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「初めてのリーディング」
2004年3月12日〜14日(財)せたがや文化財団主催による『劇場と劇作家』という行事がありました。
(本来なら、国が開催するような、”望みの高い”すばらしい催しに出演できた事を、誇りに思います。
☆次回は何時なのかは?ですが、ご参加をお勧めします☆)


“新作を生むために、劇場と劇作家はどのように共働いえるのか”をテーマに、イギ リスとフランスから劇場人と劇作家を招いてリーディングとシンポジュウムが開催さ れたのです。

わたしはフランスのグサヴィエ・ドュランジェ作(藤井慎太郎・石井恵共訳)の『男 たちとの物語』のリーディングを担当しました。


この日のためにわざわざフランスからお出でになる演出家、ミシェル・ディディムさ んに「何だ、日本の中年の俳優ってこんなもンか」なん思われないようにしたい、と まず考えた。

ドラマリーディングは、初めてだったので、全く自信は無いのだが、日本の中年俳優 (老年デハありませんヨ。念のため。ふふふ)の名誉にかけても頑張らなくっちゃ と、気負ってもいた。

たった一回のステージのためなのでスケジュールは、コンパクト。
ミシェルさんとは、舞台稽古も含めてたったの3日、しかお会い出来ないと言う。
しかも、通訳の人を介しての会話。
唯でさえノロマで、不器用なわたしは、稽古の前に随分気を揉みました。

もう、当たって砕ける以外に方法は無くてまっすぐに、ぶつかってみました。
最初のダメ出しは『リーディングと言っても、これは出来るだけ観客に語りかけて』 これがテキストを持って読むのだ、と思っていたわたしにとって大難関でした。

”いまは、痛んでしまっている元娼婦の話”なので、靴・サンダルを、と思いつき
「一部分、ハダシになってもOKですか?」と聞いたら
「どうぞ」の返事。
たった3日しかないのだから、と次の日には何足かのサンダル持参で稽古。
するとミシェルさんは、それらの靴をステージに飾ってくださるし、
「ここは、もっとゆっくり履き替えたほうが美しい」
などのアドバイスを下さった。

どうなる事かと案じていたが、わたしたち二人の心は
”リーディングと云えどもお客さまに、楽しく観て頂きたい”という点で完璧に一致
していたので、思いのほかスムースに進み、嬉しかった。

終演後に『今度はこれを、一人芝居として演りましょう』と抱きしめられた時は
思わず彼の頬にチュをしてしまいました。

この作品は本家のフランスでも(ある俳優さんのために書かれた作品なので)これか ら初演されるという事です。「本邦初演」どころではない光栄に、あずかれた舞台と なりました。


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