んでません(^ ^;)。ハードカバーは購入を躊躇しちゃって…早く文庫本化しないかなあ(^ ^;)。まだまだ先の話ですけど(^ ^;)。 | |
9 | 「封印再度」森博嗣[講談社ノベルズ] |
犀川先生のシリーズです。 シリーズでは、私はこれが一番好きです。タイトルが綺麗なのと、謎の形がすごく綺麗でお気に入り。 ああいう、解かれても美しい謎っていうのは…なかなかお目にかかれるものではないですから。 (あれが気に入らない方もいるそうですが、私は一応知ってたからなあ…謎が解かれたあとで初めて「あっ、そっか!!」って思い出したけど(^ ^;)。私も一応理系だから…) これは謎やストーリーそのものよりも、萌絵ちゃんの行動が物議を醸しましたよねぇ。 私はそのときの犀川先生の反応がかわいかったからOKですが(笑)。 | |
10 | 「小説たけまる増刊号」我孫子武丸[集英社] |
実は中身はまだあんまり読んでません(爆)。 この本の心意気が好きなんですよ〜〜〜。 これは、我孫子武丸の短編集ですが、本の構成というか、装丁がおもしろいんです。 「小説すばる」のような、文芸誌スタイルになってるんですよ〜。これがどうおもしろいかは、実物をみてもらえば、すぐにわかるんですけど…特に、目次なんて圧倒です。我孫子武丸の連発だし(笑)。グラビアまでついてます(笑)。裏表紙の広告には爆笑でした。 |