99年1月に読んだ本。

●「怨念の彼方 霊感探偵の事件ファイル」秋月こお[角川ルビー文庫](99/1/30)

ボーイズラブで、霊退治モノのコメディです。なぜか悪霊退治ができてしまうタフな探偵と、何にでも取りつかれてしまう霊媒体質の助手とのお話。
霊退治モノのとしては水準程度ではあるし、そこそこ楽しめる作品ではありました。


●「見仏記2 仏友編」いとうせいこう・みうらじゅん[角川文庫](99/1/29)

「見仏記」の続編。やっと文庫本化です。
前作と同じく、作家のいとうせいこうさんと漫画家のみうらじゅんさんがいろんな仏像を見に行って、無邪気に楽しむ旅行記であり、見仏記です。前作よりもいとうさんがみうらさんに感化されたというか、理屈っぽかったのがもっと柔軟に楽しむようになって、ほんわかした雰囲気になっててよかったです。
それにしても、男二人旅が「ホモ」だと誤解されがちというのをやけに気にしてましたが、たしかに男の二人旅っていうのは難しいものかもしれないですねぇ。でも、今回の手作りのおにぎりのエピソードとか、お揃いに見えるリュックとか、その他のエピソードにしても…………仲良きことは美しき哉。としておこう(^ ^;)。
「海外編」もはやく文庫本化してくれないかなあ。


●「トンデモ本1999 このベストセラーがトンデモない!!」と学会[光文社](99/1/28)

今回は、かなりの量の本の紹介に割いてます。元々、「週刊宝石」で連載してたものをまとめたもの+書き下ろしだそうで。
「と学会」関係の本は色々と読んでますが、今回のはイマイチ笑えないというか。批判が先だって、お笑い部分がパワーダウンしているような。
ちなみに、最初の「トンデモ本の世界」が文庫本化してますが、こっちはかなりおもしろいですよー。


●「蒲生邸事件」宮部みゆき[カッパ・ノベルズ](99/1/27)

1996年の10月にハードカバーで刊行され、日本SF大賞も受賞した作品の、ノベルズ化です。
浪人生の孝史は、ホテルの火災に巻き込まれ、命を落としそうになった時、時間旅行の力を持つ、不気味な男に助けられ、昭和11年2月26日の「2.26事件」発生中の東京にタイムスリップした。辿りついた蒲生邸では、館の主人が密室の中で亡くなっていた……
…とりあえず、「理由」での直木賞受賞おめでとうございます。
さて、この本ですが、出た当時から評判は聞いてたんですが、ハードカバーは買いにくくて、読まないままでいました。ノベルズ化されて読むことができて嬉しいです。
帯や裏表紙の紹介文とかを読んで抱いていた印象とはかなり違った話でした。ミステリーといえばミステリだけど、それよりも別の部分に力点があったし、「2.26事件」とのカラミにしても、当事者としてど真ん中に巻き込まれるような話になるかと勝手に思ってたので、拍子抜けでした。
正直いうと、前半部分はタルかったです。でも後半にはぐいぐい引き込まれて、読む速度に加速がつきました。最後の方とかほろりときました。生き抜くことの大切さと勇気。平田やふき、貴之それぞれの選び取った生き方は胸に迫るものがありました。
読んで損はない本だと思います。
ちなみに宮部みゆきは「ハズレ」のない作家ですので、どの作品もいいですよ。興味があるけど読んだことのない方は、短編集から読んでみたらどうでしょう。個人的に一番お気に入りの作品は「龍は眠る」で、次点が「火車」です。でもなんで「火車」のときに直木賞を受賞できなかったのかなあ。それだけの力があった作品だったのに。


●「魔術士オーフェン無謀編7 一生ひとりで遊んでろ!」秋田禎信[富士見ファンタジア文庫](99/1/22)

現在アニメ放映中、でも関西は土曜深夜なんだよね……のオーフェンシリーズの番外編の方です。まあ、いつものノリで楽しかったということで。
さてさて、書き下ろしのプレオーフェンは、キリランシェロとアザリーの話。ラストが結構しんみりとくる話でした。これのキリランシェロがかわいいなあ(はぁと)。


●「さらば愛しき大久保町」田中哲弥[電撃文庫](99/1/20)

「大久保町シリーズ」の第3弾。
兵庫県明石市大久保町に、なぜか某国の王女がやってきた。ところが王女は誘拐されてしまった。芳裕は偶然王女を助け出して、トラブルに巻き込まれることに…
今回はシリーズの中で一番普通の設定なんで(それでも十分変だけど)、その分展開の妙さがいい味だしてるというか。シリーズ三作の中では、一番おもしろかったです。


●「グイン・サーガ63 時の潮」栗本薫[ハヤカワ文庫](99/1/18)

グインの新刊、たしか12月に出る予定だったやつですよね?ここしばらくは順調にでてたのに、珍しく遅れたんだなあ。
表紙はアルゴス黒太子・スカールさんです!!本編に久々に登場。ここしばらく根暗だったりお腹の中が真っ黒なキャラばかりの話だっただけに、久しぶりに明るさを感じたというか。…にしても、グラチー。…何を企んでるんだか。
リギアさんも久しぶりに登場したのが嬉しかったです。それにしても、これほどの人がヴァレリウスにねぇ…意外でした。
次はついに「ゴーラの僭王」です。やっとここまできたんですねぇ。で、あと37冊しか(!!)ないんですけど、本当にちゃんと完結するんでしょうか(^ ^;)?
で、もっと心配なのは、グインは70冊までに本編に復帰するか、ってことだなあ……はやく帰ってきてくれないかしら。
次は2月上旬って、もうすぐじゃないですか(^ ^;)。


●「オルガニスト」山之口洋[新潮社](99/1/17)

第十回日本ファンタジーノベルズ大賞受賞作。
ブエノスアイエスに突然出現した、天才オルガニストのライニヒ。彼の演奏を聞いたバイオリニストのテオは、9年前に演奏家生命を断たれるような重傷を負ったまま疾走したオルガニストのヨーゼフを思い出した。テオはヨーゼフが奇跡的に蘇った姿なのか?…とかいうような話です。
ただ、中盤になるとがらりと様相をかえ、序盤で予想していたストーリーとは全然違った展開になります。そして、壮絶なラスト。…切なかったなあ。
私自身は、ヨーゼフの方に共鳴してしまったというか。私はあんな天才とは全然違うし、そこまでひとつのものを求めてしまうような純粋な情熱も持っていません。持ってないからこそ、憧れる気持ちがあって…
本物のオルガンの音を聞いてみたくなりました。オススメの本です。


●「謎ジパング 誰も知らない日本史」明石散人[講談社文庫](99/1/16)

歴史ミステリエッセイ、という感じでしょうか。邪馬台国の謎、桃太郎の正体、おにぎりはなぜ三角か…などについて、大胆な仮説を提示しそれを論証していくエッセイです。こういう書き方すると胡散臭い、「●●の謎100」とかいうような本のように思えるかもしれませんが、作者の膨大な知識と着眼的のおもしろさなどがそれらの作品と明確に違っています。
明石散人は知る人ぞ知るという方で、あの京極夏彦氏が師と仰ぐ人で、京極作品にも「築地の先生」として京極堂の師匠として登場しているほどの方です。でたばかりの「IN POCKET」ではじめて明石氏の顔をみたんですが、思ったよりも若い人でびっくり。勝手に、70くらいの先生かと思ってましたから。
私自身は歴史ミステリは結構好きで、一時期かなり読んでました。歴史ミステリのおもしろさというのは、歴史は「確定した事実」ではなく、「文献」などの証拠となるカードの繰り方と並べ方によって、思いもかけないような鮮やかな絵が現れてくる、そういう過去の不確定性を感じさせてくれることなんじゃないかなあ、と思うんです。明石氏は、そのカードの抽出の仕方と、並べ方が非常にうまい人。
歴史ミステリは「論文」ではないから、事実にこだわる必要がないと私は思っています。ただ、気持ち良く騙してくれれば。ただ、このジャンルも名手はそれほど多くなくて、「下手な手品」をみてしまったような、後味の悪さが残ることが多くなったんでちょっと離れていたんですが……やっぱりいいなあ、こういうのは。
ちなみに解説はあのタニグチリウイチさんが書いています。とてもいい解説なので、本を買う前に購入の参考にするのに最適ではないかと。
…それにしても、「ジェームス・ディーンの向こうに日本がみえる」、いつの間に文庫本化してたんだ(^ ^;)。あわてて探し回ったけど、みつからないぞ…


●「6月の軌跡 '98フランスW杯日本代表39人全証言」増島みどり[文芸春秋](99/1/16)

やっと、手に入れることができました。…この本をどれだけ探したことか。
1998年6月、フランスで何が起こったか。それらをスポーツライターの増島みどりさんが数多くの日本代表選手のインタビューを通して再構築してくれる、力作です。
この本のなんといってもすごいところは、サブも含めた、日本代表選手…カズのみはインタビューを断わったそうですが…さらに、監督、コーチからコックに至るまでのスタッフ全員のインタビューを行ったことです。W杯後、メディアに対して口が重くなってしまった選手も少なからずいて、W杯のことをどのメディアに対しても全然語ってない選手もいました。そういう方の話も含めての、現場サイドからの貴重な話をたっぷり読むことができます。
当事者の言うことが、必ずしも客観的な事実とイコールで結ばれているものではないでしょう。でも、選手たちがピッチの上でなにを感じていたか、それらのことを感じることはできます。
スリーバックへの変更、25人から22人になったこと、クロアチア戦で中田から山口へのパスがカットされたのはなぜか………様々な形で報道されていたことが、当事者にとっては全然違うものであったことがよくわかりました。
あと、サッカーは組織的なスポーツなんだなあ、という当たり前のことが本当に実感できました。
印象に残ったのが、一か月にも及ぶ合宿が「静かに過ぎていった」と何人かの選手が語っていることかもしれません。日本で受ける印象と、それだけ「体温の違い」があったんでしょうね。
この本を読みながら、色々なことを思い出していました。
「結果がすべて」だけではなくて、ちゃんと残ったものもあるんだなあ、と……
これは、1998年の6月をじりじりとした思いで過ごしていた、すべての人に読んでほしい本です。
これだけすばらしい本なのに、発行部数が少ないから、今の段階では全然手に入らないけどねー(^ ^;)。部数を完全に読み間違えるのは、やはり編集部のミスでしょう。もっと売れる本なんだから、たくさん刷って、ガンガン宣伝するべきだったのでは?…って、自分が初版がでた頃(12月中旬)に全く手に入らなかったから、文句がいいたくなるんですよ。それにしても、初版はどれくらい刷ったんだろう、これ。
購入を迷っている人は、糸井重里さんのページの、糸井さんと増島さんの対談を読んでみてください。


●「プレゼント」若竹七海[中公文庫](99/1/14)

96年にハードカバーで出てた本の文庫本化です。
ミステリの連作短編が8本入っています。「プレゼント」というタイトルや、表紙のイラストからなんとなくほのぼのした作品かと思ってたんですが、結構ドロっとした作品でした。ミステリとしては小技が聞いていて、なかなか楽しめました。


●「烈光の女神3 ハイスクール・オーラバスター」若木未生[集英社コバルト文庫](99/1/13)

「ハイスクール・オーラバスター」の新刊です。今回は壊れてる人たちや、キレてる人たちばかりでちょっとすごかったですね。
十九郎のキレっぷりは強烈でした。あと、冴子さん、強かったですね。次巻で「烈光の女神」は終わるそうですが、それなりにカタが着くのかな?


●「大久保町は燃えているか」田中哲弥[電撃文庫](99/1/12)

「大久保町シリーズ」の第二弾。といっても、前作とは直接のつながりはありません。
兵庫県明石市にある大久保町はナチスの占領下にあった。ひょんなことで大久保町に迷いこんだ幸平はナチス兵士に捕まってしまう。そこをレジスタンスのメンバーに助け出されたが……というハード(?)な設定ではありますが、話そのもののマヌケ度は前作よりも上じゃないかと。後半の妙な展開とか、楽しかったです。


●「地球儀のスライス」森博嗣[講談社ノベルズ](99/1/10)

短編集です。「まどろみ消去」に雰囲気が似てますね。
犀川&萌絵シリーズの番外編は二つ入ってますが、嬉しいことに両方とも喜多先生登場してます(*^ ^*)。…それにしても、海外でも相変らずなんですね、喜多先生(笑)。片方には桃子さんもでてるのが嬉しいですねー。
帯に書いてあるような、「犀川・萌絵。ふたりのその後。」というほどのものはなにもなく、いつものような感じでした。話はまあまあおもしろかったです。
新シリーズのキャラクターって、9本目の話がそうかな?それ以外は続きそうにないし(^ ^;)。


●「念力密室!」西澤保彦[講談社ノベルズ](99/1/9)

「幻惑密室」「実況中死」などでお馴染みのチョーモンイン(超能力問題秘密対策委員会)シリーズの、待望の短編集です。
このシリーズは、ミステリの中に超能力が絡んできて、それを「論理的に」解決するというもの。
キャラ設定がマンガ的ではありますが、嗣子ちゃんがかわいいんですよー。いやあ、今回もかあいい。
さて、今回は6つの話が入ってまして、5つまでは雑誌「メフィスト」に掲載済みのものです。私は4つまでは読んでました。ひとつは…メフィストを買ったんですけど、「鳴釜」以外は読んでなかったの(^ ^;)
このシリーズは長編よりも短編の方がデキがいいのではないかと思うんですが、話を知ってるものであっても、読んでておもしろかったです。あの3人の出会いの話も載ってますし、このシリーズ未読の方はこの短編集からはじめてもいいんじゃないかなあ?
さて、今回は……最後の話、あれはどうとればいいんでしょうか(^ ^;)???夢?それとも予知夢???
個人的には、ただの夢であってほしいです。このシリーズでそういうのは……


●「大久保町の決闘」田中哲弥[電撃文庫](99/1/9)

一部では評判になってた、「大久保町」シリーズの一作目です。
兵庫県明石市にある大久保町はガンマンの町だった。受験勉強に集中するために、大久保町のある祖母の家にやってきた光則は、なぜか凄腕のガンマンと勘違いされ、町の悪党に睨まれることに…という感じで話が進んでいく、「異常な状況をマジメに描くコメディ」です。なかなかおもしろかったです。


●「英国少年園」久和まり[集英社コバルト文庫](99/1/8)

タイトルの「英国」の「国」は旧字の方なんだけど、でてこないや(^ ^;)。
「冬の日の幻想」98年度ロマン大賞受賞の作者の新作。
今度の舞台は古き良き時代のイギリス。全寮制のパブリックスクール(!!)に転校生のルパートがやってくる。セバスチャンは誰とも馴染もうとしないルパートが心を開くように働きかけ、ふたりとも仲良くなりはじめた頃、新入生が塔から落ちるという事件が起こった。しかも第一発見者はルパートで、彼が疑われることに…
英国のパブリックスクールを舞台にした小説ってことで、どんな感じになるのかな?と期待してたわけですが、別に妖しいお話ではありませんでした。まっとうな友情モノという感じ。殺人事件は起こりますが、ミステリーでもないし。ミステリー的にはかなり弱いので、そっちを期待すると肩透かしを食らうかも。
キャラ的にも悪くはないけど、インパクトがもうひとつかなあ。


●「図書館戦隊ビブリオンII」小松由加子[集英社コバルト文庫](99/1/7)

あの、「図書館戦隊ビブリオン」の続編です。
高校の図書館が突然“アレキサンドリア漂流図書館”と繋がった。図書館を狙う悪の秘密組織のネオ・バグフォードからの攻撃から守るために、図書館員たちは「ビブリオン」に変身して闘うぞっ!!パート2、です。
今回は挿入曲と芸亭高校の校歌つき。ほのぼのした、ほどよい加減のバカ話で、今回も楽しかったです。
これで終わっちゃって残念だなあ。もうちょっと読みたかったけど。
私も一度、実験器具を使ってコーヒーいれてみたかったな。あれに憧れた人って結構多いんじゃないかなあ。


●「ハルマゲドンバスターズ 月光の美獣」嬉野秋彦[集英社スーパーファンタジー文庫](99/1/6)

ハルマゲドンバスターズ 黄金狂騒曲!」の続編。探偵…なんだけど、実際は拝み屋やってる、陰陽師の善ノ介。そのパートナーで、一見美少女のサクラ。そのふたりが、召喚された悪魔の事件に関わる話です。今回は、南米から、双子の美女−実は凄腕の魔術師−が日本にやってきて、白ずくめの謎の男、ドルンハイムと接触したことから話がはじまります。
前作と同じく、ノリよく話は進みますが、今回はちょっと軽すぎるかなあ、という気がします。
シリーズは次で一応完結するそうです。ドルトムントとの決着が着くそうですが、今の段階であれだけ実力差があるのにどうなるんでしょう(^ ^;)。


●「鉄コミュニケイション(1) ハルカとイーヴァ」秋山瑞人[電撃文庫](99/1/5)

「E.G.コンバット」が予想外におもしろかったので、同じ作者の別の作品も読むことにしました。
この「鉄(くろがね)コミュニケーション」は、ストーリー原案・かとうひでお氏で、たくま朋正氏が「電撃大王」で描いているマンガです。ちょっと前にBSでアニメ化してたそうで。その作品をノベライズしたものです。
原作付きということで、とりあえず先に原作マンガ(コミックス1,2)を読みました。
−戦争により、人類が絶滅した世界、そこではロボットだけが密かに暮らしていた。その世界で、5体のロボットたちと、彼らと暮らす人間の少女・ハルカ…最後の人類かもしれない少女…との織り成す生活を描いた、ほのぼのストーリーです。
で、マンガを読みおわって小説に。小説は、マンガのノベライズというよりは、マンガと初期設定が同じの別の作品となっています。
小説の方は、ハルカがある日、自分とそっくりな姿の少女ロボット・イーヴァと出会うところから話が始まっています。小説では、マンガの方では(2巻現在)あまり描かれていない、作品世界やロボットの細かい設定をうまく織り込んでいて、かなり深みを感じます。あと、なんだか奇妙な不安を感じるような、明るい日常の描き方がうまいなあ、と。
それと、ハルカがかわいいですねー。ルークも別の意味でかわいい(笑)。ルークは最初はちょっとブキミでしたが、彼の正体が○だとわかったら急にかわいく思えてきました。
ただひとつの問題は、こういうところで話が終わってることですね。はやく次を出してくれないとっ!!先が気になります〜。


●「この貧しき地上に」篠田真由美[講談社X文庫ホワイトハート](99/1/4)

建築家探偵“桜井京介”シリーズで人気の、篠田真由美の新刊。
天女のように浮世離れした美しい兄嫁に恋した男の叶えられない思いを、彼女の美貌をうけ継いだ息子を監禁し、陵辱することではらそうとする………という話の基本設定といい、冒頭でいきなりアレ(^ ^;)だし、文庫がホワイトハートだから耽美なやおいものかと思ったのですが、読後の感じは全然違いました。間違えて地上に生まれてきてしまったという昏い思い、美への憧憬と絶望的な愛、それらからむしろいつもの篠田作品と変らぬ印象を受けました。個人的に思ったのが、この作品は「美貌の帳」をもっとわかりやすくしたものではないか、と。当時もうひとつよくわからなかった、「美貌の帳」がこの作品を読むことで案外すっきりとわかったような気になりました(気のせいかもしれないけど(^ ^;))。
このシリーズであと二冊でるそうですが、どうなるのかなあ…結構楽しみかも。


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