99年12月に読んだ本。
●「法廷士グラウベン」彩穂ひかる[講談社X文庫ホワイトハート](99/12/29)

第6回ホワイトハート大賞期待賞受賞作。舞台は中世、神聖ローマ帝国の頃。公正な裁判都市として有名なエッラで、騎士の試合中に起こった、市長の息子の死亡事件。その犯人として捕らえられた男を助けるハメになった美貌の法廷士グラウベン。圧倒的に不利な状況で裁判はスタートしたが…
うーん、惜しい。舞台を中世にした裁判ドラマで、その着眼的はすごくいい思う。設定だけで読みたくなるもの。ニ転三転する展開にもぐいぐい引き込まれたんですが、傑作となるには作りが粗いというか甘いというか。個人的にはラストのどんでん返しはなくてもよかったかも…という気がします。ホワイトハートだし、気持ちよく終わってもよかったんじゃないかと。
それにしても賞への応募の時点では主人公が美女だったのが出版される段階では美青年になるのはやはりホワイトハートのニーズなんでしょうねぇ。


●「シーキングザブラッド 翔竜伝説」岩佐まもる[角川スニーカー文庫](99/12/28)

第四回角川スニーカー大賞優秀賞受賞作の「ダンスインザウインド 翔竜伝説」の続編。サラブレッドをドラゴンに置き換えたような、ドラゴンレースの話です。前作、飛ぶことすら危ぶまれたクーも大きくなり、大きなレースに出場しはじめた頃の話。今回は竜牧場の若手社長、帝室の王女でもある無口な美少女騎手、元気な少女など、クーに関わる人たちの友情青春物語でした。
まっすぐな話でありましたが、結構グッときましたなあ。読後感がいい感じです。


●「烈光の女神4 ハイスクール・オーラバスター」若木未生[集英社コバルト文庫](99/12/27)

「ハイスクール・オーラバスター」シリーズ、1年ぶりの新刊。「烈光の女神」シリーズは一応完結だそうです。クライマックスってことで色々と派手な展開が。…でも話が半分忘れちゃってるせいで、えっと、えーっと…という感じになってしまいました。とにかく、十九郎と希沙良のコンビが好きなんで、二人でのシーンが多かったのが嬉しかったです。なにやら亮介の存在がかなりキーとなるようですが(主役だし)、重圧に負けず頑張ってもらいたいな、と。
でもこれの続き、次はいつでしょうねぇ…完結までまだまだかかりそう。


●「俺達の世紀末」あさぎり夕[小学館パレット文庫](99/12/25)

ボーイズラブです。「泉君シリーズ」の番外編。今回は長編で、ここ数巻の裏話的内容。伊達の危機を天野の視点から書いた話。今回の話は、本編よりもおもしろかったです。伊達、いい感じだし。瑠偉と天野のコンビもおもしろいと思うけどなあ。本編の方は泉くんがどうも女の子女の子ちゃうのがねぇ…


●「キル・ゾーン 背信者」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫](99/12/24)

「キル・ゾーン」シリーズの新刊です。今年は須賀さんの本をたくさん読んだせいで気がつかなかったけど、「キルゾーン」本編って4月以来だったのね。
表紙のキャッスルが彼女らしからぬ表情をしているなあ、と思ったのですが本編を読んでみるとなるほど……まさかこういう展開になるとは。
このシリーズも最終章にはいったということで、展開が早いですな。しかもユージィン様もヴィクトールくんも色々と企んでくださるものだから、誰がどう考えてどんな展開になってるんだかもうひとつわからなくなっている…シリーズが完結したあとに読んだら理解できるかしら。
ユージィン様ファンとしては、今回の展開でラファやエイゼンやキャッスルファンの恨みをまたまた買ってしまったようなのが……仕方のないパパですよねぇ。これも彼があまりにも魅力的なのがいけないんでしょうが。以下ネタバレ感想→でも恋の鞘当てがラファでもエイゼンでもヴィクトールでもなくて、こういう展開になるとは…いや、パパがキャッスルに興味を持ち出してからあぶないかなーとは思ってたけど、パパが本気になるならともかく、まさかキャッスルがあっさり落ちるなんてねぇ。でもエイゼンにはもうすこし焦ってほしかったというかヤキモチやいてほしかったなあ。
サリエルとモニカのカップルはいいかも〜。年の差がありすぎですが。(それ以前に、サリエル肉体ないし)
アンゲリカの気持ちが痛いですよね。愛しているからこそ憎んでいて。呪縛が溶けたときに彼女の心も崩壊してしまいそうですよね…
メイエさんのご冥福をお祈りします(合掌)



●「クリスタルサイレンス」藤崎慎吾[朝日ソノラマ](99/12/24)

「10年に一度の傑作SF」とネットでかなり評判なのでハードカバーだけど読みたくなったんです。ところが本屋で見つからなくて、ネットで注文したら届くまで一か月かかっちゃってねぇ。もう注文しないぞ>ISIZE。やっぱりネット注文ならクロネコが早くていいです。
舞台は2071年の火星。氷の中から、30億年前の節足動物の市街が発見された。しかもそれは「中身を食べられた」としか思えない状態であった。火星に知的生命体がいたのか?…というホーガンの「星を継ぐもの」を彷彿させるような冒頭の謎から、境界があいまいになってしまっているネット世界と現実世界、そこを舞台にしたラブロマンスにハードアクションと盛りだくさんな内容となっています。アイデアがいいし、描写もしっかりしてるし、話のスケールの大きさや謎めいた展開といい、なかなか豪華な話。特にネットの描写がいいですなあ。そのあたり、見せ方がうまいのでSFが苦手な人でもわりと平気じゃないかと。私でも大丈夫だったし。
キャラ的にはもうひとつ萌えられなかったんですが(今回の場合は、KTよりも某バックアップな人がツボでした)、ハードカバーで読むだけの価値はあります。オススメ。


●「爆烈天使」星野ケイ[講談社X文庫ホワイトハート](99/12/20)

「天使」シリーズ4冊目。「天使」と呼ばれる、人を喰らう異形の生き物たちと戦う少年たちの物語。
組織を脱退し、日本にやってきた達也たち。彼らは天使たちとVWAの刺客との両方に追われる身であった。追ってをふりきり、たどり着いた研究所できいた天使の正体とは…

いつにもまして、熱い友情が炸裂。なんだかノリが「ジャンプ」です。ただジャンプの場合は「仲間たち」に対するものが、たった一人に想いが集中してるあたりがニア・ボーイズラブという感じでしょうか。
天使たちの正体あたりの話は、ちょっと薄っぺらいのがなんですが、まあこの話のメインはそういうところにあるわけじゃないからいいか。次巻で終わりだそうですが、今度はハッピーエンドになってくれるといいんだけどなあ。


●「岸涯小僧 多々良先生行状記」京極夏彦[メフィスト](99/12/18)

雑誌「メフィスト」にて始まった京極夏彦の新シリーズ。「塗仏の宴 宴の支度」にも出てきた、京極堂の知り合いの妖怪研究家・多々良先生のシリーズ。一応ミステリ(?)ではありますが、榎さんのシリーズとは違った意味で、とにかく愉快な話です。妖怪のことになると周りが見えなくなってしまう先生の行き過ぎた行動がいいなあ。これも続きが楽しみなシリーズになりそうです。


●「ブライトライツ・ホーリーランド」古橋秀之[電撃hp](99/12/18)

2年ぶりの新作なので本当に楽しみにしていました。雑誌「電撃hp」5号に一挙掲載されていた作品ですが、1月に電撃文庫で発売されますが、それまで待ちきれないので。
「ブラックロッド」「ブラッドジャケット」に続く、積層都市・ケイオスヘキサの物語。三部作のラストとなります。
オカルトが発達し、科学となった世界を舞台にした、サイバーパンクな物語。どろりと濃厚な空気がたまらない作品です。この世界観が好きでして。
で、読んでみたんですが……わ、わかんない……それでも特別な物語を読んだときの酩酊感にどっぷりでした。わかんないけどおもしろかった。
そのあと前二作を読み返してからもう一度読んだところ、あ、あの人がああだったんだとやっと半分くらいは理解できたかと。それでも謎がかなり残ってるんですよね。
今回嬉しかったのは、鉤さんでしょうか。彼、好きなんですよ。もう一度会えるとは思わなかったな。今回の新キャラではアルファがよかったですよねぇ。
このシリーズを読むとしたら必ず一作目の「ブラックロッド」から。でも置いてる本屋、あんまりないかなあ……ちょっと話が濃すぎて、とっつきにくい作品なんだけども、私は大好きなシリーズなので、興味を持ちましたからぜひ。


●「妖奇切断譜」貫井徳郎[講談社ノベルズ](99/12/16)

「慟哭」がすごくおもしろかったので、ノベルズの新刊も買ってみました。
維新の傷もいえない、「明詞」の世の中。浮世絵に描かれるような美女たちが次々とバラバラ死体でみつかった。元公家の九条は事件解決に乗り出すが、新しい犠牲者が出て…
筆力がある作家さんだけあって、かなり読ませます。読んでしばらくは焼き肉は食べれなくなるくらい。でもまあ、個人的には事件の構造自体はもうひとつしっくりこないものが。期待のしすぎだったのかもなあ。
でもなぜ「明詞」というパラレルワールドを設定しているのかがイマイチわからないんですけど。土葬のためですか?


●「グイン・サーガ69 修羅」栗本薫[ハヤカワ文庫](99/12/13)

「グイン・サーガ」の新刊。それにしてもほぼ月刊ペースですよねぇ。今年なんて、外伝と合せると、なんと8冊(+ハンドブック)もでてますもの。一時、刊行ペースが落ちてたときには完結するまで何年かかるかと思ってたけど…このペースだと、本編ばかり刊行したとして、4年で100巻まで到達しますねぇ。少なくとも、あと5、6年で終わりそう。
今回はタイトルでネタバレですな。もっとも、このシリーズをずっと読んでる人には、すでにイシュトがどんな運命を辿るのは分かっているんだよね。きっとなるべくしてなったことなんだろうけども、中盤のカメロンのなりふりかまわない必死な姿が……なんともやるせないです。これもヤーンに定められた運命なのかな。
アムネリスは色ぼけしているよりは、今回のラストのような毅然とした姿に戻ってくれたのはよかったかもなあ。
……カメロン、死ななきゃいいんですが。どうなるんだろう…
次はいよいよ「豹頭王の誕生」!!


●「女王陛下の薔薇2 秘めたる花園」三浦真奈美[中央公論新社](99/12/11)

「女王陛下の薔薇」シリーズの二冊目。
かつての大英帝国を彷彿とさせる、ブレニム帝国。歴然とした階級社会で、女性は「レディ」としておとなしく家で生きることが美徳とされていた時代。帝国史上初めて女王となったセリシアは女性というだけで侮られながらも必死で頑張っていた。彼女の親友のエスティは、帝国の植民地であるバカンの首長の娘・ブランカと共に帝国に戻ってくる。結婚に失敗したために家に戻れないエスティは自活の道を探しはじめるが…
それにしてもむちゃくちゃな世界です。なんでそこまで女は貶められなきゃいけないんだーっ!!って感じ。まあかつての貴族社会は実際にこんな感じだったんでしょうけどね。
で、主人公であるエスティはまだ植え付けられた偏見にとらわれているために、読んでてちょっとイライラするかも。彼女も少しずつ自立の道を探し初めてるんですが。その点、奔放なブランカや、つよさがあるセリシアの行動の方が読んでて楽しいなあ。
まあ、エスティもこれからかわっていくんだろうし。それを楽しみにしておきましょう。


●「海馬が耳から駆けてゆく2」菅野彰[新書館](99/12/10)

ボーイズラブとか書いている作家・菅野彰さんのエッセイ「海馬が耳から駆けてゆく」の2がでました。
いやあ、今回も笑わせていただきました。すごく笑えます。この人の独特のリズムが好きだなあ。
私のしてしまった、「今までで一番悪いこと」…は精神的なものかなあ。ちょっと書けないや。
ちなみに菅野彰さんのホームページはここ。日記がおもしろいよー。

●「全証言 東芝クレーマー事件」前屋毅[小学館文庫](99/12/10)

ナマモノだろうってことでさっさと読んでみました。
今年、一番話題になった個人ページは、間違いなく「東芝のアフターサービスについて」だと思います。この本は、そのホームページの設置者・AKKY氏と、東芝側と両方にインタビューを行い、両サイドの言い分が食い違っていたのはなぜか、それらを解き明かしています。あそこまでエスカレートしてしまったのは、不幸な誤解が積み重なった、という感じみたいですね。
で、読んで思ったこと。やっぱりこの件については東芝側の対応があまりにもバカです。AKKY氏のとった態度は、メーカーにとっては嫌なもんですが、ああいう重箱のスミつつきをするような細かいユーザーなんていくらでもいますって。私も前の部署の仕事のひとつがユーザーサポートだったけど、いろいろとありましたから。電話口で突然怒鳴られたこともあったし、1時間おきに電話がかかってきたりとかFAX攻撃とかあと電話口で泣かされたこともあったなー…。それでもお客様なんです。そういう意識が東芝は低すぎるんじゃないかと。
私が東芝の担当者であれば、少なくともホームページのあの暴言が挙げられたのを知った直後で平謝りして取り下げてもらいます。ああなったら、意地よりも「第三者にどんな印象を与えるか」ということをまず考えるべきでしょう。あの暴言はヤバすぎだって。
東芝はインターネットの持つ力を甘く見すぎてたんでしょうね。それについてはAKKY氏の方も同じですが。「あんなに多くの人がみるとは思わなかった」というような話が出てたけど、まさかあんな展開になるとはきっと想像もできなかったんでしょうね。
個人的には、この事件に関するネット周辺の展開の方が興味あるんですが、この本ではそれらの事には触れられていません。まあ、テーマと違うから仕方ないけど。誰かそういう本も出してくれないかなあ。

●「天魔の羅刹兵 二の巻」高瀬彼方[講談社ノベルズ](99/12/9)

「天魔の羅刹兵 一の巻」から二か月、こんなにはやく続きが読めるなんて。
舞台は戦国時代。種子島に伝わったのは鉄砲ではなく、巨大人型兵器「羅刹兵」だった。…語り尽くされたと思っていた戦国時代モノ(しかも織田信長!!)に新しいアイデアを取り入れることによってわくわくする物語に仕上がっています。
今度は最強の羅刹兵の製造と、そして羅刹兵同士の戦い。最後の方の戦闘シーンは迫力ありました。
今回で第一部完になってたけど、もちろん続くよね?続き、読みたいです。
このシリーズはオススメ。


●「ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸蝕」上遠野浩平[電撃文庫](99/12/8)

アニメ放映まであと一か月、映画公開も間近の「ブギーポップ」シリーズの待望の新作。今度は、人の「可能性」を目覚めさせる「タマゴ」を巡った話。
話はこれだけでは完結してなくて、2月発売の「ブギーポップ・ウィーキッド エンブリオ炎生」に続くそうです。まだ話は途中なせいで、全体の構造が見えなくてよくわからない部分が。
今回は正樹くんが大活躍…というか、大迷惑というか。凪も結構出てきて嬉しいな。
なんと統和機構の最強キャラ登場。フォルテッシモ、いい味出してます。プロローグでの彼の思わせぶりなセリフのせいで、今、私の頭の中は「フォルテッシモ×ユージン」な妄想がぐるぐる…(すみません、腐れ女で。)ユージンは元々単独でも好きなキャラですが、二人の会話とか想像するともっと楽しい。番外編でぜひぜひふたりの話を書いてくれないかなー。
それにしても彼って、(ネタバレぎみ)→てっきり人造人間かと思ってたらMPLSなのね。統和機構って、MPLSをみつけたら全部実験動物か抹殺かと思ってたけど、スカウトするという道もあったんだ。←下巻でブギーポップとの対決があるんでしょうか?いくらブギーでも、あんな能力相手に勝ち目はあるのかなー。なんだかワクワクします。はやく続きが読みたい。
もし、このシリーズを読んでなくて気になるのなら、とりあえずは一冊目の「ブギーポップは笑わない」から読んでみてください。どんな話かは説明しません。特に一作目は先入観がない方が絶対に楽しめますから。
このシリーズ、少なくともWeb上ではライトノベルズの枠を超えて、一般の方にも読まれています。熱狂的なファンもいれば、「つまらなかった」という人もいるけど、私は結構このシリーズにハマっています。なんかね、まだまだ何も持たない子供だった頃の、不安で痛い気持ち……今でもどこかに残ってるんだけど、そこを突いてくるんだよね。

●「セッション 綾辻行人対談集」綾辻行人[集英社文庫](99/12/7)

1992年から1996年にかけてミステリ作家・綾辻さんが行った対談をまとめた本が1996年にハードカバーででましたが、それの文庫本化です。
対談相手は、ミステリ・ホラー関係が多いです。私の好きな作家では、宮部みゆき、京極夏彦、北村薫が参加。
時期が古いんで、「そういえばこの頃はそうだったなあ」と思いながら読んでました。特に京極夏彦、森博嗣と立て続けにでてきた頃のミステリのうねりのようなものを思い出して。あれにはワクワクしたなあ。
私が国産ミステリを読み出したのは、「新本格」の動きがかなり大きくなりだした頃からです。それまではミステリはクイーンとかクリスティを友達に借りて読んでた位でした。
ちょうど島田荘司の「御手洗潔の挨拶」が出た頃で、この人の「占星術殺人事件」が私の新本格初体験で。それから綾辻さんとか、京大ミステリ研の人たちのを読み漁ったなあ。
そのあとは国産ミステリの動向についてはわりとリアルタイムでみてます。
今回の対談で笑えるのは…いや、ある意味全然笑えないんですけど、「暗黒館の殺人」を書いてます発言が何度もでてくることですよね。本当にいつになるんだろ?ずっと待ってるんですけどねぇ。

●「ボン・ボワイヤージュの横断幕のもとに」秋月こお[角川ルビー文庫](99/12/6)

「富士見二丁目交響楽団シリーズ」の第三部エピローグ編です。イタリア留学を決めた悠季と、コンテストを受けるためにヨーロッパに旅立つ圭。日本を離れる前に、ひょんなことから悠季の故郷でリサイタルをすることになって…
本編、突然悠季の一人称から三人称視点に移ったのにはとまどいました。…まあ、一人称では書込みできないこともあることはわかりますが。
話自体はおもしろかったです。ふう。生島さんの演奏がパワフルで。…聴いてみたいなあ。
今回は、飯田さん視点や五十嵐くん視点の話が入っていますが、五十嵐くんって小市民的なところも含めて、いい奴だなーと思います。こうやって脇キャラもきちんとかけるところが、この人をただのボーイズラブ作家とは違った存在にしてるんでしょうね。
この本で、挿し絵が西さんからかわるとのこと。ちょっと寂しいけど、仕方ないよね。ごくろうさまでした。

●「広海君のゆううつ」吉原理恵子[角川ルビー文庫](99/12/3)

「子供の領分」の続編です。久しぶりですな。まさか続きがでるとは思ってもみませんでした。
頭脳明晰、容姿端麗でクールな性格の長男・陽一と、バスケ狂で無愛想な三男・大地に挟まれて育った次男・広海。この3人を中心に繰り広げる学園ものです。
ルビーにしては妖しいことはなんにもない話ですが、話があってないような…というか、こんなに進まない話は「グインサーガ」以上。まあ、キャラ小説ですね。なんだかんだいいつつ楽しんで読みましたが、今回は大地の出番が少ないのが寂しいぞ。

●「天翔けるバカ flying fools」須賀しのぶ[集英社コバルト文庫](99/12/2)

第一世界大戦、まだ空の戦いには騎士道精神が残っていた頃。飛行機が大好きで、それしか脳のないリックは婚約者に振られ、その成り行きからイギリスの傭兵部隊に参加することに。そこにいたのは、みんな一癖もふた癖もある連中で…
陽気な話です。戦争を舞台にしてるんですが、まだおおらかさの残っていた空を舞台にしているのと、ぎりぎりの状況だからこそ軽口を叩いて強がる連中のせいで、軽快な愉快な話に仕上がっています。
雑誌「Cobalt」に連載されていた作品で、実はそこですでに読んでいたんですが、こうやってまとめて読んだ方がおもしろいな。梶原にきさんの新作イラストもみれたし〜。
須賀さんらしく、キャラが生き生きしてますね。この作品ではリヒトホーーフェンが一番好みかも。雑誌の方で連載が終了したとき、「これで終わりなんてもったいないなー」と思ってたら次の「Cobalt」から第二部開始!!いやあ、めでたいですねー。


●「アルスラーン戦記10 妖雲群行」田中芳樹[角川文庫](99/12/1)

「アルスラーン戦記」シリーズの最新刊がなんと7年ぶりに刊行。「出る」とは聞いていたけど、何度も発売日が延期されてたんで、まさか今年中、2000年前に出るとは思わなかったなあ。
話自体はこのあまりにも長い空白なんてなかったかのように続いていました。あまりにも久しぶりなんで、話を覚えているか心配でしたが、思ったよりも記憶に残ってるものですね。わりと脇のキャラ(?)でも「そうそう、あの人!!」って覚えてて。そういう感じのキャラ作りはうまい人だからなあ。
今回の話は、凪いだ状態というか、話全体に動きがなくて。キャラ同士の会話とか、楽しかったですがダリューンの出番、少なすぎ。寂しいぞ。
とりあえず、作者に望むのは1年に一冊でもいいからコンスタントに出して、ちゃんと完結させてほしい…だけかなあ。
このシリーズ、ペルシャ風の国・パルスを舞台にした戦記モノですが、キャラクターが生き生きしてて楽しいです。「銀河英雄伝説」ほど説教くさくないし、読みやすいのではないかと。一部はかなりおもしろいです。読んで損はないんですけど、なんせ刊行ペースがあまりに遅すぎるのがなあ…
最新刊を読んだあと、つい既刊の再読モードにはいってしまいました。


●「模造人格」北川歩実[幻冬舎文庫](99/12/1)

「猿の証言」「僕を殺した女」などでミステリファンには注目度の高い、北川歩実の1996年にハードカバーで出た作品の文庫本化です。
杏菜は交通事故で記憶喪失となった。それから3年、記憶が戻らないものの、なんとか日常生活をおくれるようになっていた。その矢先、クリスマスの朝に、杏菜の母親が失踪。かわりに迎えにきた男性には、「お前が杏菜であるはずがない」と言われる。杏菜は4年前に、女子高生連続殺人事件の被害にあって死んだはずだというのだ…それでは「杏菜」は一体誰なのか?
この人お得意の錯綜する物語。「人」を形作るのは記憶か体か。二転三転する構造に一体何が真実なのかわからなくなってくるあたりがおもしろいです。特に中盤からは読むスピードもアップしていきます。
終わり方が少々強引なような気はしますが、これだけの分厚さを読むだけのことはある話だと思いました。はやく他の作品も文庫本化してくれないかな。


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