00年5月に読んだ本。 ←00年4月分へ 00年6月分へ→ ↑Indexへ ↓麻弥へのメール
●「マリア様がみてる ウァレンティーヌスの贈り物(後編)」今野緒雪[集英社コバルト文庫]476円(00/5/31)
シリーズ第六弾。バレンタイン企画の後日談。祐巳は憧れの祥子さまと初デートです。あまりにも世間ずれした、祥子さんの超お嬢様ぶりがなかなか愉快な話でした。
で、これでシリーズ一気読みをしてしまったわけですが、次は薔薇さまたちの卒業の話になるのかなあ。なんだか寂しいですね。白薔薇さまはこれで終わるのはもったいないキャラかも。
このシリーズはカトリック系お嬢様学校を舞台にした、少女達の日常を描いた(ソフトレズの)なんてことはない話なんですが、キャラが立ってるし、エピソードのまとまりもいいのでついつい読んでしまいますね。ある意味正統派少女小説。柔らかい春の日差しのような話で、どことなく懐かしさを覚えてしまいます。私は公立の共学だったから学校の空気は全然違うけど。
この設定に萌えな人はまず買いでしょう。いかにも少女小説なこのシリーズ、実は結構男性ファンも多いそうです。
●「マリア様がみてる ウァレンティーヌスの贈り物(前編)」今野緒雪[集英社コバルト文庫]476円(00/5/31)
シリーズ第五弾。バレンタインのお話。新聞部と共同でバレンタイン宝捜しイベントを行った薔薇のつぼみたち。商品はそれぞれのつぼみたちとの半日デート券だったが…
バレンタイン。少女小説必須アイテムですね。ハタからみると些細なことにしか思えないことで延々と悩んでしまうのが若さゆえなんでしょうか。微笑ましくて甘酸っぱい感じ。
志摩子さんの意外な姿が印象的な話でした。
●「マリア様がみてる ロサ・カニーナ」今野緒雪[集英社コバルト文庫]476円(00/5/31)
シリーズ第四弾。3学期が始まったリリアン学園では、生徒会役員選挙が行われることに。例年どおり、つぼみたちが薔薇を継ぐかと思われたが、なんと「ロサ・カニーナ」と呼ばれる生徒も立候補することに…
今回は選挙の話。なんてことはないお話ですが、なんかつい読んじゃうんですよねぇ。
もうひとつ収録されていた、お正月のお泊まり会のお話がほのぼのしててよかったです。1巻にでてた柏木くんの再登場。彼と白薔薇様のかけあいってなんか楽しいですね。
それにしても、祐巳の弟の祐麒がかわいいったら。元気で素直で。柏木くんも1巻のときにはイマイチパッとしなかったけど、今回の彼は「一見人がよさそうでも何を企んでいるかわからない」感じのキャラで私のツボを刺激するものが。柏木×祐麒の番外編が猛烈に読みたいと思ってしまうあたり、所詮はホモ好きだよなあ…>自分。ま、この本の愛読者は柏木くんのこと嫌いな人が多いだろうから実現は無理だろうけど。
あと、白薔薇さまはいい味だしてるよね。このシリーズでは一番好きかも。
●「マリア様がみてる いばらの森」今野緒雪[集英社コバルト文庫]514円(00/5/30)
シリーズ第三弾。今度は白薔薇さま。リリアン学園を舞台にした、自伝的小説が出版された。少女たちの禁断の恋を描いたその物語の作者は白薔薇さまではないかという噂が立ってしまい…
同時収録されている「白き花びら」はかなりストレートに少女同士のプラトニックな恋愛を描いたもので、あまりにも直球勝負だよなあと思いつつ、気持ちがまっすぐに届くような。
これも一気読みでした。
●「マリア様がみてる 黄薔薇革命」今野緒雪[集英社コバルト文庫]419円(00/5/30)
シリーズ二作目。カトリック系のお嬢様学校・リリアン学園を舞台にした、女の子たちの物語。ソフトレズです。
今回は黄薔薇のお話。令と由乃はいとこでずっと隣の家で育ってきた、一番近い相手。高校になって当然のように姉妹(スール)関係を結んだ二人だったが、突然由乃がロザリオを令に返して、姉妹関係を解消してしまったが…
少女小説、ですねぇ。なんだか懐かしい空気が。派手な事件が起こるわけではないのですが、つい読みふけってしまいました。見た目と中身が正反対の黄薔薇のつぼみとその妹のコンビがいい感じですな。
●「どすこい(仮)」京極夏彦[集英社]1900円(00/5/29)
今更という感じですが、やっと読みました「どすこい」。書くまでもないかもしれませんが、あの京極夏彦の小説すばるで連載していた「デブ」シリーズを一冊の本にまとめたもの。とにかく分厚くて暑苦しい装丁となっております。
とにかくバカな話。ノリとしては不条理小説に近いか。あまりに若い人だと、ギャグの意味がわからんような気がしますが。あ、私はけっこうウケました。特に最後の方の話ね。
単なるバカ話だけに終わらず、メタな展開が結構楽しかったり。「すべてがデブになる」の「入れるけれども出られない密室」というのはアイデアとしてなかなかおもしろいと思うのですが。
この短編集、ひとつずつがミステリ作品のパロディとなっていますが、内容はあんまり関係ないのが多いかな。でも、「脂鬼」の元ネタの小野不由美●「屍鬼」だけは絶対に本編の方を先に読んでください。パロの方を先に読んじゃうと、元の話がもうまともに読めなさそうだもん。
あと、国産ミステリ界の楽屋オチ的な部分も結構あるので、ある程度ミステリを知ってる方が楽しめるかな。
でもさ、ある意味このシリーズ、私にはホラーでした。ここ半年でかなり太っちゃってさ……そういう人間には「すべてがデブになる」は恐怖ですよ。こんな状況に追い込まれたら……食欲に負けちゃうだろうな、やっぱり…
●「マリア様がみてる」今野緒雪[集英社コバルト文庫]457円(00/5/26)
「夢の宮」シリーズでお馴染みの作者の現代日本を舞台にしたシリーズもので、女子高ネタということでなんとなく敬遠してたんですが。でもネットでの評判は結構いいので読んでみることに。
カトリック系のお嬢様学校・リリアン学園には、上級生と下級生が姉妹のちぎりを交わす「姉妹(スール)」というシステムがあった。高等部一年生の祐巳は、憧れの「紅薔薇のつぼみ」である祥子に不意な成り行きから「姉妹宣言」されるのだが…
挨拶が「ごきげんよう」で上級生を「さま」付けで呼び、生徒会の面々は「紅薔薇さま」「白薔薇さま」「黄薔薇さま」という名前がついてたり。いやあ、一昔前の少女マンガのような世界ですねぇ。
そして、そこはかとなくレズもの。精神的なもので、いやらしさとかは全然ありません。話はコミカルな感じ。
キャラがくっきりしてて、エピソードの見せ方もなかなか。最近はパッとしない「夢の宮」シリーズよりもはるかにいいかも。結構おもしろかったです。
キャラとして気になるのは「白薔薇さま」。ちょっとオヤジ入ってるところが素敵です。
正統派女子高や、ソフトレズが好きな人にはたまらない話ではないかと。
●「遭難者」折原一[角川文庫]857円(00/5/26)
1997年にハードカバーで出た作品の文庫本化。
登山中、事故に会って亡くなった男性を追悼するために作成された一冊の本。それを巡って再び事件が……という感じの話で、その追悼集がそのまま本になってます。
文庫本ながら二冊の本が箱入りで、本の作りもなかなか凝ってます。本好きな人間にはそれだけでも嬉しいな。でも、肝心のミステリとしての内容は、火曜サスペンスレベルで。折原一を読むのは久しぶりだったのですが、なんか切れ味が鈍ってるような。
●「ウィーン薔薇の騎士物語2 血の婚礼」高野史緒[中央公論社C★NOVELS]857円(00/5/25)
「ウィーン薔薇の騎士物語1 仮面の暗殺者」の続編。作者はファンタジーノベルズ大賞出身者です。
舞台は世紀末のウィーン。ジルバーマン楽団のバイオリニスト・フランツとその仲間たちの物語ですが、前作は誤解が誤解を招くコメディだったのが今回は吸血鬼ネタのホラー…かなあ。それよりも「ホモ!!」という方が印象強烈でした。ええ、いきなり冒頭からホモの濡れ場。しかも濃厚。前作も少しホモくさかったですが、まさかC★NOVELSでこんな話がでてくるとわ。ホワイトハートやコバルトなら驚かないけども。
話としては吸血鬼ジャンルとしての新味はなく、展開にそれほど意外性はないし、「永遠の命を持つものの孤独」というのももうひとつ伝わってきませんでした。前作の路線をずっと続けてくれた方がよかったのにな。
一応、次の話も読むつもり。
●「あきらめろ!」野梨原花南[集英社コバルト文庫]457円(00/5/23)
「ちょー」シリーズで人気の作者が、昔に書いた作品の再出版。「逃げちまえ!」の続編です。まるで古きよきアメリカのような、未来の火星を舞台にしたドタバタコメディ。前作以上にスカスカしてます。サクサク読めるので、あんまりモノを考えたくないときにはいいかもしれない。ちょっとひねくれた美少年・イリヤみたいなキャラはわりと好きだったりしますが。
●「DADDY FACE」伊達将範[電撃文庫]590円(00/5/20)
「COOL DOWN」がイマイチだったのでこの本は読む気はしなかったんですが、MURAJIさんが誉めてたんで。
貧乏大学生の鷲士のところに、突然12歳の美少女が現れ、「わたし、あなたの娘だもん」と…それだけでもアレですが、その上この少女が超天才で大金持ちの上に、過激で重火器を豪快にぶっ放すわ。それ以外にも超能力もでてくるし、オーパーツだとか超古代文明だとか、バカ設定のオンパレード。でもこれだけアホらしい設定を集めるといっそ清々しいものです。コメディに徹してるあたり、バランスは悪くないですね。テンポもいいし。そういう話だと割り切れば、かなり楽しめます。
続きがすぐでるそうですが、楽しみ。
●「ガン・オーバー」白井信隆[電撃文庫]530円(00/5/19)
「学園武芸帳」シリーズで第五回電撃ゲーム大賞《金賞》を受賞した作者の新シリーズ。
近未来の大阪を舞台に、法では裁けない調停を引き受ける「ケンカ屋」と呼ばれる人々がいた。女子中学生の光は学校を辞め、ケンカ屋を目指すことになるが…という話のプロローグ。
前のシリーズと同じく格闘技モノ。好きなんでしょうね。
この一冊全部がプロローグという感じで話の盛り上がりにかけますが、後半のストリートファイトが始まってからは筆がノッてるのがよくわかりますな。
コミカルな部分が不発。名前不明のケンカ師はしれっとした感じのメガネ男というのはキャラ的にそそられるものはありますが、もうすこしヒキが強ければ次巻に繋がるのになあ。
つまらないというわけではないけれども…
●「レベリオン 放課後の殺戮者」三雲岳斗[電撃文庫]620円(00/5/18)
「コールド・ゲヘナ」シリーズとか、「M.G.H.」で第一回日本SF新人賞を受賞した作家さんの新シリーズ。
現代日本の高校を舞台にした、超常能力保持者が謎の殺戮者と戦う話。
悪くはないんだけれども、「この作品でなければいけない」切実さが欠けているような。
展開もわりと先がよみやすいし、世界構築に弱さを感じる。真犯人の動機がとってつけたような印象を受ける。
高校生という、何にでもなれて、でも何者でもない、宙ぶらりんなあやうさを持った時代を描き出そうとしているのは感じるんだけども、空気が伝わって来なくて、切なさが足りない。そのあたりが残念。
●「田宮模型の仕事」田宮俊作[文春文庫]524円(00/5/17)
精密な模型やミニ四駆でお馴染みのタミヤの社長が書いた、小さな木工模型のメーカーから世界のプラモデルメーカーになるまでのお話。いやー、おもしろいです。「ワクワク」がたくさん詰まっています。何よりもまず模型が好きで、ただひたすら素敵なものを作りたいという気持ちがあって。本物へのこだわりとか。博物館で戦車の写真を取りまくるエピソードかもいいなあ。
プラモデルの趣味はないけれども、「作ること」の楽しさを共有できたような感じがします。
企業サクセスストーリーとしても読めるかもしれませんが、それよりも子供のような気持ちを失わない、タミヤの社長の冒険談として素直に楽しむのが一番かも。これ読めば、タミヤという会社や社長のファンになってしまいます。
とにかく、オススメの本。
●「幻妖草子 西遊記〜天変篇〜」七尾あきら[角川スニーカー文庫]533円(00/5/16)
さて、後編の方です。ようやく天竺に辿りついた三蔵一行。そこに鬼神たちが立ちはだかり…と後編の方はかなりのアクションの連続となってます。ハデな展開でなかなか。
キャラがくっきりしているのと、ストーリー展開のテンポがよく、読みやすい話でおもしろかったです。ライトノベルズとしては結構オススメかな。
ただ、アスラがなぜああいうことをしたかがイマイチ私には分かりづらかったです。でもアスラとデーヴァの関係にはちょっとそそられるものが。
●「幻妖草子 西遊記〜地怪篇〜」七尾あきら[角川スニーカー文庫]514円(00/5/15)
表紙があの「十二国記」の挿絵でお馴染みの山田章博画伯のせいで、かなり気になってた作品なんです。でも「ゲームのノベライズ」(光栄からでたシミュレーションRPG。山田画伯がキャラデザインをしています)ってことで躊躇してたんですよ。
でも、空想風景 十夜のページでほめられていたので、読んでみることに。
話はお馴染みの西遊記を下敷きにした話。オリジナル要素として、三蔵が人の心を読める女の子となっています。過酷な育ちのわりにはまっすぐな心の持ち主に育った三蔵と、乱暴者の悟空の心の交流が微笑ましいですな。キャラの組み立て方とかエピソードの見せ方も悪くないですね。
ただ個人的な好みからすると、文章がもうすこし中華風だとよかったんですが。こういう文章の方がさらりとして読みやすいのは、確か。
ノベライズは一般には低く見られがちですが、この本は作者が楽しんで書いてるのが伝わってくるのはいい感じです。
作者は「古墳バスター夏美」の方ですね。読んではいないけど、作品名はNIFTYのFSF2のライトノベルズ会議室でみた記憶が。
口絵イラストは非常にすばらしい。本文のイラストがないのがちょっと残念でした。
…でもこれ読んでると、尾鮭あさみの「悪名西遊記」シリーズが無性に読みたくなってしまった…あの作品のイメージの奔流と文章の絢爛豪華さはすぱらしかったです。もう普通の本屋ではまずゲットできないのと、ちょっと…というか、かなりホモなんで一般にはオススメできないのが惜しいんですが。あ、いつの間にか別の作品を薦める文章になってしまった。とりあえず、下巻を明日読みます。
●「デモン・スレイヤーズ! スレイヤーズ15」神坂一[富士見ファンタジア文庫]480円(00/5/12)
「スレイヤーズ」シリーズ最新刊にして、シリーズ完結編。
タイトルそのまんまの話。1巻と話がうまく繋がりました。後味の悪かった前作の終わり方が、こう続いてくるわけね。なるほど。
第二部に入ってからイマイチな感じが続いていたこのシリーズですが、今回はさすがに勢いが戻ったみたい。第一部メインキャラのあの人の再登場は嬉しかったです。
話としてはとりあえず完結。ただ色々とひかれていた伏線が全部解決してないとか、もっとスケールの大きな話にしてほしかったとか、やはり尻すぼみ感は抜けないというか、まあ色々とありますが完結ごくろうさまでした。
本編は完結しても、スペシャルの方や番外編はでるそうで、そちらを楽しみにしています。
アニメ化してヒットしてるせいで軽い感じを受けますが、本編第1部は結構いいですよ。二部に入ってから失速したけど…
●「グイン・サーガ72 パロの苦悶」栗本薫[ハヤカワ文庫]520円(00/5/12)
「グイン・サーガ」シリーズ最新刊。表紙はリギアです。
前作の終わりではかなり絶望的な状況で反乱を起こさざるをえなかったナリスですが、なんとか陣容を整えてきて。それにしても、ナリスもヴァレリウスのことがかなり大切だったのね。あれだけ散々もてあそんできたのに〜。
今回はパロの古代機械の話とか。SF的でした。今までの伏線から想像がつく範囲の話なので特にはないです。
次は7月、8月に立て続けにでるそうな。今年もペースははやいよね。
あとがきによると、100巻での完結は無理みたいなことを書いてましたが…たしかに、このペースではあと28冊では絶対に終わらないもんねぇ。普通、28冊といえば長編シリーズが3つくらいできるだけの分量なんだけどね。
●「多重人格探偵サイコTV MPD-PSYCHO/FAKE 第1巻」許月珍[角川スニーカー文庫]476円(00/5/11)
大塚英志の「多重人格探偵サイコ」シリーズがゴールデンウィークに6夜連続でWOWOWで放映されたそうです。これはそのテレビ版の脚本の第一稿と決定稿を元に、第一話と第二話をノベライズしたもの。
「テレビドラマのノベライズ」で、しかも大塚さんの手にかかるものではないせいで、私も買うのを迷いました。でも、これは単なるノベライズではありません。フェイクとしてはとてもデキがいい。「サイコ」のあの空気をちゃんと伝えているというか。母国語が日本語でない人の小説とは思えません。
話は、これもまたバージョン違いであります。同じ物語を何度も語りなおすごとに歪んで、別の物語となる。サイコはマンガ版、スニーカーの小説版、講談社ノベルズ版、全部が微妙にリンクしながら異なっていましたが、今回もそんな感じ。でも物語はマンガが一番コアだとすれば、ノベライズ版は一番外側かな。この今までと響きあう部分の妙は、メタなミステリを読んでるような快感に通じるものがあります。現実と架空の境がどろどろに溶けてゆくみたい。
ただ、この話は今までのサイコを知らないとよくわからないのでは?という気がします。ドラマだけをみた人って分かるものなんだろうか…ドラマ、ルーシー・モノストーンの曲が実際に流れるのか。聞いてみたいような、聞くとイメージが壊れそうで怖いような。
Macの墓場のイメージはすごくいい。
このシリーズを読む場合、一番楽しむための順番は、
マンガ版サイコ1,2→スニーカー小説版「サイコ No.1情緒的な死と再生」、「サイコ No.2阿呆船」→マンガ版3,4→講談社ノベルズ版「多重人格探偵サイコ 雨宮一彦の帰還」→本書
がオススメ。ひんやりした物語です。私はすごく好きなの。
●「陽炎羽交 斎姫異聞」宮乃崎桜子[講談社X文庫ホワイトハート]530円(00/5/10)
「斎姫異聞」シリーズももう9冊目ですか。はやいものですね。
この作品は平安時代を舞台にした調伏モノで、「神の子」で両性具有の宮と、ただ人でありながら無意識の破魔の力がある義明のじれったい恋物語であったりもします。
今回もいつものような話。道長の息子の頼通が宮への恋情に身を焦がして、とんでもない手段に訴えたが…
ま、今回はひいきの重家が活躍したので満足。宮と義明はもういいかげんなんとかせいっ!!って思うんですけど、ずっとこのままですか?
●「ダブルブリッドII」中村恵里加[電撃文庫]590円(00/5/10)
第六回電撃ゲーム小説大賞の金賞受賞作の「ダブルブリッド」の続編。
特殊な遺伝子を持ち、強力な能力を持つ生き物「怪(あやかし)」が存在する世界。日本では怪に人権を認める一方、問題を起こした怪の事件を捜査する組織「捜査六課」が存在した。優樹は外見はか弱い少女ではあるが、怪と人間との混血で、それゆえに孤独を抱えていた。そんな彼女に元に猪突猛進な山崎太一朗が派遣されたが…というのが前作の話で、今回はその2週間あとの話。今度は対吸血鬼です。
居酒屋のシーンがいいですな。おいしそう。
今回の話はこじんまりした感じ。悪くはないけども、突き抜けたところが足りないかも。怪という存在のリアリティがもう少しほしいかな。あと、視点の乱れがちょっと気になりました。
優樹と太一朗とのぶきようなふれあいは微笑ましい。とりあえず次も読んでみようかな。
●「束縛のルール」和泉桂[講談社X文庫ホワイトハート]590円(00/5/8)
無愛想なシェフと優柔不断な証券アナリストの甘々ボーイズラブもの「キス」シリーズのサイドストーリーである、フードプロデューサーの仁科とバーテンダーの成見くんのシリーズ。「吐息のジレンマ」の続編です。
にーちゃん再び。壊れっぷりが怖いです…このシリーズでは成見くんは泣いてばかりのような気がするんですが、今回は強烈でしたよねぇ。かわいそうに。
それにしても、仁科さん。あのMr.クール仁科さんがあんな初々しい反応をするとわ。もっと素直になればいいのに、と思いつつ素直な仁科さんなんて仁科さんじゃないもんねぇ。
次はキスシリーズかな。
●「忘恋奇談」椹野道流[講談社X文庫ホワイトハート]700円(00/5/7)
「奇談」シリーズ最新作。シリーズ10冊目ということでカラーグラビアあり。本業は小説家、裏稼業が霊障を扱う「組織」に属する追儺師(ついなし)の美形・天本森と、人間と植物の精霊のハーフの美少年・琴平敏生による、ゴーストバスターもののシリーズ。
今回は女子高を舞台にした話。「こっくりさん」遊びのせいか、少女達が次々と不信な死をとげていくが…という感じ。
それにしても、今回は分厚い!! 400ページありますが、そのわりには話が動いてないんですよね。不必要な描写を省いてもっとコンパクトにまとめてほしいものですが。
話自体は、小野不由美の「悪霊」シリーズの話のひとつを思い出すところがありますが、それと比べると話も単純過ぎて物足りないものが。
今回はもうひとつ、やっと天本の過去が明らかになりますが、もっと強烈なものかと思ってたからちょっとあっけなかったような。天本と敏生の関係はまたちょっとだけ進歩しましたが、あの甘々ぶりは犬も食わないですね。次では一線を超えるか?…ムリだろうなあ。
●「ラグナロク7 灰色の死者」安井健太郎[角川スニーカー文庫]619円(00/5/7)
「ラグナロク」シリーズ最新作。元傭兵のリロイと、相棒の喋る剣のラグナロクの格闘ファンタジーです。
今回はかなり分厚いですねぇ。表紙は番外編の「ラグナロクEX.」でお馴染みの、リロイの元相棒のジェイス。こういう、元仲間・現在敵で愛憎半ばな関係というのは結構ツボなんですが、リロイとジェイスの絡みがもう少しあれば。それにしてもジェイスって、なんか妙に強くなってません?短編の時はそれほどでもなさそうな感じがしてたんだけど。
あと、昔に敵として登場したキャラが一時的な仲間として再登場しています。…が、ちょっと唐突な気がしたなあ。うーん。
今回もアクションばかりという感じ。色々な勢力の敵対関係がなんだかよくわからないことになってしまってるのは私だけ?
レニーのすっとぼけたキャラはいいですな。
●「タツモリ家の食卓 超生命襲来!!」古橋秀之[電撃文庫]510円(00/5/1)
「ブラックロッド」シリーズで濃密な世界を描いた古橋秀之の新作。今度は宇宙人(鉄拳皇女・怪獣幼児・大佐猫)が家にやってくる、SFホームコメディ。
あとがきによると、「売れセン」を目指して作ったそうですが、いつも以上に読者を選びそうな話になってるような……私はこういう妙にマニアックな世界も好きなんですけども。
コメディではありますが、個人的には「ソリッドファイター」ほどは笑えなかったかなあ。
大仏のような外見の、妙にジジむさい主人公はいい感じかも。
とにかく、この作者にはコンスタントに本を出せる環境であってほしいものです。書きたいものを書かせてあげたいんだけどなあ。このシリーズも続編でるといいよねぇ。
●「アルスラーン戦記読本」田中芳樹+ライトスタッフ[角川文庫]533円(00/5/1)
「アルスラーン戦記」シリーズのオフィシャルハンドブック。作者のインタビューとか、用語・人名辞典など。あと、昔「スニーカー」に掲載された、ダリューンが絹の国に行ったときの話「東方巡歴」が載っています。この話はほんのプロローグのところで終わっているのが残念ですな。
それにしても、インタビューによるとやはり最後は皆殺しのようです。まあ、田中芳樹だからねぇ…とにかく、コンスタントに書いてくれるといいんですが。
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