05年04月に読んだ本。   ←05年03月分へ 05年05月分へ→ ↑Indexへ ↓高永麻弥へのメール
●「胡蝶の鏡」篠田真由美[講談社ノベルス]950円(05/04/15) →【Amazon】

建築探偵・桜井京介シリーズの第三部開始、です。
突然、健康的な生活をはじめた京介に戸惑う深春。その二人の元に京都のある女性から招待が届いた。彼女はかつて二人の手助けで、親の反対を押し切ってベトナム男性の元に嫁ぎ、息子も授かったが、最近は夫との中がうまくいっていないという。やがて彼女はベトナムに帰国したが、息子を残して失踪し…
失われた美しい夢の残り香のような、物語でした。「謎」のスケールは小さいものの、近代ベトナムの悲劇という、大きな歴史で細やかに美しく彩られた「崩壊した家族の再生」の物語となっていて、満足しました。
やはり篠田さんは上流家庭の雰囲気の描き方がうまいです。最近の篠田さんの作品は、私の好きだった頃の作品とは違ってきているようで寂しかったのですが、こういう作品がまだ描けるようなのでほっとしました。
それにしても、京介の変化は一体何に基づくものなのか… 彼がどうかわってゆくのか、心配です。いい方向にいけばいいのですが。


●「時限絶命マンション」矢野龍王[講談社ノベルス]950円(05/04/12) →【Amazon】

第30回メフィスト賞受賞作の「極限推理コロシアム」の、ある意味続編。今回も理由なき殺人ゲームが繰り広げられます。
今回の舞台は都会の中のマンション。各部屋ごとにチームを組み、6時間ごとにリミットをむかえる「悪魔人形」を互いに押し付けあうゲーム。リミットを迎えるときに、その時間に該当する悪魔人形が自分の部屋にあると、首に取り付けられた爆弾が破裂する。一番最後まで生き残った人たちには賞金1千万円が与えられるが、それには自分達以外の他のマンション住人を蹴落とさなければいけない…
感想を一言でいえば、「兄ちゃん、はりきりすぎ。」です。前回はまだギリギリの線で留まっていましたが、今回はあまりのリアリティのなさがひっかかりました。アイデアに引きずられ、それを展開に生かしきれていない感じ。
以下、微妙にネタバレ→っていうか、そんなあらかさまに死体があったら、いくら中の人に拒否されたところで警察突入するでしょう… その段階でおかしいと思うべきなんだけどなあ。
もうちょっと、部外者を拒否していてもおかしく思われない環境設定をした方がよかったのかも。


●「ブギーポップ・バウンディング ロスト・メビウス」上遠野浩平[電撃文庫]570円(05/04/11) →【Amazon】

「ブギーポップ・スタッカート ジンクス・ショップへようこそ」以来2年ぶりの、ブギーポップシリーズ最新刊。
極めて個人的な理由でブギーポップに復讐を誓っている合成人間の葵衣秋良は、ブギーポップの情報を持っている可能性がある織機綺をひそかに観察するために、彼女と同じ調理師専門学校に入学していた。ある時、調理師学校の課題のため、綺と秋良はとある港に赴いたが、そのルートには「牙の痕」と呼ばれる不思議な場所があって…
今回のはするっと読み終わって、後に残らない感じでした。本筋である、次期《中枢》選びも色々と仄めかされてはいましたが、もう一つ先が読めない状況の中、ぐるぐる回っているようで。雑誌「活字倶楽部」の上遠野浩平インタビューによると、ブギーポップシリーズ自体はまだまだ先の構想があるようですから、今後を気長に待つことにします。
それにしても、結構熱心なファンである私でも、これだけシリーズ刊行の間があくと、出てきた固有名詞に「??」となってしまうので、それほどファンじゃない読者にはかなり辛い状況になってそうですねぇ… ただでさえ時間軸と人間関係がややこしいシリーズだけに。
以下、個人的なメモ(ネタバレ。)→みなもと雫がこちらでも登場。
「ハリウッド」は柊、オシキジェンのこと。彼もすでに「死んでいる」わけですか?
凪のオジさんは《中枢》候補だったようですが、本人の主観の時間感覚と客観的な時間軸があきらかに違うのはどういうことなのでしょうか。それにしても、凪は父親はパブリックエネミーNo.1で、母親の家系には《中枢》候補が…と、すごい血筋ですね。彼女自身もMPLSになる寸前でしたし。
あと、残りふたつの「牙の痕」のうちの一つはペーパーカットなのでしょうか。


●「人形の爪 眠る探偵I」榎田尤利[講談社X文庫ホワイトハート]580円(05/04/05) →【Amazon】

他人の夢を見てしまうという特異体質の美貌の探偵・真音は、その体質ゆえになかなか社会に適応できなかったが、異父弟の隆と、真音の娘・笑子の二人が探偵を支えていた。彼らは、母親に人形扱いされている弟を心配した女子高校生の依頼を受けて調査を始めたが、調査先で強盗殺人が起こり…
最初は「通常小説モード」で読んでたらあまりに辛かったので、すぐに頭を「ボーイズラブモード」に変更。超絶美形で社会不適合者の探偵とか、彼に執着する「影」とか、骨組み部分だけ取り出すとかなりの厨設定なので、魚住くんシリーズが好きで榎田さんの作品だから読もうする一般読者には辛い作品かも。ボーイズラブとしては、厨設定こそ萌えな部分もあるので、悪いことではありませんが、私はこのタイプの受はあんまり好みじゃないのが辛いなあ…
ただ、話の続きは気になるので、続編は読む予定。


●「甘美なる夜に咲く花 歓楽の都」駒崎優[角川ビーンズ文庫]457円(05/04/03) →【Amazon】

「譚詩曲の流れゆく 歓楽の都」に続く、シリーズ三作目。
19世紀末ロンドン。その一画にある自治区・レーンは"歓楽の都"。そこでは美貌だけではなく教養もある「宝石」と呼ばれる少年・少女たちが春をひさいでいた。レーンのトップクラスの宝石の一人の少年・ショウが思いを寄せている医師・レイは、インドから戻ってきた幼馴染の女性・ヴァイオレットと度々会うようになっていた。そんなレイに心を痛めるショウ。その頃、イギリスの機密書類が盗まれる事件が起こり…
私はこのシリーズのまったり感が好きなのですが、今回はレイとショウの間に色々とあったために、ボーイズラブ度が高くなった分、まったり度は少々減ったかも。それにしても、アリーナも立派な宝石の一員になっちゃったのねぇ…それは不幸なことではないのかもしれませんが、(フィクションとはいえ)少々胸が痛みます。


●「マリア様がみてる 妹オーディション」今野緒雪[集英社コバルト文庫]438円(05/04/01) →【Amazon】

「マリア様がみてる」シリーズ最新作。
江利子さまとの約束の期限が近づいても、妹のあてがない由乃が、なんと妹をオーディションで選びだすと言い出した。結局それは修正され、姉妹の出会いの場を求める人たちのお茶会となったが、まだ妹のいない祐巳も参加させられることになって…
今回のでしばらく足踏みしていた話が進んだ感じです。なんだかんだで由乃さんに出会いがあったようなのはよかったですが、由乃さんってあまり人気ないのね… まあ、あの性格だからなあ…
瞳子ちゃんと祐巳ちゃんの間でフラグが立ったようですが、あとはふたりが自分の気持ちに素直になるだけ…といってもそのハードルは高そうで。時期的にはそろそろ生徒会選挙でしょうか。
それにしても、→次世代のつぼみたちが乃梨子・瞳子・菜々になるのであれば、かなり強力というか、物事をガシガシ進めることができそうなトリオですねぇ。薔薇様たちを圧倒しそうな勢いがあるかも。


HOMEへ