04年11月に読んだ本。   ←04年10月分へ 04年12月分へ→ ↑Indexへ ↓高永麻弥へのメール
●「フルメタル・パニック! つづくオン・マイ・オウン」賀東招二[富士見ファンタジア文庫]520円(04/11/30) →【bk1】【Amazon】

1年半ぶりの「フルメタル・パニック!」の長編新作。
かろうじて成立していた、居心地のよいかった世界が、《アマルガム》が《ミスリル》を叩き潰すために本気になったために、すべて壊されてしまいました。辛い展開だけど、でも、これで終わるような人たちではないから。
今回のテッサ、カッコよかったなあ… あと、最後の宗介の誓い、強い意志が伝わってきて素敵でした。
すべてが瓦解してしまった状態で、宗介はどうやって戦うのか。続きが早く読みたいです。次は早めに出てくれるといいのですが。あと、長編がこういう展開に突入しちゃうと、もうヌルい学園コメディー的な短篇は書かれることないのかな?と心配になりますが…


●「空ノ鐘の響く惑星で 5」渡瀬草一郎[電撃文庫]570円(04/11/08) →【bk1】【Amazon】

SF要素のある、歴史群像的なファンタジーシリーズ「空ノ鐘の響く惑星で」シリーズ最新作。
内乱は早期に終結し、新政府も徐々に形を成してきたアルセイフ。しかし隣国・タートムは肥沃なアルセイフを虎視眈々と狙い、ウィータ神殿も不穏な動きをみせている。ウィータ神殿の不穏な動きを知ったウルクは…
リセリナは自分の気持ちを自覚して、ウルクがああいうことになって、ラブバトル(?)が混迷化しています。私はどっちかというとウルク派ですが、→ウルクは愛の力で(?)記憶が戻るよりも、記憶は戻らないけれどももう一度恋をする、というパターンも捨てがたいかなあ、と。そちらの方がロマンス度高いですし。


●「女子大生会計士の事件簿4」山田真哉[英治出版]998円(04/11/08) →【bk1】【Amazon】

ビジネスジャンプで連載中のマンガの原作本「女子大生会計士の事件簿」のシリーズ4冊目です。
役美人女子大生であり、敏腕公認会計士の萌実を主人公にした、会計監査にまつわる事件を集めた短編集。
上場企業の粉飾決算が発覚、それに関連して監査法人にも責任が問われ、公認会計士が逮捕されるような事件も起こっています。今がこういう状況ですから、物語の中でも萌実が監査法人のあり方の問題に直面することになりますが、その終わり方が少々甘いのは残念。でも「軽いビジネス書」というジャンルだから仕方ないのでしょうね… それでも「正しくあるべき」という意志を感じさせてくれる、この作品の方向性は素敵だなと思います。
軽い会話で進むこともあって、「小説」を読みたい人には辛いシリーズかもしれませんが、楽しめるビジネス書として読めるのならオススメです。
それにしても、今回妙にラブ度が高かったのには少々驚きました。なんとなくこのシリーズって、そういう話に発展しないと思っていたので… でも2人の関係が進展したらシリーズの間が持たなそうだから、煮え切らない感じのまま続くのでしょうか。


●「流血女神伝 暗き神の鎖(後編)」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫]571円(04/11/02) →【bk1】【Amazon】

神々の息吹が感じられる世界での、架空歴史活劇・異世界ファンタジーシリーズ「流血女神伝」最新作。
我が子を助けるために、危険を承知でザカールの村に出向いたカリエ。次のクナムの花嫁となる定めの「女神の娘」カリエを待ち受けていたのは、底知れぬ精神的な責め苦だった…
大満足。
今回は重く辛い話でしたが、その辛さから逃げることなく正面から戦いぬく姿を描ききった須賀さんに拍手をしたい気持ちです。
欲を言えば、あまりにサクサク話が進みすぎたので、「行間」部分にもっとじっくりとみたかったシーンがあったのに、描かれていないことが残念だったりします。(ソードとエドの対決とか、イーダルと愉快な仲間達の珍道中記とか。)でもこれはレーベルゆえの限界とか色々とありそうですから、須賀さんを責めるわけにはいかないし…
次が最終章だそうですが、刊行は夏まで待たなきゃのは残念。個人的には長くじっくりと描いてくれる方が嬉しいのですが、物語の続きを楽しみに待つことにします。
「流血女神伝」の世界は、科学技術の発達による合理的精神の芽生えがある一方で、残酷で気まぐれな神様が本当に存在している世界です。「人」は「神」に恋焦がれる一方で、「人」は「神」に与えられた運命に必死であがいている、そういう物語。ジェットコースターのように激しく展開する物語に一喜一憂するだけでなく、見事に作りこまれた「世界観」に酔うこともできる、一級のエンターティメントです。オススメシリーズ。方向性は違いますが、「十二国記」シリーズが好きな人は楽しめるのではないでしょうか。
読むのであれば出版順に、「帝国の娘」から。
◇アマゾンのページへのリンク
 本編 帝国の娘:前編 / 後編
 本編 砂の覇王:1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9
 番外編 天気晴朗なれど波高し。:1 / 2
 外伝 女神の花嫁:前編 / 中編 / 後編
 本編 暗き神の鎖:前編 / 中編 / 後編
◇私の過去の感想へのリンク
 本編 帝国の娘:前編 / 後編
 本編 砂の覇王:1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9
 番外編 天気晴朗なれど波高し。:1 2
 外伝 女神の花嫁:前編 / 中編 / 後編
 本編 暗き神の鎖:前編 / 中編
ネタバレ感想→まずはキャラ萌えな話から。私は「カリエ争奪戦の最終勝者はエドに違いない!!」派なので、今回の話は読んでて勝利の雄たけびをあげたい気持ちになりました。エド、よくやった!! カッコよかった、今回は。もっともエドも自分の気持ちが恋愛感情とは思っていないし、カリエのエドに対する気持ちも家族愛に近いもののようですが… 個人的にはあの2人は熱烈恋愛関係にならなくても、最後まで寄り添っていてくれればそれでいいので。
ミュカのドーン兄上への説教は「よくやった」という感じです。でもこれで兄上がちゃんとわかって、悲劇を回避できるとも思えないし… カリエの見た白昼夢が実現しないことを祈りつつ。
サルベーンは悪に徹しきれないヘタレっぷりが個人的にはもうひとつでしたが、今回の己の卑小さを自覚しつつ、自分の意志でラクリゼを守るための行動をした彼には胸を打たれました。ラクリゼのためにも、このまま2人が和解できたらいいのですが… 過去の傷の深さを考えると、そう簡単にはいかないでしょうねぇ…
あとは大切な部分がかわらずにいるナイヤに涙、でした。彼女だけはせめてあのままでいてほしいです。
今回の暗い話での安らぎだった、イーダルの活躍にも拍手。彼は何も考えてなさそうで、それでいて底が深そうなキャラですが、次のユリ・スカナ編では大活躍でしょうから楽しみにしています。

前作の感想で書いた、「女神は分りきった選択を強いながら、別の選択をされることを望んでいるように見えた」というのは当たりだったのかも。女神としては、自分が復活し、自分の望むように世界を作り変えたいと思っている一方で、人間の手で葬られて安らかな忘却の彼方へ押し出されることを望んでいるようにも見えます。
物語の流れとしては、神の物語→神と人の物語→人の物語になるのでしょうか。
このあと物語の舞台はユリ・スカナに移り、カリエは歴史の表舞台からは姿を消すことになりそうですが… カリエの意志で女神の復活は押し留められたものの、「世界の王」となる千人目のクナムを身ごもったカリエをザカリアが放っておくとも思えません。それにタイアスの闇の部分がバルアンにつながってしまって、その気持ちがルトヴィア攻略に向いてしまうように見えますし…
ただ、「天気晴朗なれど波高し。」の記述からすると、ルトヴィアは大混乱になるものの、致命的なダメージを受けるわけではないようなのが、救いではあります。続きを読むのが楽しみな一方で、怖い気持ちもあったり。
あと、個人的に気になる、残る「謎」について。
・なぜラクリゼは「女神の花嫁」なのか
・トルハーンの契約の代償は?→ギアス?
・ミュカの契約の代償は?→カリエと結ばれないことかと思ってましたが、ドーン兄上になりそうな予感。

歴史には「賢君」と記されているアフレイムですが、この状況からするとその裏には多くの苦しみがあったのではないかと思います。自分を捨てた(?)母親、死の王となった父親。せめてナイヤがカリエがアフレイムを大切に思っていたこと、それを伝えてくれれば… 昔、「活字倶楽部」に掲載された須賀さんのインタビューからすると、アフレイムが大きくなる頃まで物語が描かれることはなさそうですが、数行でもいいから、そのあたりを本編で補足してくれたらいいのに。


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