01年11月に読んだ本。 ←01年10月分へ 01年12月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「魔術士オーフェン・無謀編12 そのまま穴でも掘っていろ!」秋田禎信[富士見ファンタジア文庫]480円(01/11/30) →【bk1】
「魔術士オーフェン・無謀編」最新刊。
短編の方の雑誌連載はもう終了しているので、無謀編はあと1冊でる位だそう。いや、無謀編自体は個人的にはどうでもいいんですが、プレ・オーフェンが読めなくなるのが寂しいというか…
ちなみに今回のプレ・オーフェンはアザリーの話で、無謀編のようなノリで書いたそうです。
ギャグっていうのは、シリアス以上に書きつづけることで磨耗していくんですよねぇ。感覚や発想が最初は斬新で受け入れられても、すぐに読者もそれに慣れてすれちゃうし。無謀編も、最初の頃はともかく、後の方は……とにかくお疲れ様でした。
個人的には、プレ・オーフェン(シリアスとか日常話とか)をたっぷり読みたいんですが、無理かなあ…
●「ハーツ ひとつだけうそがある」松井千尋[集英社コバルト文庫]495円(01/11/28) →【bk1】
前からこの方の作品は何人かにオススメされていたんですが、機会があって読んでみることに。
高校に行かずにバイトばかりしてる少年テルは、店のオーナーの了からあるバイトを持ちかけられた。それは自分の弟の「周平」としてある女の子・真純と期間限定の恋人同士になってほしいというものだった。それをひきうけ、真純の高校に転校したテルは、本気で真純に恋をしてしまうが…
おお、これはよかった。さすが一部で評判になるだけのことはあるなあ。
設定は斬新ではないものの、キャラの描き方や、ちょっと荒んでいたテルが恋することで気持ちが変わっていくあたりとか、なげないことがとても幸せだったり、なんだかとてもうまくいかないことがあったり、そういうのがとても、いい。物語に魂がある。
ラストにはじわーっときました。半泣き。
この人の作品ではこれが一番評判よいらしいですが、他のも読んでみます。
●「スカーレット・ウィザード 外伝 天使が降りた夜」茅田砂胡[中央公論社C★NOVELS]900円(01/11/27) →【bk1】
「スカーレット・ウィザード」シリーズの外伝。…と銘打ってますが、話は本編最後のちょっと前+そのあとのお話であります。
前半から中盤にかけてはかなりおもしろく読めました。SF的な弱さはあるものの、プラスの方向に動こうとする意志の流れの書き方がうまいし。
で、終盤…第一巻をみたときに、この世界は→デル戦と繋がっている←というのがわかって期待して、本編がそのまま終わってどうなるかと思ったら…こうでしたか。→なんでも繋げちゃうのはちょっと萎える。←ここまでやられるとなあ、ちょっと。
茅田さんの作品って、ある種超人思考が流れてるじゃないですか。美形で、鬼のように強くて、頭がよくて、したたかで… これだけ書くとお子様が妄想する「お話」にありがちなスーパーヒーロー&スーパーヒロインなんですが、茅田さんの場合は主人公が無敵でもちゃんと残り越えるべき試練を描けるし、堅実に生きる人たちも描写できるからこそ物語として破綻はしてないんですよね。でも、今回のラストの方のアレは、そこまでできちゃうと今までのは一体?にならないでしょーか。
次回作は学園モノだそうですが、終盤にでてきたあのふたりとあの人がメインとなるのかな?
●「D/d レスキュー」一条理希[スーパーダッシュ文庫]571円(01/11/26) →【bk1】
「集英社スーパーファンタジー文庫」でシリーズ化していた「サイケデリック・レスキュー」がレーベル廃止に伴い、「スーパーダッシュ文庫」にお引越し。
ハイパー・レスキューもの。水城財閥の特殊救助隊が危険に陥った人を勇気と知恵とハイテクで助けてゆくというお話。今回は、新築のマンションへの(強要された)自爆テロ。
昨今の情勢が情勢だけに、便乗かと思われる方がいるかもしれませんが、このシリーズは極限状態の救出話なので、事故や自然災害だけでなく、人為的に作られた逼迫した状況を扱うこともありまして。実際3年半前にでたシリーズ一作目「サイケデリック・レスキュー」もテロ組織による連続爆破事件を扱っています。(ちなみに情け容赦ない展開という意味では、この一作目と「クリムゾン・インフェルノ」の前後編がとてもよいデキであります)
さて、今回の作品。前作に比べると少しヌルいかなあと思わなくもないですが、十分満足できるデキでした。
さて、今回から杉崎ゆきるさんから目黒三吉さんにイラスト変わってまして… やっぱりどうも違和感を覚えてしまいます。杉崎さんの描く少年のまっすぐで強い瞳が好きだったので、新しいイラストには物足りなさを感じてしまいます。総体的な雰囲気などは悪くはないんですが…
●「月メグル地ノ来訪者タチ クロスカディア1」神坂一[富士見ファンタジア文庫]520円(01/11/23) →【bk1】
「スレイヤーズ」の神坂一の新シリーズ。
大きな戦争が終わって50年。身寄りのない少年シンは、修練学校という軍の予備学校に通っていた。シンはある日、喫茶店で記憶をなくしながらあんまり気にしてないズケズケした少女・メイと出会う。その直後、喫茶店は何者かの魔法によって吹き飛ばされてしまい…
人間とは別の種族や魔法が存在する世界でのバトルもの(?)。「スレイヤーズ」第1部から比べるとどうしても「過剰なもの」が枯れているような印象はしてします。でも設定のまとめ方や見せ方がさすがに手馴れててうまい。魔法でのバトルも単なるパワーゲームじゃなくて、相手の出方を読んだ上で戦略を立てる必要があるように作ってるあたりとか、ちゃんと「わかってる」作家さんだなあ、と思います。でもこれはトレーディングカードゲームになりそうなシステムですねぇ。
とらえどころのないキャラの、留学生は今後の期待株ですな。
●「ガンパレード・マーチ 5121小隊の日常」榊涼介[電撃文庫]570円(01/11/23) →【bk1】
去年プレステで発売されて、ネットの一部で熱狂的な人気を博したゲーム「ガンパレード・マーチ」のノベライズ。私もこのゲームには大ハマリしたものです。
1年前に広崎悠意●「高機動幻想 ガンパレード・マーチ」がでましたが、こちらはファースト・マーチをノベライズしたものでゲームの世界観や全体の流れもかかれていました。ゲーム未プレイの方でもある程度は分かる話かと。でも今回のはサブエピソードを切り取ったもの。わりとデキのいい同人誌、みたいな感じかなあ。キャラや世界観を知ってることが前提の上の物語になっています。
かなりメインのキャラは、速水、舞、原、善行、田代、壬生屋、瀬戸口。
わりと出番のあるキャラは、滝川、森、ののみ、田辺、遠坂、中村。
ちょろっとだけ出番があるのは、岩田、狩谷、若宮、萌、祭。
名前しか出てこないのは、来須。
イラストでしかでてないのは、ヨーコ、新井木、本田、坂上。
そしてそして、全く登場してないのは茜、芳野。
……茜の出番がないっっっっ!!
話自体は、極限状態でのささやかな日常話というので悪くはないですが、イチオシキャラがでないというのがあまりにも寂しい……うう。
カップリングは、速水×舞、善行×原、瀬戸口×壬生屋、遠坂×田辺、瀬戸口×速水というオフィシャルばっかりなのが残念ですが、ノベライズならし方ないかなあ。
滝川が結構かわいかったです。
個人的にはキャンプの話が一番よかったなあ。
木村さんのイラストもたくさんあるしデキがいいので、ガンパレファンにはオススメ。
●「果しなき旅路」ゼナ・ヘンダースン[ハヤカワ文庫]820円(01/11/22) →【bk1】
「空の青さをみつめていると 私に帰るところがあるような気がする」
詩人・谷川俊太郎が十代の頃に書いた詩の冒頭部分です。私が学生だった頃、ぼんやりと「ここではないどこか」を恋しく思う気持ちが心の片隅にありました。それを思うたびに、この詩のことを思い出して。でも、この詩の続きは…
「だが雲を通ってきた明るさは もはや空へは帰ってゆかない」
この作品は「ピープル」シリーズの一作。恩田陸●「光の帝国 常野物語」がこの作品へのオマージュであるというのを聞いて、ずっと読みたいと思ってまして、なにかのついでにオンライン書店で購入。
故郷を脱出して《支族》は宇宙船で地球までやってくるが、大気圏突入時の事故で、彼らはバラバラになってしまう。外見は地球人と同じながら、空を飛び、風を起こし、声を出さずに気持ちを伝えることができるような不思議な能力を持つ人々は、ひっそりと身を隠すように暮らしていた。それから50年。ある《支族》の村に外界から学校の先生がやってきたが…
もう50年くらい前の作品ゆえに正直読んでて辛い部分もありましたが、総体的には「名作」と呼ばれだけのことはあるなあ、と。
どこかにあるはずの故郷を恋しく思う気持ち。仲間が誰もいないために本来の自分を殺していかなきゃいけない苦しみ。わかりあえる人に出会えた喜び。ほんわかしたものがほわほわと伝わってくる話でした。
「私はこの世界の人間ではなくて、どこかに戻る場所がある」という漠然とした感覚は、世界に違和感を覚えている思春期の子供にはありがち妄想かもしれませんが、そういう気持ちに共鳴する物語ですよね。そういうモチーフはよくマンガや若者向け小説で使われるし。そういうのはやはりこの作品からの直接・間接影響なのかなあ。
この物語のそういうモチーフは「シオニズム」からきているのか、それともさらに「故郷喪失した異世界住人モノ」というジャンルがこれより先にあったのかなあ。
●「木島日記 乞丐相」大塚英志[角川書店]1200円(01/11/21) →【bk1】
「多重人格探偵サイコ」の手による、「あってはならない物語」である「木島日記」の続編。
かなり前に発売予告があって、数か月ほど待たされたような記憶が。
昭和初期を舞台に、民族学者・折口信夫が巻き込まれる不思議な物語。古本屋の仮面の店主・木島平八郎はこの世に「あってはならない」ものを仕分けする裏の仕事もしていて…というオカルト・ファンタジー。今回のネタは大量殺人と食人鬼、不運の避雷針、迷子塔…と三つの話です。
現実と幻想の境がゆらぐような、そんな空気は結構好きで。今回もおもしろかった。
巻末にキャラクターシートがついているんですが、それを読んで初めて「ここにでてくる組織ってひょっとしてサイコのガクソのこと?」と気がつきました。ああ、鈍過ぎる。
●「「ABC」殺人事件」[講談社文庫]590円(01/11/16) →【bk1】
かのアガサ・クリスティーの「ABC殺人事件」へのオマージュ短編集。恩田陸がでてるってことで即ゲットでした。「シリアルキラー(連続殺人事件)」が統一テーマとなってます。当然のことながら「ABC殺人事件」についてはネタバレとなってますので、未読の方は注意を。
有栖川有栖「ABCキラー」:火村シリーズの一作。安遠町で浅倉氏が、別院町で番藤氏が殺害される事件が起こり、警察にかの「ABC殺人事件」を彷彿とさせる予告状が届いて… 手堅い話ではありますが、落ちが弱いかなあ。でもミステリにはなってます。…いや、有栖川さんは「ペルシャ猫の謎」でミステリとしては不信感を持っちゃったので… 学生アリスシリーズはいつになるのかねぇ。
恩田陸「あなたと夜と音楽と」:夜に流されるラジオ番組、なぜかそのスタジオに「雛人形」「地球儀のビーチボール」というような意味不明なものが届けられたが… 軽やかに小粋にまとまっていい感じではないかと。
加納朋子「猫の家のアリス」:ヒマな探偵の元にやってきた依頼は猫を連続殺人鬼から守ることだった… ヒネリの利き方がなかなかよいですな。
貫井徳郎「連鎖する数字」:若者が鈍器で殺害される事件が相次いだ。彼らにはなぜか数字の書かれた紙が残されていて… えっと、この動機での殺人話って別の作家で読んだことがあるような。オチもミエミエなんでもう一工夫ほしかったなあ。
法月綸太郎「ABCD包囲網」:のりりん親子もの。(図書館にあらず) やってもいない殺人を自白しつづける男がいた。刑事は相手にしなかったが、三度目の自白で意外な展開に… これはいいですな。なぜ男はやってもいない殺人を告白するのか?の謎を軸に、本格派らしいヒネリの聞いた展開が待ち構えています。でも、ヘタな細工をしない方がよっぽど…とつっこむのはヤボかなあ。
総体的には買って損はなしレベルの本ではないかと思います。
●「X ―神威の章―」CLAMP/友谷蒼[角川ビーンズ文庫]438円(01/11/15) →【bk1】
CLAMPの大作「X」のアニメ版のノベライズ。CLAMPは「東京BABYLON」は読んだけれども「X」本体はどうも波長が合わなくて。今回ノベライズを買ったのは、書いたのが友谷蒼さんだから。私の期待度大の作家のひとりなので。センシティブ・ホラー青春ものの「エウリディケの娘」はすばらしいデキの作品であります。オススメ。
さて、話を「X」に戻して。文章は空気がきれいでなかなかいいのではないかと思います。でも物語自体は古くからの宿命の血を背負った少年・少女たちが、地球の未来を破滅から救うために超能力で戦う…というオーソドックスな構造なんでもうひとつのめりこめないなあ。これの連載をリアルタイムで味わってないので、そう思ってしまうのかもしれませんが。連載当時はそういう設定はまだ新鮮だったのかな?
このシリーズはあと2冊続くそうです。もちろん買う予定。でも友谷さんにはオリジナルも書いてほしいなあ…
●「虹の天象儀」瀬名秀明[祥伝社文庫]381円(01/11/14) →【bk1】
書き下ろしで読み切り中編。ノスタルジック・タイムスリップもの。泣かせ話としてはそこそこのデキなんですが、プラネタリウム投影機の描写がとてもよくて、個人的には満足でした。
プラネタリウムに行きたくなる話で。
●「アイ・アム I am.」菅浩江[祥伝社文庫]381円(01/11/13) →【bk1】
病院で介護ロボットとして目覚めた「ミキ」。死がいつも近くにいる場所で働きながら、彼女は不意に蘇ってくる記憶に苛まれていた。自分は一体何であるか、考え続けたミキは…
ロボットモノに弱い私のストライクゾーンを直撃。泣けるなあ。生きるとはどういうことか、深く感じさせてくれるものがあります。オススメ。
●「三千世界の鴉を殺し(5)」津守時生[新書舘ウィングス文庫]580円(01/11/12) →【bk1】
「三千世界の鴉を殺し」シリーズ最新作。お笑い軍隊SFもの。美形が沢山でてきて、すこしホモくさい話です。
今回は、前巻のハデな電脳戦の後始末話。ストーリーは大して進んでいません。
前から好みのタイプだよなあ、とは思ってましたが、今回はカジャに萌え〜。あのいじっぱりぶりとプライドの高さと、それでいて芯は子供っぽい素直さが残ってるあたりが、かわいくてなあ。ダッフルコート!! いいねぇ。ふわふわした耳当てつけた姿とかみてみたいものであります。
●「イリヤの空 UFOの夏 その2」秋山瑞人[電撃文庫]570円(01/11/10) →【bk1】
「イリヤの空 UFOの夏」の続き。
綾波な少女inUFOと普通の少年のボーイ・ミーツ・ガールな物語です。
今回はデート後編&学園祭のお話。
いやもうなんて書けばいいんだか。ストーリー自体は全然進んでないんですよね。元々秋山さんってスロースターターで終盤に恐ろしい加速度で物語が進んじゃったりしますが、この作品はさらに輪をかけているような。
でも、楽しい。物語に漂う空気がとてもよくて。「北」との緊張状態が続いていながら、「戦争」を実感できない世界で、米軍の基地がある田舎町の中学生の日常。平和な日々をすごしながらも、それが一瞬の後にはすべて廃墟と化すかもしれないという不安がどこか底にあって。そんな微妙な空気の描き方が、とても愛しい。なんかもう、ただのファンだなあ。
「なんでもあり」の文化祭のシーンは「あ〜る」とか「うる星やつら」とかをなんだか思い出してしまいました。
ちなみにこの世界の状況は詳しい解説はないんですが、何気なく交わされる会話や地の文(説明なし)である程度の状況は想像はつきます。ミリタリー属性のある人にとっては、それらから「架空戦史」を読み取ることもできるようであります。私にそのスキルがないのが残念。
この前の電撃hpには載ってなかったけれども、次号の連載陣には名前が載ってたからイリアの連載は当分続くんだろうなあ。…ううう、EGのファイナルはいつになったら読めるんだろう…
●「パラサイトムーンIII 百年画廊」渡瀬草一郎[電撃文庫]570円(01/11/09) →【bk1】
「パラサイトムーン 風見鶏の巣」、「パラサイトムーンII 鼠達の狂宴」の続編。
実はかなり楽しみにしているシリーズなので、「イリア」よりも先に読んでしまいました。
「迷宮神群」と呼ばれる神々と、それらから影響を受けて力を持った人々が神群を狩るために作った組織《キャラバン》と、それらに巻きこまれて翻弄される人々を描いた、現代が舞台の伝記小説。
今回は一作目の「風見鶏の巣」にでてきた心弥と弓の物語です。
前作ほどの広がりはなかったものの、今回も感じのいい物語にしあがっています。IIとの微妙な話の繋がり方もうまいなあ。ラブなお話としても、うまくふれあえない不器用で特殊な事情のある二人の関係の移り変わりのえがき方も悪くないし。
個人的には籤方萌え。彼にも色々な秘密がありそうなので、これから先の展開が楽しみであります。
ぶっちゃげた話をすると、このシリーズはある意味クトゥルーもの。ただし設定は完全オリジナルで、名称の拝借などもありません。ホラーではないです。そっち方面の人ならどういう評価をするかは聞いてみたいものです。
4冊目からはまたがらっと変わって話が展開するので、それを楽しみにしています。ちなみに1冊目から順番に読まないとたぶんわからないでしょう。オススメは2冊目。
●「囲碁の文化誌 起源伝説からヒカルの碁まで」水口藤雄[日本棋院]1000円(01/11/08) →【bk1】
囲碁の歴史だとか文化だとかを広く浅く(?)語った1冊。個人的にはこういうのを読みたかっただけに嬉しい本でした。
タイトルには「ヒカルの碁」も一部入ってますが、でてくるのは最後に2ページほどだけ。でも平安時代の碁や、本因坊秀策について、御城碁についてなど「ヒカルの碁」ファンにも興味深い話もたくさんでています。完全初心者向けなので、気楽な読み物として楽しめるかと。
日本棋院の出版物を取り扱っている本屋はここにリストがでてるので、読みたければそこを探すか、通販するしかないのかも。
ちなみに私は同じシリーズの「キーワードで読む初歩の死活」も読んでます。漫然とやってた詰め碁の「意味」を解説してくれててわかりやすい本です。こっちもオススメ。
●「今昔続百鬼 雲」京極夏彦[講談社ノベルス]1150円(01/11/08) →【bk1】
雑誌「メフィスト」に連載されていた、【多々良先生行状記】をまとめたもの+書き下ろし1編です。多々良先生も京極堂ファミリーの一員。「塗仏の宴 宴の支度」に京極堂の知り合いの妖怪研究家として出演しています。対談集「妖怪馬鹿」に出てくる多田先生がやはりモデルなんでしょうか?
このシリーズは「冒険小説」と銘打たれてますが、在野の妖怪研究家もとい「妖怪バカ」な多々良先生とその相棒で良識は少しはある(?)沼上が旅の途中で不思議な事件に遭遇し、本人たちはなーんにも推理せずに妖怪の話に夢中になってたら、なぜか事件は解決しちゃった…みたいなバカコメディです。
いやあ、これがおもしろい。あのふたりのバカっぷりが微笑ましくて。ネタの作り込みも凝ってるし、さすが京極さんですな。
それでいて、村社会の崩壊という隠れテーマを押しつけがましくなく考えさせるあたりもうまいし。
ちなみに帯にあるとおり、あの仏頂面の「黒衣の男」も書き下ろしの最終話に出演。相変わらずカッコいいです。
それにしても、京極堂シリーズの本編って、もう3年でてないんですね。京極夏彦さんは他の仕事もたくさんやってるから順番待ちなんでしょうが… 一番読みたいのがソレだからなあ。はやく書いてくれないかしら。
●「匣庭の偶殺魔」北乃坂柾雪[角川スニーカー文庫]514円(01/11/07) →【bk1】
第五回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞受賞作。
自称・探偵の元に送られた殺人予告。その予告どおり、何人もの人が事故死にしかみえない状況で亡くなっていくが…
綾辻行人さんが推薦文を書いています。ミステリにおいては、島田荘司氏と大森望氏の推薦文だけはアテにしないようにはしてたんですが…ねぇ。
京極夏彦+森博嗣+清涼院流水あたりが好きそうな方が出した同人誌みたいな感じです。美貌の探偵がでてきます。マッドサイエンティストとか人工知能とかドッペルゲンガーとかミステリ好み(?)な道具はたくさんでてますがどれも底が見えちゃって。浅い。
ミステリとしては、ずばりネタバレしちゃうと→著述者の第二人格が殺人犯だと見せかけて、実際は探偵役が黒幕で被害者はみな作為的な自殺←なんですが、伏線が雑な上でのひっくり返しは快感にはならないんです。ひっくり返せばいいというものではないんですから。かといってアンチミステリとして楽しんだり、ミステリシチュエーション萌えにするには筆が弱過ぎるしなあ。
本のデザインはかなり講談社ノベルスを意識してるようです。このレーベル自体はそのあたりの読者を狙ってるんでしょうが、だったらもっとキャラ萌えの部分を強化した方がいいかもなあ。そのあたりも弱い。
「COSMIC? すごくおもしろかったよー。びっくりしちゃった」と言えるほどの方であれば、この作品も読んでもいいかもしれませんが。
●「ネクストエイジ」野島けんじ[角川スニーカー文庫]560円(01/11/06) →【bk1】
第五回角川学園小説大賞優秀賞受賞作。
少年は気がつくと教室で転がっていた。そこにいたのは少年少女あわせて42名。彼らは全員記憶が奪われていた。そういう状況の中、有無を言わせず男女ペアで特殊なカリキュラムをこなすことを強制される。カリキュラムについてこれないもの達が消されて行く中、残った者たちを待ちうけた運命は…
あらすじを読んだときにはシチュエーションからして高見広春●「バトル・ロワイアル」かと思いましたが、どっちかというと「ガンパレード・マーチ」の方が近いかなあ。初期アイデアは悪くない。物語としては可もなく不可もなく。ただ作家の力量不足のためかネタの掘り下げが浅すぎるのと、カードの出し方がヘタなせいでエピードの効果が発揮されてないのがひっかかります。「いかにも」な萌えシチュエーションの挿入が完全にスベっているあたり、作者は本来萌えな人とは違うような気がします。
新人作家特有の「熱さ」がもう少し欲しかったです。
●「ミステリ・アンソロジーI 名探偵は、ここにいる」[角川スニーカー文庫]495円(01/11/02) →【bk1】
富士見に続いて、スニーカーもミステリのレーベル新設。スニーカー本誌の方が(ゲーム的な)ファンタジーとかSFとかが多いけれども、どうも行き詰まって閉塞感のあるところをマンガではすでに人気ジャンルであるミステリー方面でなんとかしてみようか、という感じなんでしょうか。(あとは講談社ノベルスのライトノベル化も受けて、かなあ)
ということで、ミステリでの中堅どころの作家を集めてのアンソロジーです。名探偵と銘打ってるけどそれほど「名探偵」という感じではなかったです。
今回は4つの話。
・太田忠司「神影荘奇談」:狩野俊介シリーズの一作となっています。落ちがミエミエすぎて、ちょっとねぇ…
・鯨統一郎「Aは安楽椅子探偵のA」:元々バカミスを書く方ですが、今回もバカ話でした。探偵役がちょっと変わってますが、その程度じゃ喜べないんですよ…私はもうすれちゃってるから。
・西澤保彦「時計じかけの小鳥」:女子中学生がしばらくご無沙汰してた本屋で買った古いミステリに、自分の母親の書き込みがあったが…というところから始まる物語。すでに終わったはずの事件が別の様相をみせる様がおもしろい。
・愛川晶「納豆殺人事件」:私は未読ですが、少女探偵・根津愛ものの一編となってるようです。今回の短編はバカミス。解決編を読んでも「だからどうした」って気分に…
西澤さんの作品はよかったけれども、あとはちょっと。
でも2001年2月発行予定の第2回配本「殺人鬼の放課後」はかなり期待できそう。なんたってメンバーが恩田陸/小林泰三/新津きよみ/乙一(ほか3点)だそうで。このメンバーで、各自の平均的なレベルの作品さえ書いてもらえれば、アンソロジーとしてはとてもいいデキになりそうです。楽しみ。
それにしても、なぜマンガで主流である「スポーツもの」や「普通の恋愛」ものはライトノベルではほとんどないのかなあ。スポーツものは小説という媒体が向かないこともあるかもしれないけれども、恋愛は…昔は色々とあったのに、今はホモかギャルゲーしかない感じですもん。
●「カーマイン・レッド セトの神民(前)」霜島ケイ[角川ビーンズ文庫]419円(01/11/01) →【bk1】
「封殺鬼」シリーズの作者の手による、新シリーズはSFよりのファンタジー(?)。
未来。人類は宇宙に進出し、生存可能な惑星を開拓し植民を進めていたが、やがて人口が緩やかな減少をみせはじめ、トラブルがあったり採算がとれない惑星は見捨てられる傾向にあった。そいいう星では、環境にあわせるためか文明が退化する現象がみられた。惑星タピスもそのひとつ。かつてのイスラムやエジプトをごっちゃにしたような文化を持つこじんまりとした町クラルに降り立った情報屋のジャスパーは、占い婆から「赤に気をつけろ」と警告をうける。ジャスパーが自分をつけ狙う暗殺者から逃げているときに、印象的な赤い髪を持つ少年に出会う。それがテロリストのエイジュとの出会いであった。
ビーンズ文庫が角川より創刊されましたが、この本はその第一回配本のラインナップのひとつです。
ビーンズ文庫自体は、女性向けのホモじゃないファンタジーを目的としたレーベルの様子。書いてるメンバー自体は悪くないけれども、需要はあるのかなあとか少し気にはなります。
話はまだ序盤、可もなく不可もなくというところでしょうか。さまざまな謎がどんな展開をみせてくれるのか、続きが楽しみです。
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