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●「ウィーン薔薇の騎士物語1 仮面の暗殺者」高野史緒[中央公論新社C★NOVELS]857円(00/3/31)
バイオリンを弾く美少年の口絵に惹かれまして。
作者は第六回日本ファンタジーノベルズ大賞最終選考作品「ムジカ・マキーナ」でデビューしたそうです。この作品自体は読んでないんですが、ファンタジーノベルズ大賞出身の作家は結構いい人多いですからね。
今回は世紀末のウィーンを舞台にした、音楽と恋愛と隠謀とが入りまじったコメディ(?)です。バイオリンを心から愛し、音楽を志して家出をした少年・フランツ。行き倒れ寸前のところでジルバーマン楽団に入団することができた。舞踏場「金の星」で皇太子暗殺計画を偶然聞きつけたフランツは……
中盤からの誤解が誤解を呼んで、ドタバタした展開になるあたりがなかなかおもしろかったです。ただフランツのキャラがちょっと弱かったかなあ。まあ「薔薇の騎士」たちの活躍はまだまだこれからだから、これから先を楽しみにしていましょう。
アレクシスは結構お気に入りかも。
●「仮面を継ぐ者」紙谷龍生[富士見ファンタジア文庫]560円(00/3/30)
「仮面武闘会(マスカレード)」シリーズの第一弾。平凡な少年が、過去の超古代文明の遺産である「仮面」と融合することで超人「仮面武闘者(アトラクター)」となり「蝉の王」と闘う…というジョジョ第一部の設定のような、特撮変身ヒーローもののようなお話。お笑いではなく、どちらかというとシリアス方面。
設定や展開などはそれなりでライトノベルズとしては悪くはないんですが、もうひとつ突破するだけの力はないというか。話があらすじを読んだ段階で想像できる範囲内なので。キャラもありきたりで、もうすこし個性があれば。
●「月の裏側」恩田陸[幻冬舎]1800円(00/3/29)
恩田陸は大好きな作家さんなんで。今年はたくさん新作が読めるようで、本当に楽しみです。
水路が縦横無尽に流れるとある九州の町。そこで老女の失踪事件が3件相次いだ。どの事件も姿を消してから一週間ほどで戻ってきて、失踪時の記憶がないという点が共通していたが…
帯のアオリ文句は「奇跡のプログレッシブホラー」となってますが、ティストしてはSFに近いか?
今私たちが「現実」と見なしている世界のすぐそばにある異世界。今まで気が付かなかったものを意識しはじめたとき、背中がちりちりするような感じ。世界が溶けていくような怖さがあります。特に中盤から後半にかけてが秀逸。
恩田陸は地の文のリズムやイメージがすばらしいんですが、今回も堪能させていただきました。くすんだブルーのガラス細工のような光を内包しているような、美しい言葉で。
好きだなあ。
あの後半の展開で、最後がああいう終わり方になるあたりが恩田陸らしくて私は好きなんですが、人によっては物足りなさを感じるかもしれない。
オススメ。恩田陸を読んだことない人は、とりあえず文庫本ででてる「球形の季節」を読んで波長が合うかどうかを確認してみるといいかもしれません。
恩田陸だと「三月は深き紅の淵を」も捨て難いんですが、イチバンは「光の帝国 常野物語」かなあ。泣けます。
●「花屋の二階で 毎日晴天!5」菅野彰[キャラ文庫]514円(00/3/25)
「毎日晴天!」シリーズ5冊目。東京の下町を舞台にした、帯刀四兄弟+2名の奇妙な同居生活での、ひとつ屋根の下の恋。ボーイズラブものなんですが、今、一番お気に入りのシリーズなんです。
今回は、族あがりの花屋の龍とマジメで人のいいメガネっ子・次男の明信の話です。成り行きで関係を結んでしまった二人が、迷いながらもたどり着いた先は……
今回もなかなか切なくて。特にラストの龍の告白にはしびれました。前から龍は密かにお気に入りでしたが、やっぱりカッコいいなあ。
私のお気に入りの勇太&真弓はあんまり出番がなかったのがちょっと残念だったかも。
菅野彰はお気に入り作家なんですが、この方はシチュエーション萌えというよりはエピソードでじっくりを話をみせてくれる方ですね。特に傷を抱えて生きてゆく人の描写がよくて。うまい人だけにボーイズラブだけに留めておくのはもったいないんだけどなあ。
●「女王陛下の薔薇3」三浦真奈美[中央公論社C★NOVELS]857円(00/3/25)
「女王陛下の薔薇」シリーズ三冊目。
かつての大英帝国を彷彿とさせる、ブレニム帝国。女性はおとなしく家の中だけで生きていくことが美徳とされていた時代。帝国史上初めて女王とセリシア、そして彼女の親友のエスティが力強く生きていく話です。新聞コラムニストとして名を馳せてきたエスティは議会に招かれたことをきっかけに自分の正体を明らかにする。また、エスティの元婚約者のシンは内乱の起こったバカンから帰国してくるが…
今回はあんまり話が動かなかったような。リディアはいい方向にかわってきましたな。でもシンはあまりにも情けない…さっさと見捨てた方がいいとは思うけど。
エイダン・グレイがエスティに惚れてるというのがはっきりしましたが、案外純情なんですな。わたし的にはこのカップルはOKです。でも最後にああいうことをいうなんて、自分でだいなしにしてどうするんだ。
あと一冊で終わるそうですが、収拾つくんでしょうか?
●「天使昇天」星野ケイ[講談社X文庫ホワイトハート]570円(00/3/23)
「天使」シリーズの完結編。「天使」と呼ばれる、人を喰らう異形の生き物たちと戦う少年たちの物語。天使発祥の地にやってきた彼らは天使の正体が知るが…
天使の正体などが明かされますが、うーん、なんか設定にかなり矛盾があるような。そのあたりの作りが雑なんですが、話に勢いがあってなかなか読ませます。今回も熱い友情パワー炸裂で、「ジャンプ」好きとしてはかなり引き込まれるものがありました。…とりあえずハッピーエンドだったのはよかったかと。
この人、パワーだけはあるんだよね。もうすこし話の構成を緻密にするようになれば読ませる作品になると思うんだけども。
●「逃げちまえ!」野梨原花南[集英社コバルト文庫]476円(00/3/22)
「ちょー美女と野獣」シリーズで人気の作者の読み切り。昔スーパーファンタジーで出した分のリニューアルだそうで。
なんでも屋のさやかが盗賊のチュチェと出向いたのは町一番の富豪のカンディンスキー家。屋敷にこっそり足を踏み入れたところにあったのは、女性の死体だった。殺人犯にされた二人は逃げ回るが…という感じのドタバタコメディ。
中身は軽くて、ちょっとスカスカした感じはしますがあんまり深く考えない方がいいのかも。もうすこしテンポがよければ。
美少年のイリヤとアレクがホモくさくていい感じ。でもこの方って元はボーイズラブ系の出身だったんですね。なるほど。
最後の方の「覚悟」うんぬんあたりはよかったかも。
●「勇気凛々ルリの色 四十肩と恋愛」浅田次郎[講談社文庫]533円(00/3/20)
「勇気凛凛ルリの色」に続く、浅田次郎のエッセイ。雑誌連載していたものがハードカバーで1997年に出た作品の文庫本化。
ちょうど「蒼穹の昴」が出たころですね。あれはいい作品だった。
今回のエッセイはわりとシリアスな内容が多かったかなあ、もうひとつ笑える部分が少なくて。
「鉄道員」以降の路線はちょっとあわないんですが、とりあえず「蒼穹の昴」の続編を早くかいてほしいなあ。
●「盤外、燃ゆ 棋士の行動学」表谷泰彦[河出書房新社]1600円(00/3/19)
日本棋院に行ったときに記念に(?)購入。新聞で囲碁・将棋の観戦記者をやってた作者のエッセイ。「ヒカルの碁」萌えなんで囲碁関係の話題を色々と知りたいんだけども、そういう本がなかなかないだけにありがたいですね。あまり碁や将棋を知らなくても、棋士たちの様々な話はなかなかにおもしろかったです。
それにしても、こういう実力勝負だけでやっていく世界って大変だなあ、としみじみ。本当に並の覚悟と努力ではやってられない世界なんですね。才能ももちろん、気力がかなり左右する世界のようで。
同じく「碁萌え」な方は読んでみて損はないかと。
●「フルメタル・パニック! 揺れるイントゥ・ザ・ブルー」賀東招二[富士見ファンタジア文庫]580円(00/3/15)
「フルメタル・パニック」シリーズ、本編第三弾。学園ラブコメ・アクション巨大ロボット軍隊もの。
平和維持活動を行っている軍隊・ミスリルの軍曹である荘介は「戦争ボケ」で平和な日本に馴染めず、わけあり美少女・かなめを守るために転校してきた高校ではた迷惑な行動ばかりをしていた。夏休みも終わりの日、宗介はかなめを南の島へ誘う。しかし単なるバカンスではなく、騒動に巻き込まれてしまい…
どんどん話の作り方や見せ方がうまくなっていきますね。今回は中盤からの、最新鋭の潜水艦を舞台にした緊迫した展開が文句なしにおもしろかったです。シリーズを最初に読んだときはカナメにいまいち感情移入ができなかったですが、シリーズが進むにつれて気に入ってきました。宗介とのじれったくもあり、微笑ましくもある関係もいい感じです。
このカップルもいいけど、テッサもけなげでかわいいからなあ…
このシリーズ、オススメです。軍事的にマニアックではありますが、第一級のエンターティメントであるのは間違いありません。ライトノベルズ好きな方はぜひ。
●「フルメタル・パニック! 自慢にならない三冠王?」賀東招二[富士見ファンタジア文庫]480円(00/3/15)
「フルメタル・パニック」シリーズのギャグの番外編パート3。今回も楽しく笑わせてもらいました。ボン太くんがなかなかキュート。
●「フルメタル・パニック! 本気になれない二死満塁?」賀東招二[富士見ファンタジア文庫]520円(00/3/14)
「フルメタル・パニック」シリーズのギャグの番外編パート2。戦争ボケの宗介とかなめとのじれったいラブコメでもあります。
通勤中に読んでたんですが、つい笑ってしまいました。うーん、外で読んじゃいけない本ですな、これは。一番ウケたのは、弱小ラグビー部を特訓した話。
●「フルメタル・パニック! 疾るワン・ナイト・スタンド」賀東招二[富士見ファンタジア文庫]560円(00/3/13)
「フルメタル・パニック」シリーズ、本編第二弾。学園ラブコメ・アクション巨大ロボット軍隊もの。
平和維持活動を行っている軍隊・ミスリルの軍曹である荘介は「戦争ボケ」で平和な日本に馴染めず、わけあり美少女・かなめを守るために転校してきた高校ではた迷惑な行動ばかりをしていた。それなりに平和に暮らしていた彼らの元に、ミスリルの艦長・テッサがテロリストグループに襲われて転がりこんできたため、荘介とかなめも騒動に巻き込まれるが…
今回はもうひとりの美少女出現で(テッサは前巻にも出演してはいますが)、三角関係でラブコメ度がアップしてます。アクションとの混合バランスもいいですね。
前作よりもおもしろく読めました。
●「フルメタル・パニック! 放っておけない一匹狼?」賀東招二[富士見ファンタジア文庫]520円(00/3/12)
「フルメタル・パニック」シリーズの番外編の短編集です。「スレイヤーズ!」や「オーフェン」みたいに、(比較的)シリアスな本編と、完全ギャグの番外編短編という感じになってます。
戦争ボケの宗介の巻き起こす騒動。いやあ、おもしろいわ、これ。怪しげな生徒会長もポイント高し。
軽く楽しく読めました。
●「豊穣の角 足のない獅子」駒崎優[講談社X文庫ホワイトハート]510円(00/3/11)
「足のない獅子」シリーズ第五弾。勢いで既刊を全部読んじゃいました。
親戚から赤ん坊を預かったリチャードとギルフォードのところに、拾い子や隠し子が現れてしまい、大混乱。そんな中、突然暗殺者が襲ってきて…
ジョナサン司祭の出番が少なかったのは寂しかったけど、ギルフォードが大活躍、リチャードとの絆もみせつけてくれました。
おもしろかったです。
このシリーズ、個人的には結構気に入りました。前王の庶子と噂されてる、リチャードの出生の秘密のせいで今後に激動の予感がしますが、できるならギルフォードと二人でにぎやかに生きていけたらいいのに。騎士見習いでいられるのはあと少しなんだよね…
次の話が楽しみです。ジョナサン司祭が活躍してくれるといいんだけどなー。
●「火蜥蜴の生まれる日 足のない獅子」駒崎優[講談社X文庫ホワイトハート]510円(00/3/11)
「足のない獅子」シリーズ第四弾。なんだか止まんなくなったのでイッキ読みをしてましいました。
今度は、錬金術にのめり込んでしまった貴族の青年の話。彼の目を覚ましてくれと依頼を受けたリチャードは一芝居を打つが…
いろんな人を巻き込んで始まった芝居が、気がついたらとんでもない方向にいっちゃって、収集がつかなくなってくるあたりが愉快。偽錬金術師に扮した司祭ジョナサンの堂々としただましっぷりがこれまた素敵。いやあ、楽しかったです。
●「グイン・サーガ71 嵐のルノリア」栗本薫[ハヤカワ文庫]520円(00/3/11)
「グイン・サーガ」シリーズの最新刊。表紙はナリス様です。
いよいよ、パロに「その時」がきました。今回は読んでてなかなかツラいものが。感想としては、「助けて、グイン!!」って感じ。ナリスにはあんまり執着ないんだけど、リンダはわりとお気に入りのキャラだけに痛ましいです。今、ゴーラはあんなだし、パロはこんなのになっちゃってるし。せめてラストはハッピーになってほしいんですが、栗本さんだからなあ。
……それにしても、あと29冊で、本当にちゃんと終わるんでしょうか?今から29冊前が「カレーヌの邂逅」なんですよ。あのときから話が動いた量で考えると、全然足りないように思うんですけど…でも29巻のタイトルは「光の公女」なんですね。それを考えるとなんとかなりそうな…最初の頃は話の進み方早かったからなあ。
●「一角獣は聖夜に眠る 足のない獅子」駒崎優[講談社X文庫ホワイトハート]530円(00/3/11)
「足のない獅子」シリーズ第三弾。クリスマスが近くなった頃、いつもワインを売りに来る商人が殺され、ワインも忽然と消え失せた。リチャードとギルフォードはそのワインの行方を捜すことにしたが…
ブラボーッ!!ブラザー・ジョナサン!! 彼の人の悪さが光るお話でした。いやあ、すばらしい。好みだよぉ。もう、めちゃめちゃツボです。夢中で一気に読みました。
●「裏切りの聖女 足のない獅子」駒崎優[講談社X文庫ホワイトハート]530円(00/3/11)
「足のない獅子」シリーズ第二弾。リチャードとギルフォードの地区の司祭が急死し、新しい司祭が派遣されてきた……んですが、このファーザー・ジョナサンが私のツボを直撃!! 頭のキレる若い司祭で、美形で、そのくせ酒は飲むは女は買うわの生臭坊主で、口が悪くて腹黒。でもそのうさんくささを隠そうともしないストレートな言動がいっそ爽やかな位。いやあ、いいですねっ〜。彼がでてくると楽しいったらありゃしない。一筋縄ではいかない展開もよかったです。
●「足のない獅子」駒崎優[講談社X文庫ホワイトハート]600円(00/3/10)
前からなんとなく気になっていたシリーズなんですが、妹尾ゆふ子さんが誉められてたんで、思いきって手を出してみることに。
舞台は中世のイギリス。子を身ごもった王妃の侍女は、父親の名前を明かさぬまま男の子を産み落として逝ってしまった。その男の子・リチャードは荘園を持つ貴族の叔父の元、従兄弟のギルフォードと兄弟のように育った。それから年月がたち、成長して騎士見習いとなった二人は領地を持たないリチャードの将来の独立資金のために、人の頼みを聞きながらお金もうけにいそしんでいた。
そのふたりの元を、ひとりのユダヤ人の老人が頼ってくる。泥棒に入られ、借金の証文を盗まれたというが…
沈着で頭脳派ながら優しさのあるリチャードと、豪胆で気のいいギルフォードの、やんちゃな青年ふたりのささやかな日常の冒険談。タイトルからもっと歴史ものかと思ってたら全然違いましたね。デビュー作の「闇の降りる庭」はイマイチでしたが、これはなかなか。ホワイトハートのせいなのか、リチャードとギルフォードは友情が熱すぎて少々ホモくさくなってますが、それもまたよし。楽しく読めました。
●「ブギートーク・ポップライフ」上遠野浩平[メディアワークス]1600円(00/3/9)
マキシマムシングルの「ワーグナー/ニュルンベルクのマイスタージンガー 第一幕への前奏曲〜ブギーポップバージョン」に収録された、上遠野浩平の書き下ろし短編です。
音楽に関する、登場人物たちの会話がメイン。出演は、竹田&ブギーポップ、霧間誠一&榊原弦、早乙女&マンティコア、そしてそして!! フォルテッシモ&ユージンっ!!
「ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸蝕」を読んだときから、フォルテッシモ×ユージンに萌えてたんですが、まさかオリジナルでのこのふたりでの会話を読むことができるとは……強く願えば望みは叶うものなんですねぇ。この頃はまだ「氷のような」ユージンに付きまとっているフォルテッシモがいい感じです。ふふふ。
CDの方もなかなか。原作好きな人は買うだけの価値はありますよ。イメージ広がるし。口笛バージョンがなんだか切なげでいいです。
●「三千世界の鴉を殺し(2)」津守時生[新書館ウィングス文庫]590円(00/3/9)
「三千世界の鴉を殺し」待望の新刊です。
ジャンルとしてはお笑い軍隊SFもので、ほんの少しだけホモくさい……はずが今回はあんまり進展なかったですねぇ。
話自体はエピソードとキャラクターが中心となっているせいか、話はほとんど動いてないんですが会話がとにかく楽しい。美形がたくさんでてきますが、外見的なものじゃなくて、キャラクターの中身がみんな魅力的。やんちゃで「どうしようもない」男たちもかわいげがあっていいですが、そういう男たちを「しょうがないわねぇ」と見守りながら楽しんでるいい女がたくさんでてくるのも素敵。
前巻ほど凶悪なお笑いシーンはなかったですが、特に終わりの方とかかなり笑いました。家で読んでたので、遠慮なく笑えてよかった。外出先で読むには要注意な本です。
それにしても、男の人って自分をモデルにやおい書かれるのってやっぱり嫌なもんなんでしょうか?…まあ、気持ちのいいものではないのは確かだろうけど。
●「TRAIN+TRAIN 2」倉田英之[電撃文庫]550円(00/3/9)
「TRAIN+TRAIN 1」の続編。たくま朋正さんのイラストは結構好きなんで、買いました。
惑星デカロでは、1年間巨大な列車に乗り、惑星の各地を巡りながら勉強するという独特な教育システムがあった。破天荒な少女・アリーナとの因縁から、なぜか問題児ばかりが集まる「スペシャルトレイン」に乗り込んでしまった礼一。これまたひょんななりゆきで、生徒会長に就任。列車が大峡谷を通過しているときに地震が発生し、巨大な岩が落ちてきて列車の後ろに迫ってきた。絶対絶命の中、礼一が選んだ道は…
あらすじ自体はわりとおもしろいけど、小説が「あらすじ」程度にしかおもしろくないのは如何なものか。展開が予想の範囲内に収まってるし。前にも書いたけど、アニメのノベライズみたいで薄っぺらい感じがする。「個性的な」キャラがでても、そこに芯が通ってない、うわっつらだけのような。
基本アイデアと本のデザインとイラストがいいだけになんだか惜しい小説だなあ。
●「破妖の剣外伝5 魂が、引きよせる」前田珠子[集英社コバルト文庫]476円(00/3/8)
人気ファンタジーシリーズ「破妖の剣」の外伝です。
今回は、ひとつがリーヴィと邪羅の話で、もうひとつが赤の人の女装の話(ちょっと違う…)
リーヴィと邪羅のカップルは結構お気に入りです。高慢でいじっぱりな美少女(本当は美少年ならなおよろしい)と元気のいい少年のコンビってツボでして。話はあれから3年だたったんですが、ふたりとも性格が性格だけに全然甘ったるい感じにならないのが残念だけども微笑ましかったりして。
ラスと赤の人の方は、最後の方がわりとらぶらぶ。
それにしても、本編っていつから出てないんでしょ?はやく再開してくれないかしら。
●「無明の闇 鬼籍通覧」椹野道流[講談社ノベルズ]800円(00/3/7)
「暁天の星 鬼籍通覧」の続きです。
法医学教室を舞台にしたお話ですが、ミステリではなくほのぼのオカルトものです。
ノリとしてはライトノベルズに近いものがあります。キャラ同士のやりとりが結構楽しいです。伊月くんもなかなかいい奴ですが、飄々として包容力もある都築先生がいいですな。
作者が現役の監察医なので、死体描写が非常にリアル。この手のマニアな方は、それだけでも読む価値はあるかと。
●「リサイクルビン」米田淳一[講談社ノベルズ]840円(00/3/6)
この作者の「プリンセス・プラスティック」がネットで何度か話題にのぼってて気になったので、同じ作者の新作を買ってみることに。
警視庁捜査一課の特殊犯捜査五係はよそでもてあまされた事件ばかりがやってくる部署で、陰で「リサイクルビン」と呼ばれている。そこに配属された元気な女刑事を待っていたのは、熱帯魚にフィギュアにアニメにとオタクな趣味を持つ係長だった。その「リサイクルビン」にまわってきた、「サラ金の無人契約室から被害者と犯人が消え失せる」事件を調べていくと、それは大きな事件につながっていき…
最初あらすじから安楽椅子探偵モノかと思ったんですよ。読み進むにつれ、「警察組織モノ」かなと思ったら、次はハイテク犯罪モノで……ところが186ページからなんの前置きもなく、話がとんでもない方向に。この話って、細部をみれば緻密に描かれていてリアルなのに、全体をみるといびつで奇妙になっている絵のような……そんな印象を受けました。
かなりのトンデモ本ですな。こういうトンデモ本って、どちからというと中身がスカスカで芯がしっかりしてないのが多いけど、この話はしっかりと詰まってるだけに、全体としてのバランスの悪さというか奇妙な歪みが不思議な感じがします。
この本、本気で書いた…んだよね?
変な本マニアの人は必見。ミステリファンの人は読まない方が身のためでしょう。
個人的にはなんだかぐいぐい引き込まれて、それなりに楽しみましたが。
●「摩天楼ドール」谷瑞恵[集英社コバルト文庫]514円(00/3/5)
「夜想」がなかなかよかったんで、今回も期待して買ったんですが。
近未来の猥雑な人工島を舞台にしたアクションもの…というところかな? 今回の話は、作り込みの甘さを感じました。もうすこしこの町の空気を感じさせてほしかった。
まあ普通のライトノベルズの水準程度にはあるんだけども、ラインナップに入ってるのをみたときから、期待してたというのがあって…
とりあえず、次も読んでみます。年に一作しかでてないというのが残念ですが。
●「流血女神伝 砂の覇王」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫]419円(00/3/3)
「流血女神伝 帝国の娘」の待望の続編。異世界ファンタジーものですが、どっちかというと架空歴史に近い感じかも。
今回のあらすじを書くと、「帝国の娘」のネタバレになりそうなんでパスですが、まさかこういう展開になるとわっ!! いきなりですなー。どうなることかとハラハラしたら、あのラストに笑ってしまいました。カリエって前向きでいいねぇ。運命に負けないで、たくましく生きていってほしいです。
前作の「帝国の娘」は上下で完結ということでぎゅっとまとまった感じがしましたが、今回はシリーズの序章で話の広がりと奥行きを感じました。
これがプロローグだとすると、かなり話が長くなりそうですけど…たくさんの国や宗教がでてきてますが、それらにちゃんと息吹が感じられる世界構築が見事です。
今回登場の新キャラでは、グラーシカの弟のイーダルにショタ心くすぐられるものが。
コルドのイラストがないのが心底残念。この人って、なんかエイゼン入ってません?でも愉快そうな人で素敵。今後の活躍に期待。
このシリーズはかなりオオスメです。まだ3冊しかでてませんし、興味があったらぜひ「流血女神伝 帝国の娘」から読んでください。
ちなみにイラストレーターの船戸明里さん作成の「女神伝」ファンサイトCOCOA Cupにあるイラストも素敵なんです。
●「多重人格探偵サイコ 雨宮一彦の帰還」大塚英志[講談社ノベルズ]880円(00/3/3)
「サイコ No.2阿呆船」からはや1年半、やっと新刊がでました。しかも今度は角川スニーカーから移って講談社ノベルズに。あとがきによると出版社とケンカしたそうですが…でもこの刺激的な物語は講談社ノベルズの方がしっくりくるかも。
角川からマンガででてるサイコの原作者が新たに書き下ろした小説。マンガよりも冷えて、毒のある感じがします。一応、サイコサスペンスかな?
小説版の前二作はマンガで語られなかった物語を描いたサイドストーリー、だけども謎の核心にかなり迫ったお話でした。どちらも文句なしにおもしろかったです。
今回のは、マンガ版の1、2巻あたりに新たな意味付けを行っています。ほう、アレがああなって、コレがこうなると。今回のはパズル的なおもしろさを感じました。フィルターをかけることで、写真のイメージが変わってしまったような。そういう意味でも、今回の本そのものが「死と再生」の儀式なのかもなあ。
でも美和ちゃんがああいうキャラなんて………
中盤まではそれほどとは思わなかったけど、終盤のひやりとした感じがいいですね。
個人的には結構好きなシリーズですが、アクが強いので誰にでもオススメできる話ではないんだけども。
ちなみにこのシリーズは一応話は独立していますが、この本を読む前にはマンガ版の1,2だけでも読んでからの方がいいでしょう。その方が、パズル的な仕掛けをより楽しめますから。スニーカー版の方も先に読んでた方がいいんだけども。(一番おもしろいのは、シリーズ一冊目の「サイコ No.1情緒的な死と再生」じゃないかと。
●「許せないアイツ」尾鮭あさみ[角川ルビー文庫]495円(00/3/2)
ボーイズラブものです。作家さんが好きな人なので。
潔癖症の少年が出会ったのはちゃらんぽらんな男だった、という感じの話で。キャラクター設定は普通のボーイズラブに比べると一風変わっているものの、尾鮭さんの作品とは思えないくらい、ごく普通の話で。…うーん、この作家さんはあのなんともいえないぶっとび方が好きだったんだけどなあ。特に地の文がアクが落ちて読みやすくなったかわりにあの躍動感が失われてしまった感じ。
ボーイズラブとしては及第点にはあるものの、私がこの作家さんに求めてるのとは違ってるんだよね…
「悪名西遊記」や潮くんシリーズの続きってもう読めないんだろうなあ。両方ともすごく好きなシリーズだったのよ。
●「僕達の宝石箱」あさぎり夕[小学館パレット文庫]467円(00/3/1)
泉くんシリーズ最新作。ボーイズラブものです。伊達と別れて学さんとラブラブな泉くんだけど、どうやら新キャラ(頼りないはかなげなタイプの受)が学さんを挟んでの三角関係となりそう。少々不穏な空気が。
いつの間にかすっかり瑠偉×天野ですが、伊達と3人の関係に緊張感漂うのがいいですな。
●「琥珀のティトラ 聖女さま、参る!」霜島ケイ[角川スニーカー文庫]648円(00/3/1)
「封殺鬼」シリーズでお馴染みの霜島ケイの新作ってことでもちろん購入。…え、封殺鬼ってもう1年近くでてないんだ〜。早く続きを〜。
統都は精霊たちが治める町。300年以上前、精霊に選ばれた聖女が世界を平和に導いたという伝説があった。300年ふりに3人の聖女が選ばれたが、その従者になぜか盗賊のアンバーが選ばれてしまって…
異世界ファンタジーのコメディ。さらりと楽しませていただきました。世界構築は濃厚ではないけど、わりとしっかりした感じがします。さすか手慣れてる方だけあって、キャラの立ち方やエピソードでの見せ方がうまいですな。キャラ的にはちょっと意地の悪い精霊・キナがよかったです。
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